新宿は、繁華街、歓楽街、オフィス街と、
3つの顔を持っている街です。
渋谷や池袋と並ぶ、
東京の副都心であると認識はしていても、
どうして「新宿」というのか、そして、
えもいわれぬあの「濃い感じ」はいったいなんなのか、
多くの人が謎を抱えているのではないでしょうか。
2022年、「生活のたのしみ展」新宿開催を機に、
いまこそこの街について、
お訊きすることにいたしましょう。
ミスター新宿、ミスター新宿駅ビル、
ミスターメンズ館、元祖新宿系、
新宿といえばこの方、みうらじゅんさんです!
第2回
新宿駅で上がって下りる。
▲今回のお話を動画でごらんください。
- ──
- 新宿は繁華街、歓楽街、オフィス街の
3つの顔を持つと言われています。
いまみうらさんからうかがったお話に
新宿の「オフィス街」の一面が
出てこなかったような気がするのですが。
- みうら
- それは僕が「オフィス」に用事がないからです。
まぁ、就職できなかったせいもあるでしょう、
その「オフィス」という言葉、
たしかにこれまで何度か聞いたことはありますが、
いま生まれてはじめてちゃんと
「発音」したのではないかと思います。
- ──
- それほどまでに、
オフィスにはなじみがない、と。
- みうら
- この三角ビル、つまり新宿住友ビルも、
つまりはオフィスなんでしょう?
- ──
- 下階にはレストランなどもありますが、
上のほうはほとんどオフィスです。
- みうら
- この高層ビル街はいま、
東京名所となっていますが、
新宿住友ビルは
僕が上京したてのとき、
はじめて入ったビルでした。
- ──
- ええっ、そうなんですか。
- みうら
- その頃は新宿西口も、
いまのようにこんなに
「乱立」してる感じではありませんでした。
新宿住友ビルの三角と、あとは4本ぐらいかな、
それくらいしかなかったと思いますね。
- ──
- 4本ですか! はぁあ~。
- みうら
- それでもみんな「高層ビル街」って呼んでました。
上京して「ああ、これか!」と思ってね、
特にこの三角のビルは印象的ですよね。
- ──
- 高層ビル街は、
駅西口から徒歩8分ほどかかりますね。
- みうら
- 高層ビル街は西口にありますが、
新宿で忘れてはいけないのは
駅ビルですね。
ぼくはミスター新宿であると同時に、
ミスター駅ビルと呼んでくれてもいいくらい、
駅ビルが好きなんです。
- ──
- ではみうらさんは、
新宿の駅ビルにもおくわしいのですね。
- みうら
- 僕らの頃といえばMY CITYつってね。
- ──
- マイシティー‥‥
いまの「ルミネエスト」でしょうか。
- みうら
- ええ、そうです。
それがMY CITYだった時代、
僕はよくそこで過ごしていました。
- ──
- 自分の街、という名の、
駅ビルだったんですね。
- みうら
- マイブームより、ずっと前のね。
あの頃は「新宿に行く」イコール
MY CITYに行って帰ってくる、
という意味でしたから。
電車を降りたらすぐ上がって
店舗を見てまわり、帰るだけです。
- ──
- ほかにはどこにも行かず、上がって下りる。
その理由はいったいなんでしょう?
- みうら
- MY CITYには中古DVD屋さんとかね、
僕の好きな店がたくさん入っていたんです。
しかも閉店まぎわまでいると、
なんともいえない
独特な歌がかかるんですよ。
- ──
- 閉店の音楽でしょうか‥‥?
- みうら
- ですね、たぶんオリジナルだったと思います。
ほんとうに耳につく歌でしてね、
それ聴きたさに、よく閉店まで粘ったものです。
- ──
- では、みうらさんの新宿駅での思い出は、
ほぼMY CITYなんですね。
- みうら
- (かぶりぎみに)MY CITYです。
1978年の改築でマイシティとなったと聞きます。
だからぼくの上京とほぼ同じ頃なんです。
- ──
- 今日はみうらさんに
「新宿で最も行った場所」を
うかがおうと思っていたのですが、それも‥‥
- みうら
- (かぶりぎみに)MY CITYですね、
もちろんMY CITYです。
- ──
- どこか特定のお店というわけじゃなく、
MY CITY‥‥。
- みうら
- そうです。
何か買いに行く、とかじゃないんです。
「MY CITY行ってくるわ」
という感じです。
- ──
- MY CITY内をそぞろ歩く、
ということでしょうか。
- みうら
- MY CITYを「総なめ」するのが常でした。
いまも閉店曲が
聴きたくて聴きたくてしょうがないんです。
いっとき歌詞はけっこう覚えてたんだけど、
「老いるショック」で、ほぼ忘れてしまいました。
- ──
- 老いては、いろんなことを
忘れてしまったりしますね。
それほどまでに
新宿に通い詰めておられたということは、
みうらさんはデートも新宿だったのでしょうか。
新宿には映画館などもたくさんありますが。
- みうら
- 大学は国分寺あたりでした。
ですから「新宿に来る」ことは、
かなりの遠征になります。
たいがいは「吉祥寺どまり」なんですよ。
吉祥寺で都会気分を味わって帰る、
ほとんどの場合、そうなります。
けれどもときにはがんばって
新宿まで行くことがあります。
国分寺からだと立川のほうが
ぜんぜん近いのに、です。
- ──
- 気張って、新宿に遠征したんですね。
- みうら
- 当時、ぼくはおそらく新宿に、
「ゾンビ」を観にきたんでしょう。
いや、「スペース・バンパイア」という
映画でした。
- ──
- スペース・バンパイア?
- みうら
- 僕は、ご存知のように、
ホラー映画が好きなんですよ。
でもこれはね、B級にも
ほどがあるやつでね。
- ──
- はい‥‥。
- みうら
- 僕は当然、映画館で、
一所懸命に観ました。
ふと見たら、隣の席の彼女は
いなくなってました。
気づいたときにはもう退場していたのです。
新宿の映画館といえば、その思い出です。
(明日につづきます)
協力 新宿住友ビル
2022-04-25-MON
-
コロナ画2022
in SHINJUKU
2022年4月29日(金祝)– 2022年5月4日(水祝)みうらじゅんさんがコロナ禍に描きはじめた、
コロナ収束が締切となるであろう作品が、
4月29日~5月4日に新宿で開かれる
「生活のたのしみ展」で公開されます。
F10号のキャンバスを
現在のところ78枚つないだ、巨大作品です。
また、4/30(土)13:00より、
みうらじゅんさんと糸井重里による
ミニトークショーも場内で開催します。
※トークショーの着席観覧募集は終了いたしました。
「コロナ画2022 in SHINJUKU」は、
入り口を入ってすぐ、
「ウェルカムマルシェ W-0」に展示しています。
写真もOK。ぜひ見にきてください!