京都のアサヒビール大山崎山荘美術館で、
みうらじゅんさんの「マイ遺品展」が開催中です。
京都といえば、みうらじゅんさんの故郷。
おそらく「故郷に錦」のすごい展覧会に
ちがいありません。
そこで、いつもみうらさんにお世話になっている、
ほぼ日の見習い乗組員の鳥、シジュちゃんが
美術館におじゃますることにしました。
なぜなら展示の中にシジュちゃんの写真もあるという
情報を聞きつけたからです。ほんとうにあるのかな‥‥?
みうらさんが館内を案内してくれます!
第1回
「マイ遺品」って、なんですか?
- シジュ
- こんにちは。今日は、京都の山崎にある
アサヒビール大山崎山荘美術館に来ているんだジュ。
ここではみうらじゅんさんの
「マイ遺品展」を開催中なんだジュけれども、
みうらさん、
マイ遺品って、どういう意味だジュか。
- みうら
- あのう、あれだよね、
えーと、僕のね。
- シジュ
- ‥‥みうらさんは、いま一瞬だけ、
こういう漠然とした質問に答えるのが、
面倒くさくなっただジュよな?
- みうら
- いやいや(笑)、この状況でね、
俺はシジュちゃんについて
くわしく説明したほうがいいんだろうなと
思ったんだけど、
いま、話すべきは自分のことだよね。
- シジュ
- そうそう。
この美術館に謎の銀の巨大鳥が
いることじたいが、
いちばんの疑問符だけど、それはおいといて。
マイ遺品って、どういうことだジュか。
- みうら
- 生前から「集めているもの」が、
みなさんにもあるでしょう。
それを「マイ遺品」と呼んでいこうという、
これは一種の運動のようなものなんだよ。
- シジュ
- へぇ、運動か。
- みうら
- 運動とか、活動ね。
こうして集めてしまうものを
いまから「マイ遺品」とでも言っておけば、
周りの人たちも
「しょうがないな」ってことで
容認してくれるんじゃないかな、と
僕は踏んでいるんですよ。
- シジュ
- ああ、なるほど。
「これはあの人の遺品だから」と‥‥。
- みうら
- 「コレクション」という言い方だと、
亡くなったあとに
「これ、どうすんだ」ということに
なってしまいがちです。
- シジュ
- 処分するほうも困るよね。
- みうら
- それを見越してなのでしょうか、
生きているあいだから
「もう、集めるのやめろ」って
言われがちになりますでしょ。
- シジュ
- 「あなた、あんまり集めるのもどう?」
とかって。
- みうら
- そうそう。
そこを「マイ遺品」と言っておけば、
「あ、それならもう、どうぞどうぞ」
ということにならないかなと思ったんですよね。
- シジュ
- いま集めてる段階で、前もって
そう言っておくんだね。
「遺品ならしょうがないな」と思うもんね。
- みうら
- だってさ、
「遺品を集めるな」と言うなんて、
ちょっと失礼にあたる気がするでしょう?
- シジュ
- そうだジュね。
- みうら
- これはまあ、言いわけ的なことなんだろうけどさ。
- シジュ
- 言葉の言いわけね。
- みうら
- うん、僕の人生自体が
言いわけだからね。
- シジュ
- そういう意味ではさ、
自分たちは生まれたときからずっと、
遺品を集めてるとも言えるだジュね。
- みうら
- そうだね。
生まれたときから余生の
カウントダウンがはじまっているようにさ。
- シジュ
- そうだジュな。
- みうら
- 余生といったって、
「もう歳だから」なんてことではじまる
わけじゃないんだ。
生まれた瞬間から
最後へのカウントダウンがはじまる。
それと同じように、
遺品のカウントダウンも
はじまってるわけさ。
- シジュ
- ほんとうだね。
いま、心から理解した。
- みうら
- じゃ、展示を見ていこうか。
このマイ遺品たちは、ある意味、
僕が断腸の思いで集めたものなんです。
- シジュ
- いまいるこの部屋、
ここの見どころは何だジュか。
- みうら
- 「見どころ」って言われても
困るんだけどさ。
あのう、今回は会場が京都でしょ?
- シジュ
- うん。
- みうら
- ここは一応、僕の生まれ故郷なわけですよ。
- シジュ
- あ、そかそか、みうらさんは京都出身だジュね。
- みうら
- だから、シジュちゃんから当然
そういう質問があるだろうと思って、
それだけ考えてきたけど、
質問がないから、いま言うけどさ。
- シジュ
- あ、うん、わかったわかった、
ごめん、ごめん(笑)。
- みうら
- 「ということは、みうらさん、
この展覧会で故郷に錦を飾るんでしょう?」
という質問が、てっきり出ると思ったんだ。
その質問が出たと仮定して、ね?
- シジュ
- 「故郷に錦を飾るんでしょう?」
- みうら
- 「うーん、錦は飾ってないけど、
ゴムヘビは飾ってますよ」
そう言おうと思ってた。
- シジュ
- わははは、そっちのほうがいいよ。
- みうら
- うん。僕にとってそっちのほうが、
故郷に錦を飾ったことになるのかな、と
思ってるんだ。
このときのふたりのおしゃべりのようすを、
よかったら、動画でごらんください。
(明日につづきます)
2022-01-18-TUE
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アサヒビール大山崎山荘美術館
開館25周年記念
みうらじゅん マイ遺品展
2021年12月18日(土)– 2022年3月6日(日)みうらじゅんさんが長年にわたり収集、制作し、
自ら「マイ遺品」と名づける品々を、
出身地である京都の地で一挙に公開する展覧会。
ゆるキャラ、いやげ物、スクラップ、ヘンヌキなどの
みうらさんの「マイ遺品」が
国の有形文化財として登録されている「大山崎山荘」と
安藤忠雄さん設計の「地中館・山手館」からなる
静かな美術館にずらっと並ぶさまは、圧巻です。
京都の歴史ある空気を味わいながら実感する、
みうらじゅんさんの偉業のかずかず、
ぜひおたのしみください。
カフェでは特製のどらやきも食べられます。【会場】アサヒビール大山崎山荘美術館
〒618-0071 京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3
JR山崎駅または阪急大山崎駅より徒歩約10分
【開館時間】10:00 – 17:00(最終入館 16:30)
【休館日】月曜日(ただし、祝日の場合は翌火曜)