けんすうさんと糸井重里の初対談です。
ブロックチェーン、AI、NFTなど、
新しい技術に詳しいけんすうさんには、
いまどんな未来が見えているのでしょうか。
インターネット黎明期の話から、
お金の価値、アマチュアリズムなど、
さまざまな話題が飛び出しました。
これからのインターネットが、
なんとなくつかめるかもしれませんよ。
全7回、たっぷりおたのしみください。
本対談は「ほぼ日の學校」でも公開中です。
第1回
けんすうさんは何者ですか?
- 糸井
- 今年はこんなことしてみたいとか、
いろいろあるのですが、
そのひとつが知り合いなんだけど、
ふだん会わない人の話が聞きたいなと。
- けんすう
- ほお、なるほど。
- 糸井
- そういう人の中でも、
話すテーマの目星がつく人と
そうじゃない人がいるんですけど、
まったく目星がつかなそうな人の代表が‥‥。
- けんすう
- えっ、ぼくですか?
- 糸井
- うん(笑)。
共感したりする分量が多いのに、
ぜんぜん目星がつかない。
- けんすう
- じゃ、なんの話をするのか、
糸井さんもまだ固まっていないんですね。
- 糸井
- わかんない(笑)。
- けんすう
- なるほど(笑)。
- 糸井
- ただ、あえてタイトルを付けるなら、
「ぼくは何を学んだらいいですか?」
っていうのがテーマかなと思っていて。
- けんすう
- あぁ、なるほど。
- 糸井
- ぼくぐらいの年齢になると、
先にいろんなことをやってるから、
みんなから「どうなんですか?」って
訊かれることがすごく多いんです。
- けんすう
- ええ、ええ。
- 糸井
- それをずっとやってるんだけど、
ぼくも知らないことはたくさんあるし、
「俺こそ訊きたいよ」とも思うし。
それでそういう話ができそうで、
話の取っかかりが
いろいろありそうだなと思ったのが、
けんすうさんだった(笑)。
- けんすう
- ははは、なるほど。
- 糸井
- けんすうさんのこと、
たぶんみんな本名も知らなければ、
なんにも知らないと思うんです。
- けんすう
- そうですよね。
何者かの説明も難しいでしょうね。
- 糸井
- ですよね。
で、案外ぼくもそう見られてて。
- けんすう
- あ、たしかに。
- 糸井
- だからきょうは、
お互いに「そうそう」って言い合ったり、
あるいはぼくとけんすうさん、
どこが違うんだろうも含めて、
お互いキャッチボールをしていると
何かが見えてくるかなと。
- けんすう
- ぼくもけっこういろんな人から
「どういう人を目指しているのか」
とか訊かれたりするんですけど、
最近わかったのは、
「ロールモデルは糸井重里さんです」っていうと、
これ、全員に納得してもらえる。
- 糸井
- そうですか(笑)。
- けんすう
- 「ああ、それならわかる」って。
なんとなく延長線上に
糸井さんがいらっしゃるっていうが、
まわりから見てもそうなんだというのは、
おもしろかったですね。
- 糸井
- 広告をやってる人が
ぼくを目指すといのはまだわかるけど、
けんすうさんもぼくも
どっちもわからない者同士で(笑)。
- けんすう
- ははは、そうですね。
- 糸井
- じゃあ、まずスタートのところで、
ぼくもよく訊かれて困る質問なんだけど、
「あなたはなんなんですか?」と言われたら、
けんすうさんはなんて答えますか。
- けんすう
- ぼくは、一貫してインターネットで
おもしろいことをやるという、
そういう立場の人だとじぶんでは思ってます。 - 10代後半くらいで
はじめてインターネットに触れて、
これまで20年以上、個人でも会社でも、
インターネットらしい
コミュニティサイトをつくったり、
メディアをつくったりしながら、
いろんな形で関わってきているので。
- 糸井
- インターネットっていうものを、
どんなふうにとらえているんですか?
- けんすう
- それまで本とかテレビとかでないと
発信できなかった情報とか、
人の頭の中の考えが出せる場所、
というイメージがいちばん近いですね。 - それはメディアともいえるし、
メディアにはならないような雑多な、
ほんとにくだらない投稿とか、
その両方が合わさったみたいなイメージですね。
- 糸井
- 形さえわからない
「超容れ物」ですよね。
- けんすう
- そうですね。
- 糸井
- それをすごい近視眼的に見れば
ウジ虫が湧いてるみたいにも見えるし、
宇宙の広さ分あるぞっていわれても、
そうだろうなって思うし。
- けんすう
- はい、まさにそういう感じです。
- 糸井
- ぼくもけっこう似たイメージで、
インターネットっていうものを
はじめて眺めてビックリしたのは、
「なんでも言えるんだ」っていうことで。
- けんすう
- そうなんですよね。
90年代のインターネットとか、
言っちゃいけないようなものとか、
たくさんあったじゃないですか。
そういうのが出てたのは衝撃的でした。
- 糸井
- 最初にインターネットに触れて、
突っ込んでいった場所ってどのあたりですか。
- けんすう
- ぼくは16歳ぐらいのときに
「呪いのホームページ」っていうのを作ったんです。
- 糸井
- ませてますね(笑)。
- けんすう
- 「このページを見た人は
10人に教えないと呪われます」みたいな、
そういうページを作ったら、
どのぐらい人が来るんだろうと思って。
- 糸井
- うん、うん。
- けんすう
- 結果、そのページ自体は
それほどヒットしなかったんですけれども、
そこに「呪いの掲示板」っていう、
昔のホームページによくあった掲示板を置いたら、
日本中から「あの人を呪いたい」という
投稿がものすごく集まったんです。
それがぼくのインターネットの原体験で。
- 糸井
- すごい体験ですね。
- けんすう
- すごかったですね。
そのうち霊媒師の人からメールが来て、
「よくない気が集まってるので
ページを削除した方ほうがいい」って。
霊媒師じゃなくてもわかるくらい
よくない気が集まってましたから(笑)。
- 糸井
- 気分は悪くなりますよね。
- けんすう
- それでページは消したんですけど、
インターネットはこんなことが起こるんだっていう、
そういう衝撃はありました。
- 糸井
- それを16歳の子が受けとめたら、
ちょっと歪んだりしませんでしたか。
- けんすう
- ただ、それと同時に、
インターネットのいい面も体験していたんです。
当時、友だちのバンドがじぶんたちの曲を
ホームページにアップしていたんですけど、
福岡にいるまったく知らない人から、
メールで感想が届いたりするんですよね。
- 糸井
- あー、はいはい。
- けんすう
- それまでアマチュアバンドの曲を、
遠くにいる人が聴く手段ってなかったわけで、
インターネットってすごいなって。
そういうポジティブな体験もありました。
- 糸井
- それは、いつ頃ですか。
- けんすう
- 1995年とか96年とかだったと思います。
まだヤフーが日本にできたくらいの時代でした。
ホームページを探すにも、
いろんなリンクをたどっていくみたいな。
- 糸井
- まだ検索エンジンが、
ぜんぜん頼りにできない時代ですよね。
- けんすう
- そうです、そうです。
その概念自体がまだほとんどないときでしたね。
(つづきます)
2023-06-12-MON
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けんすうさんが選ぶ、
インターネットのいまとこれからを
考えるための本。ふだんからビジネス本を
たくさん読まれているけんすうさん。
インターネット関連のおすすめ本を、
解説付きで5冊教えていただきました。
もっと深く知りたい方は、
ぜひ参考にしてみてください。『ツイッター創業物語
金と権力、友情、そして裏切り』(日経BP)
著:ニック・ビルトン 訳:伏見威蕃ツイッターは歴史的にみても、
かなりグダグダな経営をやっている時期が長く、
トラブルつづきの企業です。
それは、いまもつづいているとも言えます。経営、運用、技術、どれをとっても、
極めて秀でているとは言えないツイッターですが、
サービスが魅力的であるために、
世界に大きな影響を与えるようになったわけで、
とてもおもしろいなと思っています。『ソーシャルメディア・プリズム
SNSはなぜヒトを過激にするのか?』(みすず書房)
著:クリス・ベイル 訳:松井信彦ソーシャルメディアによる
影響について書かれている本です。
短い書籍ではありますが、
ソーシャルメディアによる
社会の分断についての問題から、
インターネットの希望の話まで書かれていて好きです。『ネットは社会を分断しない』
(KADOKAWA/角川新書)
著:田中辰雄、浜屋敏10万人規模の調査をして、
いまのインターネットと
社会の実態はどうなのかを調べたという本です。
インターネットによって
社会が分断されているように感じたりしますが、
実はそんなことないよ、
という内容が書かれています。『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社)
著:アダム・オルター 訳:上原裕美子依存症ビジネスについて書かれた本です。
現在のインターネットの主流である
ソーシャルメディアやゲームなどで、
依存症ビジネスの仕組みは
良くも悪くも活用されています。
ここを知っておくことで、
いまのインターネットについてより理解できるかなと。『イーサリアム
若き天才が示す暗号資産の真実と未来』(日経BP)
著:ヴィタリック・ブテリン 編:ネイサン・シュナイダー
訳:高橋聡歴史に名を残すであろう
ヴィタリック氏のコラム集です。
暗号通貨・イーサリアムの考案者である彼は、
極めて頭がいいんだろうな、というのと、
それをわかりやすく美しい文章で
表現できる稀有な存在です。
インターネットを次の段階に
引き上げた人の名文がたっぷり読めます。