けんすうさんと糸井重里の初対談です。
ブロックチェーン、AI、NFTなど、
新しい技術に詳しいけんすうさんには、
いまどんな未来が見えているのでしょうか。
インターネット黎明期の話から、
お金の価値、アマチュアリズムなど、
さまざまな話題が飛び出しました。
これからのインターネットが、
なんとなくつかめるかもしれませんよ。
全7回、たっぷりおたのしみください。
本対談は「ほぼ日の學校」でも公開中です。

>けんすうさんプロフィール

けんすう

起業家、エンジェル投資家、
アル株式会社代表取締役。

1981年生まれ。
学生時代に「ミルクカフェ」という
大学受験サービスを立ち上げたあと、
レンタル掲示板の「したらば」を運営。
その後リクルートに新卒で入社した後、
起業してハウツーサイトの「nanapi」をリリース。
2014年にKDDIグループにM&Aされる。

現在は「クリエイティブ活動を加速させる」ために、
きせかえできるNFT「sloth」、
成長するNFT「marimo」などを手掛けている。

Twitter:@kensuu
note:kensuu

前へ目次ページへ次へ

第3回

お金持ちのインジケーター。

糸井
けんすうさんはいままで、
じぶんの組織を大きくしようという
発想はなかったんですか。
けんすう
スタートアップの既定路線というか、
ベンチャーキャピタルからお金を入れて
規模を拡大するみたいなことは一周やりました。
糸井
期間としては、
どのくらいやったんですか。
けんすう
2009年に会社を作って、
5年後くらいにKDDIに買収されて、
そこでさらに4年近くですね。
いまはまた別の会社を作って、
そこを3、4年やってるという感じで。
糸井
いまは何人くらいですか。
けんすう
20人くらいですね。
糸井
じゃあ1人じゃないチームの時代も、
けっこう長いわけだ。
けんすう
なんだかんだで
そっちのほうが長いぐらいですね。
気づかなかったですけど、
思ったよりチーム戦は好きなんだと思います。
糸井
好きだっていう
じぶんに気づかないでしょ、最初。
けんすう
そうですよね(笑)。
どっちかというと
苦手だって思ってましたね。
糸井
ぼくもまったく同じです。
最初はまさかと思いますよね。
けんすう
ブロックチェーンとかAIとかの発展で、
会社員で働くかどうかみたいなところの話が
かなりホットトピックスになっていますけど、
そうなってくると、よりいまのほうが
好きなんだろうなっていう気はしてます。
糸井
やっぱり働き方は変化してますか。
けんすう
アメリカのスタートアップというか、
IT業界だと、ある意味でエンジニアが
クラウドみたいな扱いをされていて、
すごい給与は高いんだけど、
不景気になったらレイオフしますって、
10万人ぐらいクビを切られたりしています。
ああいうのはすごくアメリカっぽいし、
ちょっとシステマティックに
人を採用してクビ切ってみたいなのは、
流れとして世界中で来るんだろうなって気はします。
糸井
一回はそうなるんじゃないかなと思いますね。
けんすう
ですよね。
糸井
ぼくはそのへんは詳しくないけど、
そうやって一回やってみたときに、
「あのときはこうだったね」
って話し合いをしてる姿が、
なんかちょっと見えるんですよね。
けんすう
そうなんですよね。
ずっと効率化でいくかっていうと、
たぶん逆な気がするんです。
まわりを見ても、
親分型的な組織もちょっと増えていて、
「儲かったらどんどん給与上げるし、
ダメでもなんとか食わせる」みたいな。
なんかそういう起業家が増えてる気がします。

糸井
アメリカのケースだと、
お金の分量でその人の満足の分量を
測れるという幻想があるじゃないですか。
あれ、いまギリギリの考えだと思うんです。
だって、じぶんの価値をお金の分量で
表現するみたいになっているとしたら、
いまはもう数値化できていない。
けんすう
あー、そうですね。
糸井
例えば、お金の分量で溢れちゃった
ビル・ゲイツとか、イーロン・マスクとか、
お金の数値を測るインジケーターが
もうとっくに振り切れてるわけで。
そうなると、そこにたどり着く前の
何百億みたいなところの競争って、
たぶん小者の争いに見えてくると思うんです。
けんすう
なるほど、はい。
糸井
例えば、30億の人が80億の人に
コンプレックスを持っても持たなくても、
その人の生き方は変わらない。
そこのインジケーターが壊れちゃったら、
「儲かったらこうでこうで」というより、
「それよりもさ‥‥」ていう。
じぶんだったらそうなるだろうなというのは、
よくわかる。
けんすう
昔、糸井さんがどこかで
書かれていた気がするんですけど、
お金が大事だっていうのは100回くらい言いたいと。
100回は言うけれど、
101回目に「でもさ」って言うよ、
みたいな話があって。
糸井
あぁ(笑)。
けんすう
あの表現がすごい心に残ってるんです。
その感覚はすごい近いなと思います、ぼくと。
糸井
お金が大事って言わない人は、
きっとものすごく大事にしてるんですよ。
けんすう
そうなんですよね。
お金に囚われてるから、
「お金なんて大事じゃない」と
言っちゃうところもあるんだけど、
「お金は大事だ」と100回言って、
でも101回目には
「違う価値もあるんじゃない?」のほうが、
ぼくはなんかいいなあと思います。

糸井
それに、その大事だっていってるお金も、
ある程度たかが知れてるわけで。
けんすう
はい。
糸井
これだけお金があれば
不満なく生きられるよって額があって、
邱永漢さんは100万円って言ったんです。
ひと月に100万円あったら、
何かいるとかいらないとかなくなるって。
けんすう
それも本で書かれてましたよね。
糸井
読んだ?
けんすう
はい。
月100万円あれば、
それ以上は使わないっていう。
ぼくもそれが基準になってますね。
糸井
邱さんの話したときと時代も違うけど、
でも物価はあんまり上がんなかったし、
100万円以上のものって家と車くらいですよね。
そのあたりのところを除くと、
なにを食べてようが、どんだけ遊んでようが、
だいたい100万円でまわると思う。
けんすう
そうだと思います。
糸井
それ以上持っていたとして、
みんなにお金配るからおいでって言っても、
500万円ずつ配るっていうひとは、
その数字をみんなに自慢したいだけで。
だとしたら、自慢されてる相手が、
「ハイハイ、500万円ね」とか
「また言ってるよ」みたいになるとしたら、
それはなんかみっともないですよね。
けんすう
さらにインターネットだと、
世界の富豪ランキングというのも出ちゃうから。
糸井
あー、そうだね。
けんすう
お金があると思っていても、
これぐらいなのかってわかった瞬間、
そのうれしさも減っちゃったりしますよね。

(つづきます)

2023-06-14-WED

前へ目次ページへ次へ
  • けんすうさんが選ぶ、
    インターネットのいまとこれからを
    考えるための本。

    ふだんからビジネス本を
    たくさん読まれているけんすうさん。
    インターネット関連のおすすめ本を、
    解説付きで5冊教えていただきました。
    もっと深く知りたい方は、
    ぜひ参考にしてみてください。

    『ツイッター創業物語 
    金と権力、友情、そして裏切り』(日経BP) 
    著:ニック・ビルトン 訳:伏見威蕃

    ツイッターは歴史的にみても、
    かなりグダグダな経営をやっている時期が長く、
    トラブルつづきの企業です。
    それは、いまもつづいているとも言えます。

    経営、運用、技術、どれをとっても、
    極めて秀でているとは言えないツイッターですが、
    サービスが魅力的であるために、
    世界に大きな影響を与えるようになったわけで、
    とてもおもしろいなと思っています。

    Amazonのページを開く

    『ソーシャルメディア・プリズム 
    SNSはなぜヒトを過激にするのか?』(みすず書房) 
    著:クリス・ベイル 訳:松井信彦

    ソーシャルメディアによる
    影響について書かれている本です。
    短い書籍ではありますが、
    ソーシャルメディアによる
    社会の分断についての問題から、
    インターネットの希望の話まで書かれていて好きです。

    Amazonのページを開く

    『ネットは社会を分断しない』
    (KADOKAWA/角川新書) 
    著:田中辰雄、浜屋敏

    10万人規模の調査をして、
    いまのインターネットと
    社会の実態はどうなのかを調べたという本です。
    インターネットによって
    社会が分断されているように感じたりしますが、
    実はそんなことないよ、
    という内容が書かれています。

    Amazonのページを開く

    『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社) 
    著:アダム・オルター 訳:上原裕美子

    依存症ビジネスについて書かれた本です。
    現在のインターネットの主流である
    ソーシャルメディアやゲームなどで、
    依存症ビジネスの仕組みは
    良くも悪くも活用されています。
    ここを知っておくことで、
    いまのインターネットについてより理解できるかなと。

    Amazonのページを開く

    『イーサリアム 
    若き天才が示す暗号資産の真実と未来』(日経BP) 
    著:ヴィタリック・ブテリン 編:ネイサン・シュナイダー 
    訳:高橋聡

    歴史に名を残すであろう
    ヴィタリック氏のコラム集です。
    暗号通貨・イーサリアムの考案者である彼は、
    極めて頭がいいんだろうな、というのと、
    それをわかりやすく美しい文章で
    表現できる稀有な存在です。
    インターネットを次の段階に
    引き上げた人の名文がたっぷり読めます。

    Amazonのページを開く