「仕事って、なんだろう?」をテーマに、
糸井重里が3日間で3人のスペシャリストと
語り合ったトークライブ。
2人目のゲストは、
人材紹介会社KIZUNAパートナーズの
代表取締役社長、河野晴樹さん。
以前は株式会社リクルートで
就職の最前線を見つめてこられた方です。
これまでも
「ほぼ日」のお仕事コンテンツや
就職についての本『はたらきたい。』などに
ご登場いただいてきた河野さんが
今回、就職活動中の若者を前に語ってくれたのは、
採用側が求めている、本当のこと。
実例や具体的なアドバイスも多かったトークを
全6回にわけて、「ほぼ日曜日」からお届けします。
イラスト|堤淳子(223design)、編集|中川實穗(なかがわみほ)
第3回
「面接では、この二軸だけを見ています」
- 糸井
- コネと言えないまでの繋がりを探す、
というのは、なるほどと思います。
例えばあるお菓子屋さんに勤めたいときにさ、
「ここのお菓子が大好きです」
というメールを出すのだって
そういうことじゃないですか。
- 河野
- そうですね。
- 糸井
- そのときは
「なんか知らないけど、
お菓子についていろいろ言ってくる子がいる」
という感じでも、
「私があのメールを出してたアイツです」
と言ったときに「ああ!」って。
- 河野
- そういうことをやっている子はいますね。
- 糸井
- 「ほぼ日」は、そもそも読者から
メールがくることが当たり前のことなんですけど、
なかにはそれがきっかけで
仕事をするようになった人がやっぱりいます。
アメリカ人の子なんだけど、
『MOTHER』というゲームの大ファンで、
それで日本語を覚えて、
宇都宮市役所で勤めるようになったっていう子で、
「いま、宇都宮市役所にいるんですけど、
何かお手伝いできることありませんか?」
というメールをくれた。
会いたくなるじゃないですか。
- 河野
- なりますね。
- 糸井
- 企業も、そういう
「いい距離感をもって付き合ってください」
という人とは会うと思うんです。
逆にいうと、「とにかく入れてください!」って
土下座とかされると絶対会わないですよ、
危ないから。
男女の関係も同じですよね。
急に「結婚してください!」と言う人が現れてさ、
花を渡そうとしてきたら、逃げますよね。
それよりは偶然会うように努力して、
「また会いましたね」って言われるほうが、
ま、ちょっと露骨だけどさ、マシですよね。
- 河野
- マシですね(笑)。
- 糸井
- 集団面接に話を戻しますが、
「だいたい落ちる」というものなんですか?
- 河野
- 3分の1ぐらいはそこで落ちます。
- 糸井
- 僕も面接官は何度かやったことがあるんだけど、
そういうときはさ、
絶対、笑ってたほうがいいと思います。
- 河野
- うん、確かにそうです。
- 糸井
- 入口からもう笑ってたほうがいい。
それはバカみたいに笑うってことじゃないよ?
だから練習しておくといいですよね。
鏡を見て「このぐらいがいいかな」って。 - なぜかというとね、面接官も大変なんです。
みんなの運命を担っているし、
変なヤツが入って会社に迷惑かけても困るし、
人を雇うって、実は給料の何倍もお金がかかるし。
「ほんとうにどうしよう?」ってくらいには困る。
そのときに「私は大丈夫です」って挨拶が、
「笑顔」なんですよ。
- 河野
- 大きいですね。
- 糸井
- だから、そこで真剣さを出そうとするのはね、
さっきのプロポーズと同じでやめたほうがいい。
そんなふうに結婚を申し込まれても
「この人といて楽しいかしら?」
って思っちゃうじゃない?
この後、何十年も付き合うわけだから。
「貯金通帳見ますか!?」
みたいなのはいやじゃない?(笑)
だからそこは、「いたら楽しいだろうな」っていう、
その笑顔が結構大事な気がする。
- 河野
- 話の中身もさることながら、
入ってきた瞬間の笑顔みたいなのは、
スタートラインから変わります。
それは間違いないです。
- 糸井
- プロ中のプロが言ってます。
- 河野
- でもそれは面接じゃなくても一緒なので。
笑顔で相手の目をちゃんと見る、
っていうのは、すごく難しいと思いますよ。
だから、学生時代にバイトやなんかで
人と接する仕事をなさっていた方は有利だなと思います。
- 糸井
- ああ、そういうのはいい経験になりますね。
- 河野
- 会社に入ればわかりますけど、
結局どんな職種だろうが、
多くの人と関わらざるをえなくなります。
だから笑顔は大事。
あとは理解力。
- 糸井
- 河野さんは、
「人を見るとき、中心になるのは理解力だ」
という言い方をよくします。
- 河野
- そうですね。
人を見るとき、重要なのは、
「何を大切にしてたか」と、
「理解力があるか」ですね。
頭がいいか悪いかじゃないんですよ。
理解力があるかないか。 - 僕と糸井さんが今こうやって話していることから、
なにを伝えようとしているのかを捉えたり、
その背景を掴んだり、
っていうようなことが「理解力」です。 - さらに、これが仕事になると、
「自分はこう理解しました」ということまで
相手に伝えなきゃいけないです。 - 例えばタクシーの運転手さんに
「渋谷パルコまで」と言って‥‥、
あ、タクシー乗ったことあります?
- 糸井
- それはあるだろう(笑)。
- 河野
- 最近、ない子がいるんですよ!
とにかく「パルコ前」と言って無言で走り出されたら、
カチンとくるか「大丈夫かしら」と思うじゃないですか。
それとおんなじです。 - 仕事の話をしているときに、
すごくわかりやすく頷いてくれたとしても、
「なんか妙に頷きが大きいな」と思うと、
「本当のところ、どうなんだろう」
とちょっと疑り深くなりますよね。
だってある程度の期間がないと
人のことってわからないじゃないですか。
- 糸井
- うん、うん。
- 河野
- だからはじめのうちは、
ただ理解するだけじゃなく、
「自分はこう理解したけど、間違ってますか?」
と相手に確認するところまでが、
理解したことの証明になります。
これができないと、おそらく仕事は進まない。
つまり新人側の義務なんですね。
これはおそらくどの会社でも一緒です。 - リクルートみたいな会社ははじめから言うんです。
「わかったか、わからないか、言って。
わからないのは全然OKだから言って」って。
それでだんだん
「あ、わかってなくても本当に怒られないんだ」
ということがわかると、
みんな何がわからなかったか言うようになってくれます。 - 「わからない」と言ったら怒られる会社も
結構多いですけどね。
そういう会社にお勤めの方は
多少忖度しながら生きていくしかないのですが、
言える会社であれば、
「自分はこう理解した」ということを
伝えるほうが信頼されます。
- 糸井
- はーー、なるほど。
いや、今日はね、3日間のトークライブの中で、
一番テクニカルなことを言う日なんです。
- 河野
- (笑)
- 糸井
- 笑顔が大事だとか、
こちらがどう理解しているかを
表現できるような居方が
仕事の場面を進めます、とかね。
- 河野
- そういうシーンが入社後想像できる人は、
本当にありがたいです。
なので僕は面接では、
「大切にしてきたこと」、
「理解力が高いのか低いのか」、
この二軸だけをずっと見ていました。
でもおそらく採用担当者の面接ぐらいからは
みんなそうだと思います。
(つづきます)
2020-04-24-FRI