ほぼ日の「老いと死」特集は、
佳境に入ってきました。
入ったからにはこの方に
ご登場いただかなくてはなりません。
みうらじゅんさんです。

このインタビューの動画は、
ほぼ日の學校でごらんいただけます。

>みうらじゅんさんのプロフィール

みうらじゅん

1958年、京都生まれ。イラストレーターなど。
武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。
以後、作家、ミュージシャンなど、多方面で活躍。
1997年には「マイブーム」が
新語・流行語大賞のトップテンに選出。
「ゆるキャラ」の名づけ親でもある。
2018年、仏教伝道文化賞沼田奨励賞受賞。
著書に『アイデン&ティティ』『色即ぜねれいしょん』
『「ない仕事」の作り方』
『通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ』など。

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第7回 ケンイコスギ。

──
年を取ると、まわりの人に
面倒をみてもらう機会が増えます。
機嫌よく介護してもらえたら、と願うのですが‥‥。
みうら
僕は以前から、それには
「かわいさ」が重要だと申し上げていますが、
「老人が赤ちゃんに戻る」というような、
都市伝説みたいなものがあるでしょ?
──
還暦でちゃんちゃんこ着て、
赤ちゃんに還り、かわいくなっていくという‥‥。
みうら
でもね、誰も
老人が赤ちゃんに戻っているところを
見たことがありません。
「うわぁ、赤ちゃんみたいに
小さくなってきたなぁ」とか、
「赤ちゃんみたいにかわいくなってきたなぁ」
なんて、ないでしょ?
──
ツルツルになったな、
とかもないですね。
みうら
「バブバブゥ」とも言わないですよね?
逆にブツブツ言いだしたり、
怒ったりする人が増えますね。
赤ちゃんが何か言いたいときは
ただ、泣くしかないのにですよ。
バカヤローは国会のバカヤロー解散で
終わったもんだと思ってましたけどね(笑)。

──
ありましたね、バカヤロー解散。
みうら
あのバカヤロー解散以来、
街でいろんな人が
バカヤロー、バカヤローって
言うようになったんですかね?
流行語だと思って。
──
そうですよね、あのせいで、
店員さんとかに、くってかかったり。
みうら
あれのどこが赤ちゃんに戻ったと
言うんですかねぇ。
やっぱり、かわいがってもらいたいなら、
四六時中怒ってるようじゃ無理ですね。
怒る人は、何かいままでに
権威的な立場におられたんでしょうね。
上からものを言うような。
権威はしかたなくついちゃうことも
ありますが、濃すぎは後々、面倒です。
それをケンイコスギ(権威濃すぎ)と
呼んでるんですがね。
──
権威、濃す‥‥。
みうら
ケイン・コスギさんとは
なんの関係もありませんから。
そこは先に断っておきますね。
なるべく権威は薄めがいいってことを
言いたいわけです。
──
ケンイコスギではなく、
ケンイウススギ。

みうら
いや、そもそも「すぎ」がよくないという
ことですね。
それに、かわいがられるためには、
「意見を言わない」ということも
とても重要です。
若い頃は「君の意見はどうなんだッ」って、
つねに意見を求められてきましたが、
老いるショック以降は意見を薄めにして、
徐々になくしていくのがいいと思います。
あったとしても
「あちゅい」とか、感想程度でいいです。
──
(笑)
そういえば赤ちゃんは意見は言わないですね。
みうら
だから今後、
ラーメン屋さんに行っても、
「出汁の加減が」とか、
意見を言わないようにしてください。
あちゅい、おいちい、
このどちらかを言うよう心がけましょう。
それが癖になると、まわりからも
「あれ、ずいぶんかわいくなったね」
と、言われるでしょう。
「あいつ、おいしいしか言わないんだよ。
ほんとう、かわいいな(笑)」
これが評価になっていきますから。
──
「まずい」はダメでしょうか。
みうら
「まずい」は意見ですから、
たとえまずくても「あちゅい」に
変換してください。
もう一度言います、
おいちいか、あちゅいのどちらかです。
──
心得ました。
なんでもおいしいといって、かわいくなるのが、
いい感じに面倒をみてもらえることに
つながりますね。
みうら
赤ちゃんのようにちっちゃくなったり、
肌がツルツルになったりは、
ぜったいしませんから(笑)。
──
せめて言うことはかわいらしくいたいです。
みうら
ですね。
「なんで俺がゴミ出ししなきゃならないんだ!」
と、もしそんなエラソーなことを思ったとしても、
ゴミ出しを舌足らずな感じで
「ゴミたちっ」と、言ってみてください。
すこしはかわいく聞こえますから。
──
わはははは。
みうら
あとは、名称を言うだけもいいですよ。
「ラーメン!」とか「ジュース!」とかね。
──
名詞はOK。
判断をくだす言葉がNGですね。
みうら
できるだけ形容詞をなくしていく活動です。
あとは濁点のついているものをすべて
省いて言うのもおすすめです。
コキフリ、コキフリ、出た、コキフリ。
──
「出た」も。
みうら
そうでした(笑)。
コキフリ、コキフリ、テタ、コキフリですね。
そうしてるうちにだんだん
赤ちゃん言葉が身についてきます。
この心がけは、すごく大事です。
物事に対して決してタメタシをしないように。
──
えっと、ダメ出しをしない‥‥?
みうら
ですね(笑)。
そういったことを心がけていれば、
すこしは赤ちゃんのかわいさに
近づけると思いますよ。

(明日につづきます)

2024-11-18-MON

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