10月に入ってから、
個人的に23区を回りはじめた。
趣味みたいなものだ。
上京して１年経たないし、
神田はもちろん、東京の日常を知りたい。
建前はそういう気持ちで、
あとはひたすら歩いて、写真を撮っている。

まだその活動をはじめて数日だが、
ほかの町を歩いていると、
「神田の町は、神田にしかない」
というあたりまえのことに気づきはじめた。
江戸の薫り、明治の面影、新旧問わない文化。
神田の雰囲気は、神田にしか存在しないこと。
分かったつもりでいたけど、
分かったつもりだったようだ。
あたらしい土地を探検しながら、
その土地も好きになるし、
神田もまた好きなるし、
お得な現象が起きている。

さて、この日ははじめての駅で降りて、
気ままに20km歩いた。
もうすぐ夕方なので切り上げることにして、
神田に移動する。
スイーツが別腹なら、
神田は別足に分類される。
歩かないと写真は撮れない。
５kmほど歩いて、結局クタクタになった。

しかし、あまりいい写真は撮れなかった。
残念だなあと思いつつ、
帰り際に神田錦町で、
昔ながらのラーメン屋さんを見つけて入った。
昭和の懐かしさ漂うカウンター席で、
あっさりしたラーメンの大盛りと半チャーハン。
うんうん、なんだか今日は染みる味だ。
おいしくいただいて、
ご馳走様ですとお店の外へ出た、そのときだった。

西の空が、マジックアワーだ。
日没後の淡い青空と、
うつくしく染まったピンク色の高層雲。
夕方と夜の境界線が、いま、混ざり合っている。
なんとまあ！　急いでシャッターを切る。
空が狭い、急いで走る。シャッターを切る。
染まった雲は数分で元に戻った。
でも、なんとか撮れていた。
なんだかさっきのラーメン屋のおじさんに、
ありがとうと言いたくなった。

その場所にいるか、いないかだもんなあ。
歩いて、めぐり合うこと。
23区も神田も、まだまだ歩こう。