現代美術作家の加賀美健さんは、ヘンなものを買う。「お金を出してわざわざそれ買う?」というものばかり、買う。ショッピングのたのしみとか、そういうのとは、たぶん、ちがう。このお買い物も、アートか!?あのお買い物を突き動かすものは、いったい何だ。月に一回、見せていただきましょう。お相手は「ほぼ日」奥野です。

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加賀美健(かがみ・けん)

1974年東京都生まれ。現代美術作家。国内外の美術展に多数参加。彫刻やパフォーマンスなど様々な表現方法で、社会現象や時事問題をユーモラスな発想で変換した作品を発表している。

http://kenkagamiart.blogspot.com/ 
instagram: @kenkagami

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買ったもの_その13 

「コーンヘッズのかぶりもの」

昔からラバーマスクが好きで、いろんなの持ってるんですけどね。こないだ、小学校のころの自分の写真を見たら、すでにかぶってたんですよ。うれしそうに。ゾンビのマスクか何かを、ウェ~なんつって。我ながらキャリア長げぇ‥‥と感心しました。おかげで、よくオススメされるんです。「加賀美さん、こういうの好きですよね?」って。Amazonさんに。これも、それでパッと見て、ウオッと思って、ポチッとクリックして買ったやつです。え、似合ってます? あ、そうですか。ありがとうございます。たしかにスルッと入りました。シンデレラフィットです。製造元がルービーズって、アメリカの有名な老舗コスチュームメーカーなんです。だからモノがいいんですよ。しっかりしてるし、かぶり心地もいい。とにかく、こういうの買うときって、本当に要るかどうかを自らに問いかけてはいけないんです。そんな問いがチラッとでも脳裏をかすめたら、何も買えなくなります。だって「本当に必要?」なんて聞かれたら、ぜんぶ要らないから(笑)。心が動いた瞬間に購入しなきゃダメ。必要かどうかじゃない。ほしいと思った気持ちが大事なんです。生活必需品の場合は「こっちのほうが使いやすそう、でもこっちのほうが安いんだよな」とか吟味して買うじゃないですか。ぼくが好きで買ってるものは「生活不用品」だし、そもそも比較対象がない。てっぺんのエッジもっと攻めてんのないかなとか、ないんで。人類は、そんなにコーンヘッズ各種つくってないんで。えっと、いつもどんな検索ワード入れてんのかって? 検索窓に? そうですね、「巨大」とか「ウ○チ」とか「非売品」とか「80年代」とか「カッパ」とか‥‥かな。それ、メルカリの人にも言われたことありますよ。「加賀美さんの検索ワードが気になる」って。そんなテーマのトークショーに呼んでもらったこともあります。ん、どういうときにかぶってんのか、ですか? いや、どういうとき‥‥これをかぶってファッション誌に出たことはあります。モデルとして。全ルック、この頭で。いいでしょ。なかなか評判もよかったんですよ。思えば、よくゆるしてくれたなあ。編集部の人。ふだん使いは、まだやったことないです。これかぶってお出かけとか、まだ。でも、もともと坊主なんで、今朝はちょっと寒いなー頭がって日とか、いいかもしれないですね。あったかいと思う。そうだ、この上に、さらにニット帽をかぶってみたらカッコいいかも。ほら、こんな感じで。エベレストとか南極とかだと手や足の指の先から凍るっていうじゃないですか。先っちょのほうから。この場合、頭頂部からやられると思うんですよ。だから凍傷っていうんですか、あれ防止って意味でも。

福禄寿? とにかく似合ってます。これまででいちばん似合っているかもしれない。地肌との境目が気にならなくなるくらい、なじんでる。クリックの際「必要かどうか自らに問いかけてはいけない」というのも極意感ありますね。「Don’t think, feel.」という格言は、本当に、あらゆる道に通じてるんだなあ。「現代美術作家の、おかしな買い物道」にも。偉大です。リーさんも、ケンさんも。

加賀美さんの「カッコいい」

ズボンの裾からトイレットペーパーtoiletpaper

どうしてこんなことになったのか‥‥。よくわかりませんが、トイレに行ったあとなのか? お洒落で、わざわざチラ見せしてるのか? トイレットペーパーを? ナゾなところが、かっこいい。高いブランド品をたくさん買い物したときのレシートなんかをズボンの裾から出してみても、また、おしゃれかもしれません。

2023-03-16-THU

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