「仕事って、なんだろう?」をテーマに、
糸井重里が3日間で3人のスペシャリストと
語り合ったトークライブ。

最初のゲスト唐池恒二さんは、
現在はJR九州の代表取締役会長で、
社長時代には、
走行開始から7年経った今も人気の高い
クルーズトレイン『ななつ星』を考案して
実際に成功させた方です。

大きな組織で働いてきた唐池さんが
なにを考え、どんなふうに仕事をしてきたのか。
どうやって「世界一の豪華な列車」を実現させたのか。
働くうえで必要だと考えているのは?
若い人に望むものは?

後半にいくにつれてどんどん熱を増し、
質疑応答も熱く繰り広げられたトークを
全8回、「ほぼ日曜日」からお届けします。

イラスト|堤淳子(223design)、編集|中川實穗(なかがわみほ)

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第1回

一番怖い人はなにを考えているのか

糸井
(会場を見渡して)
今日はお客さんが若いですね。
そして真剣。ちょっと怖いくらいですね(笑)。
唐池
やっぱり人生がかかってますからね。

糸井
そういうことなんですかね。
(客席に)どうせ七転び八起きですからね。
大いに転んで大丈夫なので、
もうちょっと気を楽にしてください。
一同
(笑)
糸井
ええと、唐池さんは、一番簡単に言うと、
「JR九州の会長」
という仕事をなさっている方です。
その前はJR九州の社長でした。
それで、「ななつ星in九州」という
観光列車というんでしょうか、
どういう言い方をするんですかね?
唐池
「世界一の豪華な列車」と言ってます。
糸井
「世界一豪華な列車」を走らせてみたらどうだろう
ということを実行した人で。
線路も景色も昔のままなんだけど
走ってる列車がすごいので、
それに乗ってみたいわって人が殺到して。
申し込んでも抽選になるんですか?
唐池
もうずっとそうですね。
糸井
毎回抽選。
唐池
半年ごとに毎回抽選で。
もう7年経つんですよ、走らせてから。
最初の頃は倍率が20倍、30倍でしたけど、
最近は5倍ぐらいになりました。

糸井
それでも5倍ですか。
JRの在来線とか九州を走ってる鉄道というのは
そんなに魅力があるとは言われてなかったし、
地元の人が「不便だな」とか言いながら
使ってたところに‥‥。
唐池
そこまでひどくない(笑)。
まあ、いいですわ。
進めてください(笑)。
糸井
だってこの本の帯に
「赤字300億円から」
と書いてありますからね。
唐池
そうそうそう。
糸井
「赤字300億円から黒字500億円へ」
と帯に書いてあります。
『感動経営――世界一の豪華列車
「ななつ星」トップが明かす49の心得』

という本ですけど、
唐池さんの著書の中で一番冗談が少ない本なので、
一冊だけ読むんだったらこれがいいと思います。

唐池
この前に2冊書いたんですけどね。
糸井さんから「あまりにも冗談が多すぎる」と。
「駄洒落が多すぎるから控えろ」と言われて、
真面目に書いたのがこの本ですね。
あのー‥‥こんな話、みなさん、
全然聞きたくないんじゃない?
糸井
いや、言わなければダメです(笑)。
つまりそういう無茶をした人である
ということを、まず覚えてください。
でも、みなさんが、これから就職したとして、
この唐池さんくらいの人にお会いになることは、
なかなかないことだと思います。
ある意味、怖い人ですよ。
大きな組織の全てを決定している人ですから。
そういう人が何を考えているんだろう、
仕事をどういうものだと思っているんだろう
ってことをお聞かせ願いたいなと思って、
今日はお呼びしました。
唐池
おお、そうだったんですね。
糸井
そうなんです。
唐池
謎が解けました(笑)。
糸井
今は会長をやってらっしゃるわけですが、
会長というのは社長よりはらくなんですか?
唐池
ものすごく暇になりましたね。
だからみなさんも早く
会長になった方がいいですよ(笑)。

糸井
そんなに違うものですか。
唐池
やっぱり違います。
糸井
でも、JR九州の顔として
いろんなとこに出かけていらっしゃいますよね。
広報活動のように。
唐池
広報活動ですね、はい。
お声がけいただいて。
糸井
社長の時代は、
何人くらいいる会社の責任を持っていたんですか?
唐池
グループ会社も入れると
2万人ぐらいですかね。
糸井
(客席に向かって)2万人ですよ!
唐池
でも一つひとつは小さい企業ですからね、私どもは。
糸井
そんなことは‥‥はい、わかりました、
そのとおり聞きます。
若い頃から付き合ってきた方々はいますか?
唐池
いますよ、何人かね。
今もよく食事したり、お酒を飲みにいくのが、
だいたい20年ぐらい前に一緒に仕事した仲間。
部下たちと今も付き合ってますのでね。
今はもう課長になり、部長になってますが、
当時は新入社員だった人もいます。
そういう人たちと一生懸命遊びますね、今は。
糸井
つまり、自分をよく知ってる人たちと
遊んでいます、ということ?
唐池
そうですね。
この年齢になりますと、
新しい友人をつくるのがおっくうになりまして。
昔から知っている気心の知れた人と
お酒を飲みたいとか語り合いたいとか、
そういうふうになってしまいましたね。
糸井
戦友に会うみたいな感じなんですか?
唐池
そうですね。
半分が戦友で、半分がただの遊び友達みたいな。

(つづきます)

2020-04-13-MON

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