「風ぐるま」は、
千代田区が運行する地域福祉バスのこと。
運行開始は平成９年で、
かつては乗合タクシーに近い車両だった。
2016年から現行の車両が走っている。

現行の車両は床が低く、
車椅子用のスロープ板も常備されたバリアフリー様式だ。
運行マップを見ても、
４つのルートを合わせれば東は四谷や麹町、
西は岩本町あたりまでカバーしていて、
ぼくが神田で歩く範囲の1.5倍はあるだろう。
利用料金も良心的で、
地域の方々への思いやりが随所に感じられる。

パッと写真を撮りたくなったのは、
風ぐるまの鮮やかなピンク色が、
まちに合っていたからだ。
車両を見かけたことは頻繁にあったけれど、
乗るわけでもないしなあ、と内心思っていた。
「歩きこそ正義」「楽をしない」
みたいな頑固さと不器用さが、
心根にはあったのだ。

でも、急に目が合って、
バスの鮮やかさにときめいて、
「乗りたい！」と心がザワついた。
ああ、恋がはじまった。
しかし、ときめきつつも、
高揚しすぎてはいけない。
平静を装い、
バスの運転手さんにひょうひょうと、
そして明るくはっきり、
「ありがとうございました」とお礼を言うのだ！

今度、風ぐるまを見つけたら、
行き先も気にせずにふらっと乗ってみよう。
「歩き移動より楽だ」
とちいさな文明開化が起きそうな気もするし、
車道からまちを見る機会はほとんどないから、
発見がいろいろとあるかもしれない。

風ぐるまの鮮やかなピンク色は、
千代田区の花である「さくら」の色だ。

（司町交差点にて）