テレビでひっぱりだこの滝沢カレンさんが、
ちょっと変わったレシピ本を出しました。
おいしそうな料理が並んでいるけれど、
文章を読んでみると、あれ? あれれ?
「何も知らない鶏肉」「目つぶし覚悟の玉ねぎ」
すべて、カレンさん流の言葉で解説された
独特な世界観の“レシピ文学”になっています。
そんなカレンさんから糸井重里に、
この本『カレンの台所』の帯に添える
コメントのご依頼をいただきました。
「この人は、日本語をこわしているのではない。
あたらしい日本語をデザインしているのだ。」
と書いた糸井が、滝沢カレンさんの日本語は
どうできあがったのか対談しながら探ります。
滝沢カレン(たきざわかれん)
1992年東京生まれ。
2008年、モデルデビュー。
現在は、モデル以外にもMC、女優と幅広く活躍。
主なレギュラー出演番組に
『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ)、
『沸騰ワード10』(日本テレビ)、
『伯山カレンの反省だ!!』(テレビ朝日)、
『ソクラテスのため息
~滝沢カレンのわかるまで教えてください~』
(テレビ東京)など。
Instagram @takizawakarenofficial
- 糸井
- モデルの仕事は何年ぐらいやってるの?
- 滝沢
- いま、11年ぐらいです。
17歳から今年28歳になります。
- 糸井
- あっ、だいぶやってますね。
ずっとモデルの仕事をしてきたわけで、
そのままでもいいとは思っていたんですよね。
- 滝沢
- 「モデルだけでもいい」と思っていた
モデル人生の中間の私もいました。
でも、芸人さんがたのしくて笑わせてくれるので、
「芸人さんといっしょに仕事したいな」
と思っていた私もいました。
- 糸井
- そっか、お笑いが好きだったんだ。
- 滝沢
- 芸人さんといっしょに仕事をしたら、
今度はリーダーになりたくなってしまったんです。
寄り道をすればするほど、
夢が増えていくなと思っています。
今はまっすぐな道を行くよりも、
いろんな寄り道をしたいんです。
いろんな道に寄っていくのもたのしいんだ、
というのがやっとわかりました。
- 糸井
- 「そんなにお笑いが好きなんだったら
テレビに出られるよ」
と言ってくれる人がいたのかな。
- 滝沢
- というよりは「テレビに出てみたい」という
強い気持ちがあったんです。
でも、モデルだけをやっていた時、
モデルのお仕事をポンポンポンポン
いっぱいはできていませんでした。
『JJ』っていう雑誌の専属モデルだったのに、
撮影が0回の月もありました。
そうしたら、マネージャーさんが
「毎月5回モデルの撮影があったら、
ごほうびとして顔見せに連れていきます」
と約束してくれたんです。
- 糸井
- おおっ!
- 滝沢
- そしたらモデルも頑張れるし、
テレビでも頑張れるかもしれません。
もう、ワクワクしかないじゃないですか。
すぐには達成できなかったんですけど、
8ヶ月くらいでついに月5回の撮影ができまして、
「踊る!さんま御殿!!」のスタッフさんに
出会うチケットをいただきました。
- 糸井
- なるほどなるほど。
クーポン券を貯めるみたいだね。
- 一同
- (笑)
- 滝沢
- キラキラが見えていた方が頑張れますよね。
ごほうびとしてオーディションがあって、
番組をすごく見てますということを伝えたら、
「さんま御殿」さんに出ることができて、
さんまさんと出会わせていただきました。
- 糸井
- それはいい道だね。
- 滝沢
- ほんとにありがたいです。
- 糸井
- 「さんま御殿」に出る時って、
すごくアンケート取られるでしょう?
- 滝沢
- アンケート、取りますよね。
同じようなテーマのアンケートもあるので、
同じエピソードを何回も書いたことがあります。
- 糸井
- はあー、まじめに一個ずつ書いてるんだ。
- 滝沢
- でも、私はそんなにいっぱい
エピソードがあるわけじゃないので、
何か思い出を作らなきゃとか、
いろんなことに目を向けることは増えました。
今までまっすぐ入っていたバスの道も、
左を見てから入ってみようとか、
ちょっとでも何か、次のエピソードに
使えるものがあるかもしれないと思って。
- 糸井
- アンケートが人生を変えるんだね。
- 滝沢
- 変えます。
もしアンケートを書かなくても
番組には出られるかもしれないけれど、
さんまさんとはたのしい会話できません。
どうせ御殿にご招待されるなら、
さんまさんと話したいから。
- 糸井
- 期待に応えようとしてるのかな。
- 滝沢
- さんまさんと目が合いたいし、
さんまさんのたのしい話も聞きたいし、
今でもそういう気持ちがありますね。
一番緊張する人ですけど。
- 糸井
- 普段からおもしろくないと
アンケートも書けないでしょう?
- 滝沢
- 探していないとアンケートは書けないです。
- 糸井
- ぼくらは毎日文章を書いているから、
毎日、書く目で生きているんですよ。
- 滝沢
- どういう目なんですか、それは。
- 糸井
- アンケートの話と近いのかもしれない。
でもぼくは、毎日の文章のために
人生を変えるつもりはないです。
なるようになって転んだら転んだだし、
なんにもおもしろいことがなくっても
それはそれで1日です。
じゃあ今日はなんだろうって考える。
だから、アンケートとぼくは逆なんです。
ぼくも「さんま御殿」に3、4回出ていますけど、
「もうしゃべり終わったよ!」ぐらい
アンケートを取られるのが嫌で、
ついに「もうこれは嫌だ」って書いたの。
- 滝沢
- えっ! アンケートに?
- 糸井
- 放送作家が知っている人だったんで、
「糸井さん、わかった!」って
声を掛けないようにしてくれたの(笑)。
- 滝沢
- すごい贅沢な断り方!
- 糸井
- 贅沢っていうか、
ぼくはテレビに出るのが仕事ではないから。
- 滝沢
- そうですね、書く方ですもんね。
アンケートのために
生きているわけじゃないってことですね。
- 糸井
- でも、若い時には、
アンケートに書けそうな失敗も
ほんとにしてるわけ。
- 滝沢
- どういう失敗ですか。
- 糸井
- たとえばさ、助手の子とご飯を食べていて
「俺が奢るから、もっと食えよ」とか言って、
さあ出ようって時に財布がないんだよ。
「悪いけど、ちょっと3000円貸して」
なんて話すと、そいつが他の人に
「糸井さんも結構困ってんだよねー!」って
みんなにコソコソ言ったもんだから、
みんなの見る目が変わっちゃって困ったよ、
――みたいな話は、本当にあるわけです。
でも、アンケートがあるからと言って
「いっそここは財布を忘れたらどうだろう」
とはしたくないですよね。
- 滝沢
- それはよくないですよね。
嘘になっちゃう。
- 糸井
- でも、お笑いの人たちだったら、
そっちに飛び込んでいくわけじゃない?
- 滝沢
- 芸人さんは、ほんとに毎回
すごいエピソードです。
- 糸井
- ですよね。
お笑い芸人のエピソードトークっていうのは
プロレスみたいなものだから血が出たら勝ち。
骨がボキッていったら勝ちよ。
- 滝沢
- 芸人さんはいつもすごいなと思っています。
いつも番組に出ている人もいるのに
エピソードがおもしろいんです。
「この3ヶ月でそんな出来事あったんですか。
私と同じ3ヶ月とは思えない。
9ヶ月過ごしてたんですか?」
というぐらい私と違うので、ほんと尊敬します。
- 糸井
- 芸人さんはバカをやりそうな友だちを
周りに置いているよね。
芸人さんはその人の名前の
プロダクション、生産工場だから。
モデルで同じことはできないよね。
- 滝沢
- ああ、そこまで頭が回ってなかったですね。
- 糸井
- それはそうだよ。
本当にたのしいことって言っても、
モデルさんは男の人との話なんて言えないから。
- 滝沢
- 相当いろんな人生を歩かないと‥‥。
(つづきます)
2020-04-19-SUN
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滝沢カレンさん初の料理本、
『カレンの台所』ができました!