現代美術作家の加賀美健さんは、ヘンなものを買う。「お金を出してわざわざそれ買う?」というものばかり、買う。ショッピングのたのしみとか、そういうのとは、たぶん、ちがう。このお買い物も、アートか!?あのお買い物を突き動かすものは、いったい何だ。月に一回、見せていただきましょう。お相手は「ほぼ日」奥野です。

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加賀美健(かがみ・けん)

1974年東京都生まれ。現代美術作家。国内外の美術展に多数参加。彫刻やパフォーマンスなど様々な表現方法で、社会現象や時事問題をユーモラスな発想で変換した作品を発表している。

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instagram: @kenkagami

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買ったもの_その12 

「ワンちゃんのぬいぐるみ」

うちのワンちゃんたちです。このへんで少し好感度でも上げとこうかな、と(笑)。最初に、真ん中のコ(ゴールデンレトリバー)に出会ったんです。クリスマスシーズンの恵比寿のソニプラで、パッと目が合っちゃって。前回の巨大サングラスのときみたいに「入れるレジ袋がないです」って言うんで、肩車して帰ったんです。そしたら、すれちがう人たちがめっちゃ二度見してくるんですよ。本物のゴールデンレトリバーを肩に乗せて歩いてるタフガイだと思われたみたい。タグに「メリッサ&ダグ」ってあったんで、調べたらアメリカのメーカーでした。リアル方向のつくりで、なかなか出来がいいんです。ウ○チしそうなくらい。大きいコだと1万何千円とかするし、ひとつひとつはちゃんとした商品なんだけど、これだけ集めたら自分が怪しい愛犬家みたいに見えていいかな、と。このメーカーのコはだいたい集めましたね。もっと犬種を増やしてほしいです。ブルドッグとか。最終的には101匹ワンちゃん状態が夢かな。新しいコがやって来るたびに動画をアップしてたんです、インスタに。ソファで「ヨーシヨシヨシ!」みたいなアホな動画なんだけど、毎回「いいね!」の数が半端ないんですよ。そのうち「犬の動画まだですか?」とか「もう待ちきれません!」とか、すごい人気で(笑)。これ、ウ○チのフィギュアをただ横に置いとくだけでサマになるんです。犬って、散歩中にウ○チするじゃないですか。そしたら、みんな拾いますよね。マナーとして。ぼく、そういう場面に出くわしたら最後まで見ちゃうんです。絶対に。だって冷静に考えたらとんでもなくないですか。なにしろ「ウ○チを拾う」んですよ? ビニール越しとはいえ「手」で。「ワシっ!」とかって。犬を連れてなければ、ありえない行為じゃないですか。100円玉を拾うのとはワケがちがう。あなたの拾ったソレは「ウ○チ」なんですよ!? 六本木なんかを歩いてると、綺麗に着飾った外国人の女性がおしゃれな小型犬を散歩させたりしてますよね。当然だけど、そういう人でも拾います。ハイブランドのショルダーバッグを肩から下げたようなレディがです。ヘタしたらその高級バッグにしまってますよ。たったいま拾ったモノを。そしてふたたび歩き出す。六本木の街を。ウ○チを持って‥‥。で、そういう一連の行為も、横に「犬がいる」だけで「日常」になります。逆に犬も連れてないのに拾ってたら「あいつ、やっべ!」となる。時と場合によっちゃ通報されかねません。犬がいるから成立するんです。そう考えると、いろいろ深いなあと。やっべ。すっかりウ○チの話になっちゃった。いまはAIじかけのかしこいワンちゃんロボもいますけど、ぼくは、こっちのほうが好きかな。ウ○チしそうで。

加賀美さんのInstagram動画より 加賀美さんのInstagram動画より

正直、最初は「えっ、ふつうにいい買い物じゃん?」と思ったんです。いい買い物ってのも変ですが。いつもの加賀美さんのショッピングの異常性(笑)が、ストレートには伝わってこなかったんですね。でも、話を聞いてたら「おかしいぞ」と。だって、こんなかわいいワンちゃんズを前にして、こんな好感度アップ写真を撮らせておいて、録音時間の70パー超が「ウ○チ」の話なんですよ。どう考えてもおかしいです。そして、おもしろい。

加賀美さんの「カッコいい」

大荷物のジャケットスタイルjacket

テーラードジャケットを着た男性が、たくさんの荷物を手に持って歩いていました。中身は、大量のトイレットペーパー。そのスタイルが、とてもスタイリッシュに見えてしまいました。これ、カジュアルな服で持っていても、まったくおもしろくない。テーラードジャケットもしくはスーツスタイルで「たくさんの荷物を持つ」のがポイントです。かっこいい。

2023-02-16-THU

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