みうらじゅんFES マイブームの全貌展が
所沢市民文化センターミューズで
2023年5月7日まで開催されています。
ほぼ日の見習い乗組員で、
みうらじゅんさんを師と仰ぐ
銀の鳥シジュが、記者として質問に行きました。
背景:みうらじゅん「コロナ画」より
第3回
走馬灯は平等だ。
- シジュ
- 今回の展覧会では
コロナ画もどーんと展示してあるだジュな。
去年の「生活のたのしみ展」では
78枚展示しただジュけど‥‥
- みうら
- 今回、108枚になりました。
- シジュ
- 増えただジュな!
- みうら
- コロナ画は、タイトルのとおり、
コロナの時期に描きはじめたんだけど、
そもそも発注があったわけじゃないわけで、
たんなる「趣味」の絵ですよね。
それがいまでは「趣味」も越えて
「癖」になってしまったんです。
つい、鼻の横を掻くみたいに
「絵描いてる」んですよ。
この会場には102枚までがギリですって
言われてんのについつい増えちゃって。
でも、そうしてつねに発展途上にしておくことで、
みなさんに「あいつ、まだやってんだ」と
思ってもらえます。
- シジュ
- コロナ画のテーマは「走馬灯」
ということなんだジュが、
今回の展覧会では、
みうらさんによるビデオの解説があったたジュよ。
- みうら
- そうなんです。
今回は解説ビデオを流すことにしましてね。
当初は1枚ずつ解説していくつもりだったんですけど
インド映画以上かかると思ってあきらめました。
- シジュ
- わははは。
1枚3分で終わらせても
150分かかるだジュから。
- みうら
- かなりはしょりましたけど、ぜひ、
解説映像は、お時間あったら見ていってください。
あの画はね、絶対に
僕にしかわからないことが描いてあると、
自負がありますから。
- シジュ
- そうか、走馬灯なんだジュものな。
- みうら
- マイ走馬灯ですしね。
ところでシジュちゃんは、走馬灯って、
どんなふうなものだと思いますか?
僕は、幼少期から時系列で
画像が見えるわけじゃなく、
シャッフルで来るんじゃないかなと
踏んでいるんです。
- シジュ
- 記憶が、シャッフル‥‥?
- みうら
- だから、
「小学校の次に、いきなり大学時代の思い出かよ!」
と、戸惑っているうちに
走馬灯が終わってしまうなんて
ことにもなりかねません。
だからご自身で、前もって
記憶を整理しておかれたほうがいいと、
思うんですよ。
- シジュ
- 将来死ぬ間際に見る、走馬灯のために。
- みうら
- ですね。
基本、ノンストップですから
「それ、ちがうだろ!」
と思ってるうちに終わっちゃいますよ。
最後にその回想映画を見るのは、自分だけです。
ですから、その記憶のスライドは厳選して、
できるかぎりいいやつを
入れておかないといけないんです。
- シジュ
- いいやつ、だジュか‥‥。
- みうら
- そこを、生前に絵で描くことによって、
強化しておこうと思ったんです。
走馬灯で見たいシーンをリクエストしとくわけで、
「出る」可能性を高めておくんです。
いまの世の中、終活だの断捨離だの、やたら
いうじゃないですか。
- シジュ
- コンパクトに生きていこう、なんて
流行っているだジュな。
- みうら
- 自分の荷物を捨てることばかりを考えていると、
走馬灯もかなり整理されちゃうと思うんです。
「これぜったい入れときたい!」というコマを
自ら落としてしまわないようにしたいものです。
- シジュ
- ということは、コロナ画(=走馬灯)は
これからも増える運命にあるんだジュな。
- みうら
- そうですね。
シジュちゃんはそろそろ思い出ネタが
尽きてしまうんじゃないかと
思ってるでしょ?
いやいや、まだまだこれからですよ。
思い出以外に、
こんな自分でいたかったという理想絵も
欲しいじゃないですか。
たとえばスポーツカーに乗って
フロリダとかの道を走ってるなんて。
僕、免許ありませんから。
- シジュ
- シジュは、コロナ画だけじゃなく、
この展覧会全体が
みうらさんの走馬灯のような気がしているだジュよ。
- みうら
- なるほどシジュちゃん、
いいこと言いますね。
「みうらじゅんFES」は、
みなさんに僕の走馬灯の中に
入ってもらうことなりってね。
人は「自分の人生に意味づけしよう」としがちですよね。
でも、ほんとうは、
人生ってそういうことじゃないと思います。
この展覧会を見てもらってわかるとおり、
意味なんてないんです。
当然、自分にとって
マイナスのものもプラスのものも入ってきます。
プラスだからいい、マイナスだから悪いって、
どこで教わったんでしょうね?
結局、プラマイゼロ。
そこは、平等なんです。
きっと走馬灯には、すべてものもが
平等に出てきますから。
- シジュ
- いい悪いも、嫌い好きも、
関係がないんだジュな。
- みうら
- 走馬灯においては関係ありません。
あえて言えば
「印象的」だってことだけが上映されるんですよ。
- シジュ
- それって‥‥すごいことだジュな!
- みうら
- ほんと、すごいことなんです。
現世での好き嫌いは
まったく意味がなかった、ということなんです。
- シジュ
- みうらさんの牛のように、
「嫌い」の裏側が「好き」でもあるだジュ。
- みうら
- 得意と不得意も、
極楽と地獄も、きっと背合わせなんですよ。
そういう意味で、
はじめとおわりも、同じことです。
僕らはそもそも、
無から無に帰るだけですから、
生も死も背合わせということになりますね。
いまは「生きている」という状態だけを
セパレーツに考えすぎて
悩むんだと思います。
(明日につづきます)
2023-04-29-SAT
-
所沢市民会館文化センターミューズ ザ・スクエア
みうらじゅんFES
マイブームの全貌展
2023年4月15日(土)– 5月7日(日)みうらじゅんさんの長年にわたる収集、
創作活動に迫り、
「マイブーム」の起源と全貌を
明らかにする展覧会。
コロナ画、いやげ物、
過去の膨大なスクラップや写真など、
増量された、迫力ある展示をたのしめます。
価値観の移りゆくこの社会で、
自らの価値観をどう築き上げていくのかが、
来場するみなさんに問いかけられます。