けんすうさんと糸井重里の初対談です。
ブロックチェーン、AI、NFTなど、
新しい技術に詳しいけんすうさんには、
いまどんな未来が見えているのでしょうか。
インターネット黎明期の話から、
お金の価値、アマチュアリズムなど、
さまざまな話題が飛び出しました。
これからのインターネットが、
なんとなくつかめるかもしれませんよ。
全7回、たっぷりおたのしみください。
本対談は「ほぼ日の學校」でも公開中です。
第2回
インターネット黎明期。
- 糸井
- 16、7で呪いの掲示板をやってて‥‥学業は?
- けんすう
- 学業、半分やってなかったんです。
それで浪人生になって、
大学受験をちゃんとしなきゃなと思ったとき、
インターネットで検索しても
大学受験の情報がぜんぜんなくて。
- 糸井
- 90年代の後半ですもんね。
- けんすう
- それでこれは不便だなと思って、
大学受験の情報が集まる掲示板を作ったら、
当時それがすごいヒットしたんです。 - 1日に5000件ぐらい投稿があって、
予備校業界の先生も生徒も、
みんな知ってるみたいな状態で。
それもけっこう強烈な原体験ですね。
- 糸井
- 1日5000件は、
かなりすごいですね。
- けんすう
- 当時はすごかったと思います。
それで、そこでの情報を使って、
じぶんも大学受験に合格したみたいな状態で。
- 糸井
- そうか、そうか。
- けんすう
- ぼくが掲示板を作ったことで、
1カ月ほどで十何万件も投稿が集まって、
欲しい情報をそこで取得できて、
それで人生を変えることもできるっていう。
たった1人の力で作ったものでも、
そういうのができるんだっていうのが、
けっこう衝撃的でしたね。
- 糸井
- ビックリしますよね。
- けんすう
- 相当ビックリしました。
- 糸井
- いい気にはならなかったですか。
- けんすう
- いや、それよりビックリしたって感じですね。
それで、もっと大きなサイトを
作りたいと思うようになって‥‥。
なので、いまだにそれを
つづけている感覚なのかもしれないですね。
- 糸井
- 最初の打席がホームランだったみたいな。
- けんすう
- そうですね。
まだまだみなさんの頭の中には、
貴重な情報とかおもしろい考えが
たくさんある気がしていて、
それが世の中にぜんぜん
流通していない感覚はあります。
- 糸井
- つまり、その日のつづきなんだ。
- けんすう
- そうですね。
- 糸井
- けんすうさんの場合、
それがほんとに1人で作れちゃったけど、
マンガ家だったら
編集者という存在が近くにいますよね。
- けんすう
- あー、はいはい。
- 糸井
- そういう人はいなかったんですか?
- けんすう
- いなかったんですけど、
その頃に「2ちゃんねる」を作った
西村博之(以下、ひろゆき)さんと出会って、
そこで鍛えられた感は多少あります。 - 教えてもらう感じではなかったですけど、
「これはおもしろくない、つまんない」
っていうのをハッキリ言ってくれましたね。
- 糸井
- ぜんぜん違うことでもないですよね。
やってることは。
- けんすう
- そうですね。
似たものをつくっているところもあって、
彼からいろいろ学んでいました。
- 糸井
- それは運がいいというか。
そういう人と会うか会わないかは、
ぜんぜん違いますよね。
- けんすう
- ぜんぜん違うでしょうね。
彼には大学2年ぐらいのときに会っていて、
ふつうの大学生って社会人と
あんまり会わないじゃないですか。
- 糸井
- そうですよね。
- けんすう
- それに、ぼくの中の社会人って
会社員でちゃんと働いてる人だったんですけど、
彼のまわりにはそういう人がほとんどいなくて、
「こういう大人たちがいるんだ」っていうのも、
ちょっと人生観に影響があったと思います。
- 糸井
- 彼はいくつか上なんですか。
- けんすう
- ひろゆきさんが5つくらい上で、
そのまわりも当時40代の人たちとかで。
年齢も性別もみんなバラバラで、
なんかもういろんな意味で、
雑多な人たちがインターネットっていう
くくりだけでつながっていたので、
いろんな人と会える刺激はありましたね。
- 糸井
- 大学2年生でそういう人と会っていたら、
「普通」がもう見えなくなりますね。
- けんすう
- 見えなくなりましたね。
ただ、ひろゆきさんには、
「このままいくとおいらみたいになるから、
就職はしたほうがいいよ」って。
それはまずいなって思いましたけど(笑)。
- 糸井
- おいらみたいになんない方がいいなと。
- けんすう
- ならない方がいいなと(笑)。
ひろゆきさんって社長をやりたくないタイプで、
当時、彼が作ったサービスの社長を
代わりにぼくがやっていたことがあったんです。
それが当時のライブドアに買収されて、
それでぼくもライブドアで
ちょっとだけ働いていたっていう経緯があって。
- 糸井
- それは、いつくらいの話?
- けんすう
- たしか、堀江さんが近鉄を買収するぞという、
その数ヶ月ぐらい前でした。
- 糸井
- なかなか嵐の中ですね(笑)。
- けんすう
- すごい嵐の中でした(笑)。
当時30歳そこそこの堀江さんが社長で、
こんなに若い人でも
上場企業の社長ができるんだって思ってたら、
数ヶ月後にどんどんテレビに出て、
一気にスターになっていくみたいな。 - なんかもうバーッと日本中が
沸くみたいなものを見ちゃったから、
それはそれで社会人感が歪みましたね。
- 糸井
- ちょっとロックスターみたいだし。
- けんすう
- ほんとそうでしたね。
ふつうの会社員が考えるような、
出世して部長になって、
みたいなルートから外れた人を見ちゃったので、
なんかちょっと混乱はしました。
- 糸井
- そうか、けんすうさんは
ライブドアにもいたんですね。
- けんすう
- 当時「したらば」という掲示板を
ひろゆきさんが作っていて、
それを手伝っていたんですけど、
ライブドアに事業だけ買収されたので、
ぼくだけがライブドアに行って、
それを運営するみたいなことをやってました。
- 糸井
- それは「ぼくだけ」で
できちゃうようなことなんですか。
- けんすう
- レンタル掲示板って
管理者がそれぞれいるので、
システムだけ動いていれば
とりあえずオーケーっていう感じで、
少人数でもまわせてましたね。
それでも当時、日本で100番目ぐらいの
アクセス数はあったと思いますけど。
- 糸井
- 社会人としては、
もうそこで生きられてたわけだ。
- けんすう
- いや、それがライブドアって、
当時はベンチャーだったので、
新卒を教育するみたいな発想がぜんぜんなくて。
まわりのレベルもすごく高かったので、
これじゃあ通用しないなと思って、
そのあとふつうに大学を卒業して、
リクルートに新卒で入るみたいなことをしました。
- 糸井
- そっか、1回そっちに戻って。
よく卒業しましたね。
- けんすう
- それもひろゆきさんに
「卒業はしたほうがいいよ」と、
わりとまともなことを言われて(笑)。
- 糸井
- あの人は他人にはまともなことを(笑)。
- けんすう
- そうですね(笑)。
それでリクルート入って、
そこでの3年間くらいが唯一といっていいほど、
ふつうの会社員的な社会人経験になりました。
(つづきます)
2023-06-13-TUE
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けんすうさんが選ぶ、
インターネットのいまとこれからを
考えるための本。ふだんからビジネス本を
たくさん読まれているけんすうさん。
インターネット関連のおすすめ本を、
解説付きで5冊教えていただきました。
もっと深く知りたい方は、
ぜひ参考にしてみてください。『ツイッター創業物語
金と権力、友情、そして裏切り』(日経BP)
著:ニック・ビルトン 訳:伏見威蕃ツイッターは歴史的にみても、
かなりグダグダな経営をやっている時期が長く、
トラブルつづきの企業です。
それは、いまもつづいているとも言えます。経営、運用、技術、どれをとっても、
極めて秀でているとは言えないツイッターですが、
サービスが魅力的であるために、
世界に大きな影響を与えるようになったわけで、
とてもおもしろいなと思っています。『ソーシャルメディア・プリズム
SNSはなぜヒトを過激にするのか?』(みすず書房)
著:クリス・ベイル 訳:松井信彦ソーシャルメディアによる
影響について書かれている本です。
短い書籍ではありますが、
ソーシャルメディアによる
社会の分断についての問題から、
インターネットの希望の話まで書かれていて好きです。『ネットは社会を分断しない』
(KADOKAWA/角川新書)
著:田中辰雄、浜屋敏10万人規模の調査をして、
いまのインターネットと
社会の実態はどうなのかを調べたという本です。
インターネットによって
社会が分断されているように感じたりしますが、
実はそんなことないよ、
という内容が書かれています。『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社)
著:アダム・オルター 訳:上原裕美子依存症ビジネスについて書かれた本です。
現在のインターネットの主流である
ソーシャルメディアやゲームなどで、
依存症ビジネスの仕組みは
良くも悪くも活用されています。
ここを知っておくことで、
いまのインターネットについてより理解できるかなと。『イーサリアム
若き天才が示す暗号資産の真実と未来』(日経BP)
著:ヴィタリック・ブテリン 編:ネイサン・シュナイダー
訳:高橋聡歴史に名を残すであろう
ヴィタリック氏のコラム集です。
暗号通貨・イーサリアムの考案者である彼は、
極めて頭がいいんだろうな、というのと、
それをわかりやすく美しい文章で
表現できる稀有な存在です。
インターネットを次の段階に
引き上げた人の名文がたっぷり読めます。