「仕事って、なんだろう?」をテーマに、
糸井重里が3日間で3人のスペシャリストと
語り合ったトークライブ。
2人目のゲストは、
人材紹介会社KIZUNAパートナーズの
代表取締役社長、河野晴樹さん。
以前は株式会社リクルートで
就職の最前線を見つめてこられた方です。
これまでも
「ほぼ日」のお仕事コンテンツや
就職についての本『はたらきたい。』などに
ご登場いただいてきた河野さんが
今回、就職活動中の若者を前に語ってくれたのは、
採用側が求めている、本当のこと。
実例や具体的なアドバイスも多かったトークを
全6回にわけて、「ほぼ日曜日」からお届けします。
イラスト|堤淳子(223design)、編集|中川實穗(なかがわみほ)
第4回
姿勢がちゃんとしていれば、人が信じてくれる
- 糸井
- 「部活のリーダーやってました」とか
「ボランティアやってました」とか、
そういうところで差はつくんですか?
- 河野
- ボランティアをやってるかやってないかは、
ハッキリ言ってどっちでもいいです。
大事なのは、
その人がどういう想いで
ボランティアをやっていたか、ということ。
「就職活動に繋がるから」が本音なら、
おそらくたいしたことはやってないですよね。
- 糸井
- それはバレちゃう。
- 河野
- と、思います。
部活に関しても、
例えば運動部に入って1年で休部する人って
めっちゃくちゃ多いんですよ。
- 糸井
- なにかをやってたっていう事実は、
けっこう重要だと思うんっです。
例えばちょっと失礼な人でもさ、
ギターがうまいってだけで、
「あの練習をやったんだ」と思うわけよ。
- 河野
- ああ、なるほど。
- 糸井
- 僕はそういうことを
なるべく見たいなと思うんです。
だから、ボランティアをやっていた話でも、
部活をやっていた話でも
「もうちょっと教えて」と続けていって、
僕が「ええ~!」と言うようなところまで聞きたい。 - そういうふうに考えると、
「これをやってました」という話は、
それが本当なら、
言ったほうがいいような気がしますね。
- 河野
- 本気でやってたのかどうかってことですよね、結局。
- 糸井
- そうです。
- 河野
- 「結果を出せたかどうか」とかじゃなくて、
本気でやってきたことであれば堂々と話ができます。
失敗もむしろ聞きたい話なんです。
失敗談を楽しそうに話せる人は
素晴らしいなと思いますし。
そこでなにを反省したかも伝えられる人は
さらに素晴らしいと思います。
「あ、きっとこの人は本当に
面と向かってやってたんだな」
と感じますから。
- 糸井
- そうですね。
- 河野
- 「部活のリーダーやってました」に関しては、
むしろリーダーがそんなにたくさんいたら困るので(笑)。
- 糸井
- そっか(笑)。
- 河野
- 社会に出ると、
「マネージャーをやってました」
みたいな人のほうが活躍しています。
あとは「副部長」とか「会計」とかね。 - 人が面倒くさがるようなこと、
例えばテニス部のコートを予約する人とか、
部費を集めて管理する人とか、
例えばラグビーのサークルとかで
毎日パンツを洗うマネージャーとか。
そういう人たちは、すごく魅力があります。
「みんなを支えるために
人が嫌がることを率先してやる」
という極めて尊いことをもう体験しているから。
会社に入っても成長が早いですよ。
それは統計的にも出ている。 - だから面接では「リーダーやってました」より
「マネージャーをしていて、
毎日50人分のパンツを洗ってました」
みたいなことを‥‥。
- 糸井
- それ、ちょっと自慢っぽく聞こえませんか。
「毎日50人分のパンツ」。
- 河野
- (笑)。言い方次第ですが。
最終面接できっとその話は出てこないと思うけど、
リクルーターは
「こういう人、ありがたいよな」と思うはずです。
- 糸井
- 苦労話をする人の中には
「今に見ておれ」でやってきて
後ですっかりふんぞり返る人がいませんか?
- 河野
- あんまりいないんじゃないですかね。
だってサークルなんだから。
いつでもやめられるのにやってたってことは、
人の役に立つことがうれしいっていうのを
どこかで実感しているからだと思うので。 - 僕はそれこそが「仕事」だと思っているんです。
例えば仲間だったり、会社の人だったり、
家族だったり、恋人だったり、社会だったり、
誰かに喜んでもらえているという実感を得る
っていうことが、仕事だと思うので。
そういうことを学生時代にしてきた人は
「すでに“仕事”をやってた人」だと思っちゃうわけです。
- 糸井
- 自分のやることが
人と関係しているっていうことを、
切実に感じてる。
- 河野
- しかもそれを喜んでやっているわけで。
- 糸井
- それは遊びでも同じですよね。
- 河野
- うん、そうですね。
- 糸井
- 僕は、初期の頃の「ほぼ日」で、
原稿として書いた覚えがあるんだけど、
娘が、サッカーのワールドカップの時に、
「みんなでもんじゃ焼き屋でテレビを観よう」
という約束をしていて、
雨の中、それに間に合わなくちゃって
走ってもんじゃ焼き屋に行ったんですよ。
そしたら誰もいなかった、と。
僕は「それはいいことだ」と言いました。
「時に人は約束を破ることもある。
ただ、お前は破る側になるな。
雨の中、行け」って。
- 河野
- 素晴らしいですね。
- 糸井
- どうでもよさそうなことで
裏切られたりすることっていうのは、
切実にその人に響きますよね。
- 河野
- はい。
- 糸井
- 会社も同じようなことがあると思うんです。
「アイディア5本持って集まろうぜ」
と言ったヤツが、だいたい考えてないとかさ(笑)。
- 河野
- ありますね(笑)。
- 糸井
- つまり、
生きる姿勢、みたいなことを、
案外人は見ているし、
その姿勢がちゃんとしていると、
人は信じてくれるようになる。
- 河野
- ああ、そうです。
(つづきます)
2020-04-25-SAT