「仕事って、なんだろう?」をテーマに、
糸井重里が3日間で3人のスペシャリストと
語り合ったトークライブ。

2人目のゲストは、
人材紹介会社KIZUNAパートナーズの
代表取締役社長、河野晴樹さん。
以前は株式会社リクルートで
就職の最前線を見つめてこられた方です。

これまでも
「ほぼ日」のお仕事コンテンツや
就職についての本『はたらきたい。』などに
ご登場いただいてきた河野さんが
今回、就職活動中の若者を前に語ってくれたのは、
採用側が求めている、本当のこと。

実例や具体的なアドバイスも多かったトークを
全6回にわけて、「ほぼ日曜日」からお届けします。

イラスト|堤淳子(223design)、編集|中川實穗(なかがわみほ)

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第5回

仕事は「我慢」ではない

糸井
たくさんの就職活動を見てきた河野さんだから
いろんなテクニックとかあるんだろうけど、
結局のところは、
その人の生きてきた姿勢とか、
そういう話になりますね。
河野
本当にそうですね。
糸井
でもこの
「基礎的なことにどうしても戻っちゃうんだよ」
という話って、
本当は一番伝えたいけど
どうしてもきれい事に聞こえてしまうもので。
だから、これから、
「仕事って、なんだろう?」
という話に移りたいと思います。
河野
はい。
糸井
「仕事」っていうのを、
世の中の結構な数の人が、
「我慢賃」だと思っている。

河野
ああ。
糸井
つまり、
どうせ仕事は大変なので、
大変なことに対してギャランティーをもらってるんだ、
っていう考え方の人が結構いるんですよ。
だから僕なんかはよく
「大変じゃない人」の代表みたいに思われてるらしくて。
河野
(笑)
糸井
「もっとちゃんと真剣にやって
稼ぐんだったらわかるけど、あんなヤツが」
とか昔から言われてきたんですけど(笑)。
それをかばう人もまた、
「糸井さん、ああ見えてすごく大変なんだよ」って。
いや、そんなでもないんです。
どっちでもないですよ。
河野
ははは!
それはすごくわかります。
糸井
ほとんどの仕事は
「どっちでもない」んですよね。
すごく大変なことだってなくはないし、
楽勝なことだってあるし。
河野
そうですね。
糸井
上手になれば、
人が苦労することも
苦労しないでできるようになりますし、
それを繰り返しているうちに
今度は「オレの時代は終わったな」
みたいになったりして。
必死っていうのとも違うし。
ふつ~うなんですよ、本当に。
だから「我慢賃」ではないよね。
河野
間違いなく違いますね。
我慢があるとすれば、
入社して2年か3年まで。
やらなきゃいけないことが、
先輩に比べると多い時期があります。
これはおそらく、
どの会社でも共通だろうと思います。
糸井
初期の頃のほうがあるんだ?
河野
だって例えば営業であれば、
月に何社ぐらい訪問したらいいのか、
お客様のところに行ったときに
何を話してきたらいいのかもわからない
というところから始まるわけで。
経理でも、ファイナンス系の学部を出たとしても、
その会社独特の考え方があるから、
学校で習ったことそのままはできないんです。
いろんな面で、
自分が所属している会社の実情を学ぶ
ということが必要な時期なので。
糸井
ドラマでもありますね。
若者が主人公でね、
そういうことを聞いている姿はイメージできる。
河野
だから最初の2年か3年、
そういう時期があるのは事実です。
それを「我慢の時期」と言うならば、
その通りだろうと思います。

糸井
ただ僕は、忙しすぎるっていうのも
どうだろうと思っているんです。
恋愛もできないですよね。
河野
そういう意味で難しいのは、
「働き方改革」とかだったりして、
もっと仕事したい人は
「もういいかげんにしてくれ」って
怒っていたりもするんですよね。
糸井
ああ~。
河野
泣き出しますからね、
「7時で帰れって言われて」って。
そうなるともう従業員の数を増やすしかないけれども、
仕事のできる人を
そう簡単には育成できないじゃないですか。
糸井
そうだね。
河野
これは働き方改革に文句を言っているわけではなく、
時間が限られている中で、
やらなければいけないことをやり、
恋愛とか自分のプライベートも維持し、
地元じゃない人は親が支えてくれるわけでもないから
自己管理もしなきゃいけない。
糸井
となると、大変ですよね。
河野
大変です。
でもこういうことが一斉に起きるのが、
仕事人生に入るってことなので。
糸井
ああ。
河野
「時間の制約」というものと
常に向き合わなきゃいけない。
だから、手が早いとか行動が早いと言われる人は、
それだけで有利なんですよ。
思い立ったらすぐやるから。
糸井
有限な時間の中で、
優劣をつけて動くわけですね、みんなが。
「今の自分にとって必要なのはこれだ」とか、
「これはそうでもない」とか。
でもその優劣を、
あんまり合理的につけちゃうと、
優劣の何番目のものっていうのが、
なくてもいいみたいになっちゃう。
そうすると、あとで足腰に響いてくるっていうか。
たとえば、さっき僕が恋愛と言ったけど、
フラれた経験のない人って、ある意味、
人生において相当勉強してないってことになりますよね。

河野
なるでしょうね。
糸井
モテてモテて、
一回もフラれたことないよっていう人は、
仕事もどこかで行き詰まりますよね。
河野
面接でも不利でしょうね。
生まれながらのイケメンは。
糸井
そこまで‥‥それはあなたね、
イケメンの苦労を知らないんですよ!
河野
あ、すみません(笑)。
糸井
イケメンはフラれるんですよ、意外と。
河野
ああ、すみません。
知らなかったもので(笑)。

(つづきます)

2020-04-26-SUN

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