けんすうさんと糸井重里の初対談です。
ブロックチェーン、AI、NFTなど、
新しい技術に詳しいけんすうさんには、
いまどんな未来が見えているのでしょうか。
インターネット黎明期の話から、
お金の価値、アマチュアリズムなど、
さまざまな話題が飛び出しました。
これからのインターネットが、
なんとなくつかめるかもしれませんよ。
全7回、たっぷりおたのしみください。
本対談は「ほぼ日の學校」でも公開中です。

>けんすうさんプロフィール

けんすう

起業家、エンジェル投資家、
アル株式会社代表取締役。

1981年生まれ。
学生時代に「ミルクカフェ」という
大学受験サービスを立ち上げたあと、
レンタル掲示板の「したらば」を運営。
その後リクルートに新卒で入社した後、
起業してハウツーサイトの「nanapi」をリリース。
2014年にKDDIグループにM&Aされる。

現在は「クリエイティブ活動を加速させる」ために、
きせかえできるNFT「sloth」、
成長するNFT「marimo」などを手掛けている。

Twitter:@kensuu
note:kensuu

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第4回

ビジネスとアマチュアリズム。

糸井
けんすうさんはいま、
すごいマンガ応援団ですよね。
けんすう
ははは、そうですね。
マンガすごい応援してますね。
いま、クリエイター応援を
会社の事業の中心に置いてるんですけど、
やっぱりそこが好きなんですよね。
糸井
すごい熱心ですよね。
けんすう
そうですね、はい。
いまインターネットで起こっていることって、
90年代の頃と同じくらい衝撃があって、
その理由のひとつが「生成系AI」の登場で。
糸井
ほう。
けんすう
いまってマンガを描きたいけど
絵が上手じゃないみたいな人が、
AIを使ってどんどん作品を描いているんです。
いまはもう「pixiv」のような
イラスト投稿サイトが15年くらいかけて
集めたイラストの数より、
ぜんぜん多くの絵が
AIで作られているという説もあるんだとか。
糸井
はぁぁ‥‥。
けんすう
実際にそういうことが起きると、
みんなの頭の中にあるアイデアを、
文章力とか絵を描く力がない人でも、
じぶんの作品として世に出せる時代が
すぐそこまで来てしまっているわけで、
ここからもっとすごい革命が
起こるんじゃないかなっていう気はします。
糸井
きょうはそのへんの話も聞きたかったんです。
つまり「ぼくは何をもっと知るべきか」っていう。

けんすう
ぼくがこうやってお伝えするのも
おこがましい話なんですけど、
いまってインターネットができたときに、
「理想はこうだけどね」って言ってたことが、
実際にできる時代になってたりするんです。
糸井
すごいね。
けんすう
なので、糸井さんがどっぷり入ったら、
そこでもう一周できるんじゃないかなって。
そのエネルギーがいま、
インターネットにあるっていうのを、
きょうは伝えたいなと思っていたんです。
糸井
けんすうさんにとっては、
もうひとまわりが見えるんですね。
けんすう
そうですね。
いわゆるWeb3といわれるような
ブロックチェーンを基盤にした
サービスづくりの業界にいる人って、
もう90年代にインターネット業界にいた人と
同じような感じなんですよね。
糸井
そこまではわかるんだけど(笑)。
つまり、ぼくはじぶんが遅れてるなあと、
思うときがよくあって。
けんすう
ほう。
糸井
例えば、YouTubeが出てきたときに、
それはいまの時代だったらありうるけど、
ぜんぶ訴えられたら、裁判してるうちに
つぶれるよって思っていたんです。
コンセプトはおもしろいと思うけれど、
その動画を見てる俺は罪なんだよな
っていう流行り方はできないから、
YouTubeは無理だろうなと。
けんすう
あー、なるほど。
糸井
そうしたらそのYouTubeをグーグルが買収して、
法律的な問題はうちがなんとかしますからって、
そういう形で落ち着いたわけですよね。
けんすう
ほんとうにそんな感じでしたね。
リアルタイムでその話を
知ってる人と知らない人では、
ぜんぜん感覚が違うと思いますけど。
糸井
あれ、けんすうさんでも、
どうなるんだろうと思ったでしょ?
けんすう
思いましたね。
どう考えてもインフラ費用的にもたないし、
訴訟的にももたないから、
違法動画を見つける仕組みも必要だし、
普通のベンチャーには無理じゃない?と。
それを無限の資金力があるかのような
グーグルが買収して、
ぜんぶ力技でやるとは思わなかったです。
糸井
ですよね。
けんすう
すさまじいニュースでした。
糸井
探せばいくらでも珍しい映像がある、
っていうこともあるんだろうけど、
それ掘り出す人も
ほんとにいるんだろうかとか、
そのお金はどうすんのとか、
ぼくにはまったくわかんなかった。
けんすう
わかんなかったですね。
糸井
あの出来事でぼくは、
じぶんがたどり着かない世界に、
もうなってるんだってことがわかっちゃった。
けんすう
でも、当時のニューヨーク・タイムズでさえ、
「史上最大の愚かな買収だ」
みたいに書いてましたからね。
どう考えてもありえないと。
糸井
それがありえちゃった(笑)。
けんすう
ありえちゃうんですよね。

糸井
このあいだ、
クリエイティブの天才みたいな人と話していて、
言い方は忘れちゃったけど、
最近どんな仕事でも重要なのは
「アマチュアリズム」だって言ってたんです。
けんすう
アマチュアリズム。
糸井
きょうここにけんすうさんが来て、
こうやってしゃべってくれるのも、
ぼくがいましゃべってるのも、
おおもとは「おもしろいから」ですよね。
例えば「それ、いくらなの?」で考えてたら、
ここに来る理由なんかないはずで。
だけど、ここにいるっていうのは、
それって「アマチュアリズム」なんです。
で、そっちのほうが価値があるとも思ってる。
けんすう
あぁー、わかります、はい。
糸井
「ギャランティーは100万円です」っていって、
ここにふたりで座って話しはじめたら、
きっとつまんなくなりますよね。
けんすう
つまんないですね。
というか、ぼくは断ると思います。
糸井
たぶんそうなんですよね。
でも、もうないも同然なんですけど、
一緒にやりませんかっていうとき、
何やるかわかんないけどやろうよっていうのは、
完全にアマチュアですよね。
早起きして野球やってるみたいなもので。
けんすう
すごくわかります。
サイト設計も同じかもしれないです。
ぼくらの会社はマンガサービスもやっていて、
コロナが大変だったときに、
出版社が無料の漫画データを公開していて、
それをトップページにまとめて出そう
っていうのをやったんです。
じつはその仕事、
ぼくらはお客さんにやってもらいました。
糸井
なるほど。
けんすう
月980円払って「アル開発室」に入ると、
ぼくが毎日投稿している記事が読めて、
会社の裏側がわかるというコンテンツがあって、
それに参加してくれているお客さんほど、
そういうお仕事を熱心にやってくれたんです。
糸井
うん、よくわかる。
けんすう
たぶん「時給1000円です」っていわれると
萎えちゃうと思うんですけど、
「この仕事に参加できます」になった途端、
みなさんすごくいきいきと手伝ってくれて。
それってたぶん「アマチュアリズム」というか。
糸井
そうなんですよね。
ほとんどの遊びって、
アマチュアリズムなんですよね。
けんすう
あぁ、そうですね。
糸井
みんなお金を払って
池のボートを漕いだりするけど、
「1000円払いますから、
ボートで一周してきてください」
なんていっても誰も行かない。
けんすう
嫌ですね(笑)。
糸井
そうやって考えると、
ぼくがこれまで熱心にやるものって、
どうもアマチュアリズムのもの
ばっかりだなと思ったんです。
けんすう
おもしろいですね。
糸井
ぼくらがいままで生きてきて
おもしろかったことって、
ほとんどがそっちだと思うんです。

(つづきます)

2023-06-15-THU

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  • けんすうさんが選ぶ、
    インターネットのいまとこれからを
    考えるための本。

    ふだんからビジネス本を
    たくさん読まれているけんすうさん。
    インターネット関連のおすすめ本を、
    解説付きで5冊教えていただきました。
    もっと深く知りたい方は、
    ぜひ参考にしてみてください。

    『ツイッター創業物語 
    金と権力、友情、そして裏切り』(日経BP) 
    著:ニック・ビルトン 訳:伏見威蕃

    ツイッターは歴史的にみても、
    かなりグダグダな経営をやっている時期が長く、
    トラブルつづきの企業です。
    それは、いまもつづいているとも言えます。

    経営、運用、技術、どれをとっても、
    極めて秀でているとは言えないツイッターですが、
    サービスが魅力的であるために、
    世界に大きな影響を与えるようになったわけで、
    とてもおもしろいなと思っています。

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    『ソーシャルメディア・プリズム 
    SNSはなぜヒトを過激にするのか?』(みすず書房) 
    著:クリス・ベイル 訳:松井信彦

    ソーシャルメディアによる
    影響について書かれている本です。
    短い書籍ではありますが、
    ソーシャルメディアによる
    社会の分断についての問題から、
    インターネットの希望の話まで書かれていて好きです。

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    『ネットは社会を分断しない』
    (KADOKAWA/角川新書) 
    著:田中辰雄、浜屋敏

    10万人規模の調査をして、
    いまのインターネットと
    社会の実態はどうなのかを調べたという本です。
    インターネットによって
    社会が分断されているように感じたりしますが、
    実はそんなことないよ、
    という内容が書かれています。

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    『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社) 
    著:アダム・オルター 訳:上原裕美子

    依存症ビジネスについて書かれた本です。
    現在のインターネットの主流である
    ソーシャルメディアやゲームなどで、
    依存症ビジネスの仕組みは
    良くも悪くも活用されています。
    ここを知っておくことで、
    いまのインターネットについてより理解できるかなと。

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    『イーサリアム 
    若き天才が示す暗号資産の真実と未来』(日経BP) 
    著:ヴィタリック・ブテリン 編:ネイサン・シュナイダー 
    訳:高橋聡

    歴史に名を残すであろう
    ヴィタリック氏のコラム集です。
    暗号通貨・イーサリアムの考案者である彼は、
    極めて頭がいいんだろうな、というのと、
    それをわかりやすく美しい文章で
    表現できる稀有な存在です。
    インターネットを次の段階に
    引き上げた人の名文がたっぷり読めます。

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