みうらじゅんFES マイブームの全貌展が
所沢市民文化センターミューズで
2023年5月7日まで開催されています。
ほぼ日の見習い乗組員で、
みうらじゅんさんを師と仰ぐ
銀の鳥シジュが、記者として質問に行きました。
背景:みうらじゅん「コロナ画」より
第4回
自分の価値を探しなさい。
- シジュ
- みうらさんが42年間続けてきた
エロスクラップも、
今回の展覧会でたくさん並んでいました。
本棚にさしてあったスクラップを数えたら、
761冊ありました。
- みうら
- たぶん、いま、
僕の煩悩の数なんでしょうね。
- シジュ
- 今回の展覧会では
中身を見られないような感じに
なっているだジュけれども、
あれこそ、後世の
すごい学術書になるだジュな。
- みうら
- 45年間のエロの変遷が
貼ってあるわけですからね。
- シジュ
- あれは、1000冊まで行くだジュか?
- みうら
- このペースだと、
僕が60代のうちに到達すると思います。
むかし「タモリ倶楽部」で、
エロスクラップの特集を
やってもらったことがありました。
そのときはなんと、
「30巻記念パーティー」だったんです。
そんな冊数でエラソーにしてた
自分が恥ずかしいです。
- シジュ
- それが1000巻に。
すごいことだジュ。
これは将来、ほんとにどんな運命をたどるのか、
とっても心配でドキドキするだジュ。
- みうら
- むかし、あの有名な鑑定番組から、
「なにか鑑定に出すものありますか?」
と訊かれたことがあって、僕は
エロスクラップと即答しました。
僕の持ち物のなかで
価値のあるものは
それしかないと思ったからです。
「だいたい、いくらくらいの価値があると
思いますか?」
と訊かれたので、
「それはわかりません」と答えました。
しかし、スタッフの方は
その場で中身をごらんになって、
「うーん、これは価値以前に
紹介できませんね」
とおっしゃいました。
価値以前とは、
ないに等しいっていう意味でしょ。
- シジュ
- そうだジュな‥‥。
- みうら
- 僕がほしいのは、
いまの世の中に決められる価値ではないと
いうことです。
価値で判断できないものもある。
それらが大集合したのが、
この展覧会だとね。
- シジュ
- なんだか、世間の価値に
踊らされてるんだジュよね。
- みうら
- カチカチでしょ?
- シジュ
- でもあれは、
「紙にエロがある時代があった」という
とんでもない資料になりそうなんだジュけども。
- みうら
- 紙エロはもはや絶滅危惧種ですからね。
でもね、中身はエロだけ
貼ってあるんじゃないんです。そのため
僕は豪邸が載った雑誌なども
ずいぶん買ってるんですよ。
- シジュ
- わはははは。
- みうら
- それはロマンポルノの
「ロマン」の部分でね、
雰囲気作りも大切なんですよ。
いまは、いろんなものをすぐに
「アート」と呼ぶ時代です。
僕はやっぱり、そこをはっきりしたいんです。
エロスクラップは決して
アートではありません。
アートの気持ちで貼っているようじゃ、
こんなに長く続けられるはずないじゃないですか。
- シジュ
- みうらさんの「冷マ」も
現代アートに見えるだジュけれども。
- みうら
- 水まわりのトラブルのマグネットが
びっちり張ってある冷蔵庫は、
たしかにそう見えちゃうかもしれませんが、
どうでしょう?
僕が生きてるうちに価値を見い出す勇気のある人は
いないと思うんですよね。
- シジュ
- ということは、ここはむしろ、
「自分の価値を見にくる」
展覧会でもあるんだジュな。
- みうら
- ですね、そこがポイントだと思うんです。
僕が土産物屋さんで
「いやげ物」を買い続けてるように、
価値は自分で好きなように付ける。
そのプレイがおもしろいんです。
- シジュ
- だれも気づかない、
自分だけの価値を。
- みうら
- フツーに見ればバカみたいなこと。
でもそれが僕の
「ない仕事」の、いわば正体です。
- シジュ
- すっっっごい、勉強になりました。
- みうら
- シジュちゃんは、
野球のボールに縫い目があるのを、
知ってますか?
- シジュ
- 知ってるだジュよ。
硬球は縫ってあるだジュ!
- みうら
- じゃ、その縫い目がいくつあるかは知ってる?
- シジュ
- ええっ、それはよくわかんないだジュ。
- みうら
- 108つあるんだって。
それは漫画の「巨人の星」で僕は知ったんです。
「ボールは煩悩の数だけ、縫ってあるんだ」って。
でも、おかしいですよね。
野球って、もともとアメリカから来たわけでしょ?
煩悩の数を意識したとは、とうてい
考えられませんよね。
でも、そこがいいじゃないですか。
意味のないウンチクとして。
- シジュ
- いまのコロナ画の数と同じだジュ。
- みうら
- すごいところに気づきましたね。そう、
おもしろかったら、なんだっていいってことです。
シジュちゃん、これからも
無意味な活動にいっぱい
精を出してくださいね。
- シジュ
- わかりました。
みうらさん、ありがとうございます。
「生活のたのしみ展」のトークも、
よろしくお願いいたします。
- みうら
- こちらこそ、よろしくお願いします。
(おしまいです。ありがとうございました。)
2023-04-30-SUN
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所沢市民会館文化センターミューズ ザ・スクエア
みうらじゅんFES
マイブームの全貌展
2023年4月15日(土)– 5月7日(日)みうらじゅんさんの長年にわたる収集、
創作活動に迫り、
「マイブーム」の起源と全貌を
明らかにする展覧会。
コロナ画、いやげ物、
過去の膨大なスクラップや写真など、
増量された、迫力ある展示をたのしめます。
価値観の移りゆくこの社会で、
自らの価値観をどう築き上げていくのかが、
来場するみなさんに問いかけられます。