テレビでひっぱりだこの滝沢カレンさんが、
ちょっと変わったレシピ本を出しました。
おいしそうな料理が並んでいるけれど、
文章を読んでみると、あれ? あれれ?
「何も知らない鶏肉」「目つぶし覚悟の玉ねぎ」
すべて、カレンさん流の言葉で解説された
独特な世界観の“レシピ文学”になっています。
そんなカレンさんから糸井重里に、
この本『カレンの台所』の帯に添える
コメントのご依頼をいただきました。
「この人は、日本語をこわしているのではない。
あたらしい日本語をデザインしているのだ。」
と書いた糸井が、滝沢カレンさんの日本語は
どうできあがったのか対談しながら探ります。

>滝沢カレンさんのプロフィール

滝沢カレン(たきざわかれん)

1992年東京生まれ。
2008年、モデルデビュー。
現在は、モデル以外にもMC、女優と幅広く活躍。
主なレギュラー出演番組に
『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ)、
『沸騰ワード10』(日本テレビ)、
『伯山カレンの反省だ!!』(テレビ朝日)、
『ソクラテスのため息
~滝沢カレンのわかるまで教えてください~』
(テレビ東京)など。

Instagram @takizawakarenofficial

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第6回 5日間どこやったねん!

滝沢
いつも思うことがあって、
糸井さんは1日24時間生きていて、
絶対に毎日、何かの文にしますよね。
歩いている景色を文にしているんですか。
糸井
歩いている景色というよりは、
ただ歩いていても、歩いていることには
あまり気がついていないじゃない?
ぼくが書くものは、見ているものか、
考えているものか、感じているものか、
あるいは前から考えていたことが
組み合わさっているか。
だから、さあ書くぞってなってから、
「前から思っていることなんだけど‥‥」
と言って書くこともあるし。
滝沢
なるほどなるほど。
糸井
たとえばこの間書いたことなんだけど、
音楽に「休符」っていう記号がありますよね。
滝沢
あっ、それ読みました。
糸井
休符については、
小学校の時に考えていたことなんです。
帽子を逆さにしたみたいな
全休符というのがあるけれど、
なんのためにあるんだろうと思って。
全部休むなら書かなきゃいいじゃんと思ったの。
小節全部を休むわけだから、
他の音符がなければ書いてなくても
同じじゃんって思ったんです。
滝沢
空白だっていいってことですね。
糸井
でも、違うんだよね。
というのを大人になってから思ったんです。

滝沢
そういうのって、急に思いだすんですか。
糸井
いろんなことが自粛になっている
今の時期って休符だよなって思っていたら、
全休符のことを思い出しました。
犬を撫でながら、それなら書けるかなって思って、
とにかく書き出してみようって書き出す。
ということを毎日やっているわけです。
滝沢
そうやって文ができているんですね。
糸井
前から思っていることがないと、
材料空っぽじゃ書けないんです。
滝沢
記憶力が相当いいんですか。
糸井
記憶力はよくない。
滝沢
じゃあ、どうやって昔を思い出すんですか。
糸井
つまんないことは覚えてるから。
滝沢
子供の時のことが、
ずっと強く残っているとか。
糸井
フレミングの法則ってあるでしょ?
滝沢
ああ、ありました。
糸井
左手だったか右手だったかも忘れてるけど、
指で何かやったことは覚えてるの。
ラッパーが「Yoh! Yoh!」とか言ってると、
「あれフレミングの法則じゃない?」
とか思うじゃない?
滝沢
えーすごい! 思わないです。
なかなかスッと出ないです。
糸井
何にも知らなくてもさ、
「フレミングの法則じゃない?」って
言えばいいだけのことだからさ。
その程度のことだよ。
滝沢
ああ、そうですかね。
糸井
目に入ったもの、なんでもいいんだよ。
たとえば、ぼくらの目の前に
セーターを着ている人がいるけど、
編み物っていうのは1本の道路で、
2本っていうのはないんだよ。
滝沢
たしかにないですね。
1枚の、1本ですね。
糸井
そう、編み物は一筆書きなんだよ。
そのことは前に聞いたことあるんだけど、
織物をしている人からすると、
ものすごくスッキリしていて
気持ちがいいんだって。
滝沢
編み物の1本が、ですか?
糸井
織物をする人って、経糸と緯糸を
組み合わせて柄を作っているわけだよね。
1本が1つの色だから、それはもう、
小説を書いているみたいに大変なんだって。
滝沢
それを重ねて。
糸井
糸を染める時から、
「ここまでは赤で、ここまでは緑で」
と染めていって、次に次にって
経糸に入れていくわけだから。
それはもう、社会生活みたいに大変なんだよ。
滝沢
考えながらですもんね。
糸井
その人がすごく落ち込んで
体調をくずされていた期間があって、
何をしていたのか聞いてみたら、
編み物をして気を紛らせていたって言うんだよ。
滝沢
ええっ?
糸井
織物の大先生がだよ。
それって、すごいじゃない。
滝沢
すごい。
糸井
それだけ、まったく違うものなんだってことだよ。
滝沢
それでも糸から離れようとは
思わなかったんですね。
糸井
思わなかったんだね。
1本の糸が全部作ってくれるということが、
すごく気を楽にしてくれたんだって。
滝沢
逆に楽なんですね。
糸井
っていうようなことを、
今もう覚えちゃったでしょ?
滝沢
すごい鳥肌立とうとしました、今。

糸井
ちょっと人に言いたくもなるし、
編み物をしている人を励ましてみたくなるよね。
手書きで文章を書く時って、
編み物と似ていると思うんだよ。
あいうえおって一画ごとに離しているけど、
途中でハサミを入れているだけで
「あ」って書くまでは一筆書きみたいなものです。
滝沢
気持ちがつながってますよね。
糸井
音楽も同じなんですよ。
「ラララーラーララ」って歌った時に、
止めているだけで1つのものです。
線の上を走ったり、歩いたりすることって、
みんな大好きなんだな、
というようなことをこの頃思うんだよ。
こんなことを、いろんなところで見つけて、
次はそういうことを書こうかなって、
忘れなければ書くの。
滝沢
メモはしないんですか。
「あ、これ今度書こう」って。
糸井
メモする時もありますよ。
年取ると、忘れるに決まってるからね。
滝沢
私もです。忘れちゃいます。
糸井
メモはする?
滝沢
メモしようということすら忘れちゃうんで。
でもエピソードのアンケートが来た時に、
何も覚えていられなかったら
絶対に私が苦しむじゃないですか。
だから、なるべくちっちゃいことでも
メモしようと思っています。
糸井
そんなにメモするんなら、
あとでほぼ日手帳あげるよ。
1日1ページで、いっぱい書けるから。
滝沢
嬉しい、ありがとうございます。
糸井
1年分、毎日書けるよ。
滝沢
360ページ?
糸井
うん、365ページ。
5減らさないで(笑)。

滝沢
ありがとうございます(笑)。
糸井
その、5日を減らさないように、
みたいなこと言うのがさんまさんだよね。
「今のお前、5日間どこやったねん!」
滝沢
言いそう、言いそう。

(つづきます)

2020-04-20-MON

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  • 滝沢カレンさん初の料理本、
    『カレンの台所』ができました!

    料理ができあがるまでの工程が
    すべて滝沢カレンさんの紡ぐ物語で
    解説されている料理本ができました。

    鶏の唐揚げの作り方で、
    「冷たい何も知らない鶏肉」

    ハンバーグの作り方で、
    「こんちくしょうと混ぜてください」

    ロールキャベツの作り方で、
    「どの葉が一番男として強いか」
    など料理本には珍しい
    詩的な表現を味うことができます。

    帯のコメントは、糸井重里が書きました。

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