新宿は、繁華街、歓楽街、オフィス街と、
3つの顔を持っている街です。
渋谷や池袋と並ぶ、
東京の副都心であると認識はしていても、
どうして「新宿」というのか、そして、
えもいわれぬあの「濃い感じ」はいったいなんなのか、
多くの人が謎を抱えているのではないでしょうか。
2022年、「生活のたのしみ展」新宿開催を機に、
いまこそこの街について、
お訊きすることにいたしましょう。
ミスター新宿、ミスター新宿駅ビル、
ミスターメンズ館、元祖新宿系、
新宿といえばこの方、みうらじゅんさんです!
第1回
好きだけど油断ならない。
▲今回のお話を動画でごらんください。
- みうら
- ここ、すごく静かですよね。
‥‥どうしましょうか。
- ──
- この部屋、端から端まで
何メートルあるかわかりませんね。
- みうら
- ここは、ほぼ日のみなさんが
「生活のたのしみ展」を開催する、
三角広場の上の、住友ビルの‥‥
- ──
- 50階です。
- みうら
- 50階って。
- ──
- 広すぎて、なんでもできそうな空間に、
我々はいま、います。
- みうら
- もしいま「端まで走って戻ってこい」と言われたら、
嫌ですよ。
- ──
- 言わないようにします。
なぜかここで、いつもの
「みうらじゅんに訊け!」をやることになりまして。
- みうら
- ま、新宿ですからね。
- ──
- そうです、新宿といえばみうらさんです。
本日はみうらさんに、
新宿について、たっぷり
うかがっていきたいと思います。
- みうら
- わかりました。
よろしくお願いします。
- ──
- えーっと、改めまして、
新宿といえば、みうらじゅんさんなのですが。
- みうら
- ま、そうですね。
ここはみなさんに
「ようこそ」と言うべきですよね、僕が。
- ──
- そうですね(笑)。
- みうら
- ミスター新宿としてはね。
- ──
- ミスター新宿‥‥。
- みうら
- ほぼ日のみなさんは、今日、
神田から来られたんですよね?
「ようこそお越しくださいました、新宿へ」
と申し上げましょう、
ミスター新宿として。
- ──
- みうらさんとしては、
「新宿の側(がわ)」にいらっしゃるんですね?
- みうら
- もちろんです。
上京以降、いろんな場所を
転々としてきたんですけども、
僕は、前にも言ったかもしれませんが、
「一本、筋通してる」んですよ。
これ、言いましたよね?
- ──
- はい、たしか
「みうらじゅんに訊け! 東京編」で
うかがいました。
- みうら
- ほぼ日でも、もう何度も
申し上げているとは思いますが、
僕が「一本、筋が通った男である」ということは
中央線が証明してくれているんです。
- ──
- 「一本」とはつまり、線路のこと‥‥。
- みうら
- そうです。
僕はこれまで中央線沿線にずっと住み続け、
一本、筋を通してきました。
高円寺に住んでるときにも
「ミスター高円寺」の名前を
ほしいままにしていました。
- ──
- ミスター新宿の前は、ミスター高円寺で。
- みうら
- 「高円寺と言やぁ、みうらだろう」
いつしかそう言われるようになりました。
しかしそれよりもはるかに長い年月、
新宿区に税金を納めています。
そして、新宿区、特に歌舞伎町あたりにですね、
まぁ、勉強代っていうんですかね、
ずいぶん落としました。
こんなに落としているのは、周囲でも
ミスター新宿の僕ぐらいだと思いますよ。
- ──
- ミスター新宿を名乗るには、
落とす過程も必要である、と。
- みうら
- あれはコロナ禍の前のことでした、
以前バンドを組んでいた友達と連れだって、
久しぶりに歌舞伎町に行きました。
ロックな気分だったんでしょう、
気がついたら僕は、
かつて「コマ劇場」があった前あたりの地面に、
大の字になって寝ていました。
新宿に寝るとは、いくらなんでもねぇ。
どうやら寝たまま、
ポケットに入っていた小銭を撒いていたそうです。
そんな報告をあとで受けました。
- ──
- それは、コロナの前‥‥
ということは最近ですか?
還暦前後でさらなる税金をそのように。
- みうら
- はい。
そんなふうに、酔うとすごく
新宿に慣れたような気になりますし、
こんなに長いこと住んでますけれども、
いまだにやっぱり新宿って、
未知なところもあるんですよ。
- ──
- ミスター新宿にも、未知なる部分があるんですか?
- みうら
- 僕は買い物も全部、新宿で済ませてますし、
新宿区を越えるときには「遠征」と呼ぶほど
新宿に根付いている人間です。
しかしこう‥‥なんだか、
新宿には油断できないところがあるでしょう。
油断できないというか。
ですから僕は、新宿を「道場」と
呼んでいた時代がありました。
一軒目の呑み屋さんで慣れ親しんで
そこの「顔」になった気分でも、
「道場やぶりだ!」みたいな感じで
別の店に行くと、
えらい目に遭ったりもするんですよ。
新宿はいい街で、
いまもいちばん好きな場所ですが、
たとえて言えば、現在の僕の状態が新宿です。
- ──
- いまのみうらさん‥‥????
- みうら
- いっときは僕、
「ミスターメンズ館」と言われていた時期も
あったんですよ。
- ──
- 伊勢丹の、メンズ館。
- みうら
- いま着ている服もほぼ全身、
伊勢丹のメンズ館で買っています。
靴下もメンズ館のポール・スミスで買いました。
この靴下はすごく気に入っていて、
なかなか捨てられません。
実はゴムがゆるんでるんですよ。
今日も出かけるときにね、
「あ、ゆるいやつだ」とは思ったんだけど、
まぁいいかと思って履いてきてしまいました。
しかしやっぱり片足がね、いま、
脱げてるんです。
靴の中でかかとが出ています。
- ──
- はぁあ、はい。
- みうら
- そんな感じなんですよね、新宿って。
なんだか油断ならない、
片足脱げかけている状態、
僕にとって新宿は、
いつまでもそんな街なんです。
(月曜日につづきます!)
協力 新宿住友ビル
2022-04-22-FRI
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コロナ画2022
in SHINJUKU
2022年4月29日(金祝)– 2022年5月4日(水祝)みうらじゅんさんがコロナ禍に描きはじめた、
コロナ収束が締切となるであろう作品が、
4月29日~5月4日に新宿で開かれる
「生活のたのしみ展」で公開されます。
F10号のキャンバスを
現在のところ78枚つないだ、巨大作品です。
また、4/30(土)13:00より、
みうらじゅんさんと糸井重里による
ミニトークショーも場内で開催します。
※トークショーの着席観覧募集は終了いたしました。
「コロナ画2022 in SHINJUKU」は、
入り口を入ってすぐ、
「ウェルカムマルシェ W-0」に展示しています。
写真もOK。ぜひ見にきてください!