加賀美健(かがみ・けん)
1974年東京都生まれ。現代美術作家。国内外の美術展に多数参加。彫刻やパフォーマンスなど様々な表現方法で、社会現象や時事問題をユーモラスな発想で変換した作品を発表している。
https://kenkagamiart.blogspot.com/
instagram: @kenkagami
買ったもの_その14
「タコ焼きのかぶりもの」
すいません、味をしめました。前回の「コーンヘッズ」をアップしたら「かわいい♡」とか何とか言われちゃって。調子にのって、またかぶりものです。こんどはタコ焼きですね。手作りの、1点もの。1万円くらいだったかな。最初けっこうするなと思ったんですが、スマホの画面をよーく見たら、ところどころにかなりのつくりこみを感じて。それで「いただきます!」って感じで購入を決めました。まず、この「丸み」にウットリですよね。じつになめらか。厚紙をミルフィーユ状に重ねて強度を出していて、内側には新聞紙を貼り込んでます。細部に渡って、丁寧な仕事。作り手の、確かな技術が伝わってきます。いまにも踊りだしそうなカツオ節は、かんなの削りカスで巧みに表現。色的にからマヨなのかな‥‥絵の具マヨネーズをたっぷりたらしながら、なんと「青ノリは本物」なんですよ。商品説明文にも書いてありました。「青ノリは本物です」って。たしかに、これが色紙とかだったら興ざめだったかも。作り手の、豊かな感性が伝わってきます。コメントもよくて「自分でつくりました。もうかぶらないので、売ります」って。「つくるのけっこう大変だったから、この価格にしてます」って。「もうかぶらない」ってのが、何かいいなと(笑)。うすうすお気づきかもしれませんが、ぼくは「巨大なもの」が大好きなんですよ。さらに「かぶりもの」にも目がない。だから「巨大なタコ焼き」ってだけでも「買い」なのに、そのうえ「かぶれる」って! もう「夢のタコ焼き」です。1粒5万円のイチゴとか、あるじゃないですか。桐の箱に入ってるようなやつ。これは、アレですよ。ぼくにとっての。タコ焼きなのに1粒だしね。実際、アトリエに飾ってるときは、拾ってきた桐箱の上に載っけてるんです。ちなみに1粒1万円、桐箱入りの高級タコ焼きが本当にあったら、中に何が入ってんのかなあ。タコは入ってると思うけど。これをかぶって、タコ焼きを買いに行くのはどうでしょうね。「タコ焼きですか!?」って聞かれるかな。それとも、見て見ぬふりをされるかな。店員さんのリアクションが気になります。えっ、似合ってる? ほんと? あ、うれしい。次のタコ焼きパーティーにかぶっていこうかな。タコ焼き名人だと思われそう。で、ずっと焼く係にされそう(笑)。ん、そのときのスタイリング? やっぱりスーツじゃないですかね。できるだけカチッとしたほうがいいと思うんですよ。ちゃんとネクタイを締めて、足もとはオーセンティックな革靴で。で、タコ焼きでハズす。ぼくは、この作者さんに、お好み焼きでも何かつくってほしいと思う。なんだろう‥‥平べったい‥‥マントみたいなリュック? お好み焼き型の。もんじゃでもいいや。タコ焼きと合わせて、粉ものマン。茶色いヒーロー。
最近テレビ出演が続いた加賀美さん。いろんな反応があったそうで。「意味わかんないとか、あんな字オレでも書ける‥‥とかも。ハハハ」でも、どうでしょう。加賀美さんのやってることが大絶賛されて道徳の教科書に載るとか、そんな社会のほうがホラーです。そうなったら加賀美さん、意地でも巨大タコ焼きかぶんないでしょうね。加賀美さんが巨大タコ焼きをかぶり続けられる日本であってほしいと思います。
頭に糸くず
洋服に「糸くず」が付いている人はたまに見かけますが、「頭に糸くず」はほとんど見かけません。ちょっとしたアクセントに良さそうです。その際には「その頭についてる糸くず、おしゃれだね!」と言わせるくらいのさり気なさが必要でしょう。
2023-04-16-SUN