新宿は、繁華街、歓楽街、オフィス街と、
3つの顔を持っている街です。
渋谷や池袋と並ぶ、
東京の副都心であると認識はしていても、
どうして「新宿」というのか、そして、
えもいわれぬあの「濃い感じ」はいったいなんなのか、
多くの人が謎を抱えているのではないでしょうか。
2022年、「生活のたのしみ展」新宿開催を機に、
いまこそこの街について、
お訊きすることにいたしましょう。
ミスター新宿、ミスター新宿駅ビル、
ミスターメンズ館、元祖新宿系、
新宿といえばこの方、みうらじゅんさんです!

みうらじゅんさんのOFFICIAL SITE

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第4回

新宿は、なぜ新宿という?

▲今回のお話を動画でごらんください。

みうら
新宿で重要なのは、
「ジクかジュクか」ではないんです。
だからつまり、そのね、
ニュウマンってのがあるでしょう。
──
ああ、南口に
NEWoManがありますね。
みうら
重要なのは、
そっちのほうなんです。
──
え?
みうら
あれ「ニュー」ついてるでしょ?
──
あああ、ほんとうだ!
みうら
あれは「新宿」の意味なんですよ。
──
うわぁ、なるほど!
みうら
僕は
「そこをみんな、忘れてやいませんか?」
ということを言いたいのです。
「いま、渋谷が新しい」とか言っても、
あとづけですよね。
こっちはね、昔っから
「新」が、ずっとついてんですよ。
──
‥‥ほんとうですね。
みうら
だから大久保より新大久保のほうが
新しいんです。
──
そこにはちょっと気づいていませんでした。
みうら
渋谷などのおしゃれな街には、いつも
「これがいま新しいですよ」と
提示する誰かがいるんです。
「いま、これに乗っかといたほうがいいよ」
と誰かさんに言われると、
みなさんはワーッと行くでしょ? 
ところが新宿はね、
そんな人はひとりもいない。
それはいつも新しすぎるからです。
──
はぁあ。
新しすぎて、
新しさがつかめないんですね。
みうら
だから、新しさは
自分で見つけるしかないんですよ。
ま、要するにそれが最先端です。
新宿のキャッチフレーズとして
「キーポン(keep on)最先端」だと
言っていいんじゃないかなと思います。
──
はい。

▲「ほぼトリドリ」とのツーショット。ちょっと似てる。 ▲「ほぼトリドリ」とのツーショット。ちょっと似てる。

みうら
最先端なものの「新しさ」は、やっぱり、
自分で発見していくしかないんですよ。
自分で発見するのって、もしかしたら、
とてもむずかしいことかもしれません。
近道があるとしたら、やっぱり僕のように
区民になるのもいいと思います。
「こんなとこに、こんなものがあった!」
なんていうふうに、
住んだほうが最先端を発見しやすいですからね。
この時代、いろんなマップがありますし、
「JG(ジャンボ御苑)」という
タウン誌も出ています。
しかし、区民になったとしても、
新宿のすみずみまで知ってる人なんて
なかなかいないですよ。
それほど「最先端」は変化しています。
追いつけやしないのです。
たとえば僕は、毎週のように新宿に来て、
キャッチャーしてた時期があるんです。
でもね、新宿のUFOキャッチャーはね、
1週間経ったらもう違うぬいぐるみが
入ってることがあるんですよ。
──
わははははは。
みうら
前の週に取っておかないと、
次週にはもう、なかったりします。
何度か渋谷のほうにも
キャッチャーやりに行きましたが、
渋谷はあいもかわらず同じものが
入っていたりするから、遅いな、と。
──
やっぱり新宿には
「新」の自覚があるんですね。
みうら
そうです。
「新」の自覚があるからこそ、
キャッチャーもどんどん
新しいヌイグルミが
入っていくのです。
──
新陳代謝が激しいんですね。
みうら
新宿代謝でも
いいくらいです。
──
本日はみうらさんに、
新宿の見どころをうかがおうと
思っていたのですが、それはもう、
「自分で発見しろ」というしかないですね。
みうら
見どころね、
こればっかりは、
自分で見つけるしかないんですよね。
新宿にはいろんな面がありますから。
たとえば「大ガード」のあっちとこっちでは、
また違う顔を見せてきますでしょ?
みなさんがもし、タクシーで新宿に来られるときは、
「大ガード」のあっちなのかこっちなのかを、
ちゃんと言ったほうがいいと思います。
──
それはもう、絶対にタクシーの方は
「ガード」は気になっていらっしゃいますよね。
みうらさんはこの「大(だい)ガード」の
こっち側の西には、なじみはありますか。
みうら
待ってください、我々は
「オオガード」と呼びますが。
──
ジクとジュクがわからないばかりか、
ダイとオオもわかりません。
(振り向いて、現場にいらっしゃる
新宿住友ビルのみなさんに訊く)
‥‥オオガードですか‥‥ああ、みうらさん、
オオガードのようです。
みうら
響きがいいですものね、
そっちのほうが。
──
学びました。
新で、ジュクで、オオガード。
たくさんの名所がありますが、
すべてを自分で見つけていかないと、
最先端には追いつけないですね。
西口の高層ビル街は高所の名所でもありますが、
みうらさんは高所はお好きでしょうか。
みうら
いや、高所は苦手です。
この新宿住友の三角ビルにも何度も来ましたが、
少し昇ると気が遠くなります。
しかし僕は、このビルの近くに
事務所をかまえていたこともありますからね。
なんというんでしょうね、
「慣らしていく」というんでしょうか、
あのとき僕は、事務所の窓から高層ビルを
何度も見上げていたんです。
──
慣らしていくことで克服する、
ということですね。
みうら
そうですね。
「これは苦手だ」と決めて
一生やらないということが、
どれだけよくないかを、僕はよく知ってるんです。
──
いま、若者はちょっと怖がりな傾向があって。
みうら
僕も怖がりでしたけど、
無鉄砲なものに憧れる世代でもあったので、
まずは「慣らし」からはじめたもんです。
「ここは安全だし」と
決められたところに行くよりも、
「自分には少し怖いかも」というところのほうが、
新しいものが見つかるのです。
それに、新宿区って広いんですよ、
ものすごく広いんです。
「まだかよ」っていうぐらい広いんです。
──
やっぱりここは区民になってみることが、
最先端への殻を破る第一歩ですかね。

(明日につづきます)

協力 新宿住友ビル

2022-04-27-WED

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  • コロナ画2022
    in SHINJUKU
    2022年4月29日(金祝)– 2022年5月4日(水祝)

    みうらじゅんさんがコロナ禍に描きはじめた、
    コロナ収束が締切となるであろう作品が、
    4月29日~5月4日に新宿で開かれる
    生活のたのしみ展」で公開されます。
    F10号のキャンバスを
    現在のところ78枚つないだ、巨大作品です。
    また、4/30(土)13:00より、
    みうらじゅんさんと糸井重里による
    ミニトークショーも場内で開催します。
    ※トークショーの着席観覧募集は終了いたしました。
    「コロナ画2022 in SHINJUKU」は、
    入り口を入ってすぐ、
    「ウェルカムマルシェ W-0」に展示しています。
    写真もOK。ぜひ見にきてください!