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#25 バースデーケーキにろうそくを

この漫画のもとになった投稿

娘が家出した挙句に「妊娠した。結婚する。」
と言い出したのは20歳のとき。
相手は仕事が不安定で
結婚後、はたらかないことが増えていく。

娘はといえば結婚後の診断で発達障害が発覚。
バイトや仕事でミスが多かったのは
そういうことかと納得はしたけれど
まったく子育てができず育児放棄状態。

孫が3歳のときに
相手のDVがきっかけで離婚したものの
娘はうつの症状も出ていて
仕事も子育てもできない時期が続き、
見かねた私たち夫婦が
孫の食事・風呂・着るものの面倒をみていた。

孫が幼稚園に通いはじめても
娘が朝起きてやらないので
園での写真は髪をとかしていない
浮浪児のような姿。
園の費用を払えないから
未納のお手紙を持ち帰る孫。

そのたびに仕方なく支払いをわたしがしていて、
それは小学校入学後も変わらず。
ついに2年生からは
我が家で夜も寝るようになって
これはもううちの子にするしかないと
夫と相談して養子縁組をした。

それから1年以上が経った。

わたしは「娘の代理」ではなく
母親として学校行事に参加し
孫は学校行事に
「かあちゃん来るかな‥‥」と期待して
結局来なかった、
と大いに落胆させられることがなくなり、
わたしが必ず行くので
参観日に、うれしそうに
教室の中から手を振っている。

孫は、よく笑うようになった。
それからよく眠るようになった。
以前は、関わってくれない母親を横目に
いろんな不安とひとりで闘っていたのだろう、と思う。
ひとりで闘わなくてもよくなったことがわかって
安心したのだ、きっと。

わかりあえなくて言い争うこともあるけど、
それは孫が娘には言えなかった
「言いたいこと」が
わたしには言えるからなのだ。

先日迎えた9歳の誕生日。

一緒にケーキを買いに行って、
ホールケーキを買う。
フルーツのいっぱいのった
プリンアラモードが欲しいというので
それも買っての帰り道、
「ろうそく‥‥」とつぶやく孫に、はっとする。

夫の好みで
バースデーケーキ仕様じゃないのを買ったので、
ろうそくもメッセージもついていない。

あ‥‥
家族でホールケーキに
ろうそく灯して吹き消すの、
この子はやったことないのか。

食品庫の棚に‥‥あったあった、
何年か前に
すでに成人した息子の誕生日用に買ったケーキに
知り合いの店員がつけてくれた
バースデー用のデコろうそく、
とっておいてよかった。

くま型のとスリムなのを
組み合わせてケーキに立てて、
火をつけてやると、
大喜びで「ふーーっ」と吹き消す。

こうしていろんな「はじめて」を
わたしたちと経験していくのだ。

そのあとのわたしの誕生日にも、
クリスマスにも「ふーーっ」したね。

来年の10歳の誕生日にもしようね。

(匿名さん/『雲のうえFM』への投稿より

2024-03-04-MON

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    今日マチ子

    漫画家。1P漫画ブログ「今日マチ子のセンネン画報」の書籍化が話題となる。文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に4度選出。戦争を描いた『cocoon』は「マームとジプシー」によって舞台化。2014年に手塚治虫文化賞新生賞、2015年に日本漫画家協会賞大賞カーツーン部門を受賞。『みつあみの神様』は短編アニメ化され海外で23部門賞受賞。コロナ禍の日常を絵日記のように描いた近著『Distance わたしの#stayhome日記』が、2022年1月『報道ステーション』にて特集された。

  • 漫画:今日マチ子

    編集:奥野武範(ほぼ日)

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