けんすうさんと糸井重里の初対談です。
ブロックチェーン、AI、NFTなど、
新しい技術に詳しいけんすうさんには、
いまどんな未来が見えているのでしょうか。
インターネット黎明期の話から、
お金の価値、アマチュアリズムなど、
さまざまな話題が飛び出しました。
これからのインターネットが、
なんとなくつかめるかもしれませんよ。
全7回、たっぷりおたのしみください。
本対談は「ほぼ日の學校」でも公開中です。
第3回
お金持ちのインジケーター。
- 糸井
- けんすうさんはいままで、
じぶんの組織を大きくしようという
発想はなかったんですか。
- けんすう
- スタートアップの既定路線というか、
ベンチャーキャピタルからお金を入れて
規模を拡大するみたいなことは一周やりました。
- 糸井
- 期間としては、
どのくらいやったんですか。
- けんすう
- 2009年に会社を作って、
5年後くらいにKDDIに買収されて、
そこでさらに4年近くですね。
いまはまた別の会社を作って、
そこを3、4年やってるという感じで。
- 糸井
- いまは何人くらいですか。
- けんすう
- 20人くらいですね。
- 糸井
- じゃあ1人じゃないチームの時代も、
けっこう長いわけだ。
- けんすう
- なんだかんだで
そっちのほうが長いぐらいですね。
気づかなかったですけど、
思ったよりチーム戦は好きなんだと思います。
- 糸井
- 好きだっていう
じぶんに気づかないでしょ、最初。
- けんすう
- そうですよね(笑)。
どっちかというと
苦手だって思ってましたね。
- 糸井
- ぼくもまったく同じです。
最初はまさかと思いますよね。
- けんすう
- ブロックチェーンとかAIとかの発展で、
会社員で働くかどうかみたいなところの話が
かなりホットトピックスになっていますけど、
そうなってくると、よりいまのほうが
好きなんだろうなっていう気はしてます。
- 糸井
- やっぱり働き方は変化してますか。
- けんすう
- アメリカのスタートアップというか、
IT業界だと、ある意味でエンジニアが
クラウドみたいな扱いをされていて、
すごい給与は高いんだけど、
不景気になったらレイオフしますって、
10万人ぐらいクビを切られたりしています。 - ああいうのはすごくアメリカっぽいし、
ちょっとシステマティックに
人を採用してクビ切ってみたいなのは、
流れとして世界中で来るんだろうなって気はします。
- 糸井
- 一回はそうなるんじゃないかなと思いますね。
- けんすう
- ですよね。
- 糸井
- ぼくはそのへんは詳しくないけど、
そうやって一回やってみたときに、
「あのときはこうだったね」
って話し合いをしてる姿が、
なんかちょっと見えるんですよね。
- けんすう
- そうなんですよね。
ずっと効率化でいくかっていうと、
たぶん逆な気がするんです。
まわりを見ても、
親分型的な組織もちょっと増えていて、
「儲かったらどんどん給与上げるし、
ダメでもなんとか食わせる」みたいな。
なんかそういう起業家が増えてる気がします。
- 糸井
- アメリカのケースだと、
お金の分量でその人の満足の分量を
測れるという幻想があるじゃないですか。
あれ、いまギリギリの考えだと思うんです。
だって、じぶんの価値をお金の分量で
表現するみたいになっているとしたら、
いまはもう数値化できていない。
- けんすう
- あー、そうですね。
- 糸井
- 例えば、お金の分量で溢れちゃった
ビル・ゲイツとか、イーロン・マスクとか、
お金の数値を測るインジケーターが
もうとっくに振り切れてるわけで。
そうなると、そこにたどり着く前の
何百億みたいなところの競争って、
たぶん小者の争いに見えてくると思うんです。
- けんすう
- なるほど、はい。
- 糸井
- 例えば、30億の人が80億の人に
コンプレックスを持っても持たなくても、
その人の生き方は変わらない。
そこのインジケーターが壊れちゃったら、
「儲かったらこうでこうで」というより、
「それよりもさ‥‥」ていう。
じぶんだったらそうなるだろうなというのは、
よくわかる。
- けんすう
- 昔、糸井さんがどこかで
書かれていた気がするんですけど、
お金が大事だっていうのは100回くらい言いたいと。
100回は言うけれど、
101回目に「でもさ」って言うよ、
みたいな話があって。
- 糸井
- あぁ(笑)。
- けんすう
- あの表現がすごい心に残ってるんです。
その感覚はすごい近いなと思います、ぼくと。
- 糸井
- お金が大事って言わない人は、
きっとものすごく大事にしてるんですよ。
- けんすう
- そうなんですよね。
お金に囚われてるから、
「お金なんて大事じゃない」と
言っちゃうところもあるんだけど、
「お金は大事だ」と100回言って、
でも101回目には
「違う価値もあるんじゃない?」のほうが、
ぼくはなんかいいなあと思います。
- 糸井
- それに、その大事だっていってるお金も、
ある程度たかが知れてるわけで。
- けんすう
- はい。
- 糸井
- これだけお金があれば
不満なく生きられるよって額があって、
邱永漢さんは100万円って言ったんです。
ひと月に100万円あったら、
何かいるとかいらないとかなくなるって。
- けんすう
- それも本で書かれてましたよね。
- 糸井
- 読んだ?
- けんすう
- はい。
月100万円あれば、
それ以上は使わないっていう。
ぼくもそれが基準になってますね。
- 糸井
- 邱さんの話したときと時代も違うけど、
でも物価はあんまり上がんなかったし、
100万円以上のものって家と車くらいですよね。
そのあたりのところを除くと、
なにを食べてようが、どんだけ遊んでようが、
だいたい100万円でまわると思う。
- けんすう
- そうだと思います。
- 糸井
- それ以上持っていたとして、
みんなにお金配るからおいでって言っても、
500万円ずつ配るっていうひとは、
その数字をみんなに自慢したいだけで。
だとしたら、自慢されてる相手が、
「ハイハイ、500万円ね」とか
「また言ってるよ」みたいになるとしたら、
それはなんかみっともないですよね。
- けんすう
- さらにインターネットだと、
世界の富豪ランキングというのも出ちゃうから。
- 糸井
- あー、そうだね。
- けんすう
- お金があると思っていても、
これぐらいなのかってわかった瞬間、
そのうれしさも減っちゃったりしますよね。
(つづきます)
2023-06-14-WED
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けんすうさんが選ぶ、
インターネットのいまとこれからを
考えるための本。ふだんからビジネス本を
たくさん読まれているけんすうさん。
インターネット関連のおすすめ本を、
解説付きで5冊教えていただきました。
もっと深く知りたい方は、
ぜひ参考にしてみてください。『ツイッター創業物語
金と権力、友情、そして裏切り』(日経BP)
著:ニック・ビルトン 訳:伏見威蕃ツイッターは歴史的にみても、
かなりグダグダな経営をやっている時期が長く、
トラブルつづきの企業です。
それは、いまもつづいているとも言えます。経営、運用、技術、どれをとっても、
極めて秀でているとは言えないツイッターですが、
サービスが魅力的であるために、
世界に大きな影響を与えるようになったわけで、
とてもおもしろいなと思っています。『ソーシャルメディア・プリズム
SNSはなぜヒトを過激にするのか?』(みすず書房)
著:クリス・ベイル 訳:松井信彦ソーシャルメディアによる
影響について書かれている本です。
短い書籍ではありますが、
ソーシャルメディアによる
社会の分断についての問題から、
インターネットの希望の話まで書かれていて好きです。『ネットは社会を分断しない』
(KADOKAWA/角川新書)
著:田中辰雄、浜屋敏10万人規模の調査をして、
いまのインターネットと
社会の実態はどうなのかを調べたという本です。
インターネットによって
社会が分断されているように感じたりしますが、
実はそんなことないよ、
という内容が書かれています。『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社)
著:アダム・オルター 訳:上原裕美子依存症ビジネスについて書かれた本です。
現在のインターネットの主流である
ソーシャルメディアやゲームなどで、
依存症ビジネスの仕組みは
良くも悪くも活用されています。
ここを知っておくことで、
いまのインターネットについてより理解できるかなと。『イーサリアム
若き天才が示す暗号資産の真実と未来』(日経BP)
著:ヴィタリック・ブテリン 編:ネイサン・シュナイダー
訳:高橋聡歴史に名を残すであろう
ヴィタリック氏のコラム集です。
暗号通貨・イーサリアムの考案者である彼は、
極めて頭がいいんだろうな、というのと、
それをわかりやすく美しい文章で
表現できる稀有な存在です。
インターネットを次の段階に
引き上げた人の名文がたっぷり読めます。