飯島さんの本業は「フードスタイリスト」。
それは、レストランの料理人とも、
雑誌や書籍、テレビで活躍する料理研究家とも、
そしてテーブルコーディネーターとも、
ちがう仕事なんです。
そのちがいって、なんだろう?
そして、どうして飯島さんは
「フードスタイリスト」になったのかなあ。
長いおつきあいの飯島さんに、
あらためてそんな話をおききしました。
最初は、飯島さんへのインタビュー、
そして後半は、
ファッションデザイナーの児玉洋樹さんといっしょに、
飯島さんとつくったあたらしいアイテムのお話を
していきますよー!
後編
エプロンの新色と
あたらしいエコバッグ
- ──
- ここからはSUPER LIFE MARKETの
アパレルまわりを引き受けてくださっている
lelill(レリル)のデザイナーの
児玉洋樹さんに参加していただきます。
- 児玉
- よろしくお願いします。
エプロンに新色ができました
- ──
- エプロン、新色ができましたね。
それからエコバッグ。
どちらも、飯島さんがフードスタイリストとして
仕事に便利なよう、本気で出したアイデアを、
児玉さんが形にしてくださいました。
まず、エプロンは、生地がすこし変わりましたよね。
- 飯島
- ちょっと薄くなって軽くなって。
- 児玉
- 生地の密度が上がっています。
- ──
- バージョン2になったっていう感じですか。
- 児玉
- そうですね。でも、以前の生地がよくないと
いうことでは、まったくないんですよ。
どちらも並行して「ほぼ日ストア」に並ぶので、
まずはお好みの色で選んでいただいて大丈夫です。
あえて違いを言うならば、
前回のほうがカジュアル好きさんにはまりそうな感じ。
で、今回のは
きれい目な感じの好きな方にはまりそうです。
- 飯島
- 新しい色をご提案したくて。
- 児玉
- 今回、奈美さんのチームである
7 days kitchenのみなさんに、
色選びから参加していただきました。
女性のみなさんが選ばれているので、
ぼくがつくった「道具感」というのかな、
機能的なつくりのところに、きれいな色が入り、
より女子感が増していると思うんです。
- 飯島
- 色数が欲しかったのは、私たち、
同じ現場に複数人で行くことが多いんです。
そうすると2タイプ2色では、かぶってしまって。
増えたら、色とかたちが違っても、
一体感もあって、嬉しいなと。
- 児玉
- 新色は、春でも秋でも合いそうな
いいカラーだと思うんですよ。
- 飯島
- ジップエプロンは、まず、
黒ではなくミッドナイトブルー。
- 児玉
- そして、前回はカーキベージュがありましたが、
今回はグレージュを足しましたね。
ぼくらは「赤みが入る」というんですが、
すごく洋服と合わせやすい色になりました。
- 飯島
- 1回目のものから、すこしライトになりましたね。
パターンも、手を入れた部分がありますよね。
- 児玉
- Mサイズのサイジングを、
今回、ほんのちょっと、見直しました。
初回はMとLの丈感が近かったんです。
つまりMがちょっと長めだった。
そこで身長がそこまで高くない女子たちにも
より着やすいような丈感にMサイズだけ変更をしています。
そうすることによって、
より自分の好きなサイズを
ちゃんと選びやすい感じになっていると思います。
- 飯島
- そうですね。
生地が軽くなったとおっしゃいましたが、
実際、着ると、そこまでの違いは感じません。
初回も今回のものも、
どちらも身体に寄り添って軽く感じますよ。
- 児玉
- はい、最初から、
重く感じないエプロンをと、
それを大事につくりましたから。
実際は何グラムも違わないんですよ。
だからあえて「軽くなりました」と
言うほどではないですし、
実際着て重さの違いを感じることは
ないかなと思うんです。
- ──
- フードスタイリングの仕事は
エプロンを1日中着るので、
すこしでも重く感じたり、
着心地に違和感があるとつらいと、
そういうところは最初から徹底的に考えましたね。
- 児玉
- はい。そしてこのエプロンの一番のすごさって、
洋服とエプロンの融合ということだと思います。
今回は生地の変化から
より「どっちなの?」が強まったっていうか、
進化してる感じがしませんか。
- 飯島
- 本当ですよね。洋服ですよ、これは完全に。
- ──
- 実際に洋服として
着てくださっている方も多いんですよ。
「ほぼ日」の乗組員にもいます。
会社でワンピースのように普通に着てますよ。
- 児玉
- ありがとうございます。本望です。
- 飯島
- 普通の首かけのエプロンは
現場でポケットに荷物を入れると、
鏡を見たときに、なんとなく‥‥。
- 児玉
- はい、引っ張られて、ゆがんじゃいますよね。
- 飯島
- そうなんです。でもこれだと
結構いっぱいものを入れても
そんなにゆがみを感じない。
本当に安定しているんです。
どうしてこんなに違うんでしょう。
- 児玉
- やっぱり洋服ならではの作り方を入れ込んだことが
大きい理由だと思うんです。
ふつうのエプロンって、支える面積が、
すごく少ないじゃないですか。
- 飯島
- そうですよね。
- 児玉
- だけど洋服になることで、
ストラップの幅も単純に増えて、
パターンも立体的になることで身体に寄り添い、
ずれがすごく少なくなっています。
特にジレエプロンを着ると、
それを感じてもらえるんじゃないかな。
- ──
- ジレエプロンのほうが
「寄り添い感」があるのかもしれないですね。
でもジップエプロンのデザインもいいんですよ。
- 児玉
- ジップエプロンは
よりユニセックス感を強めたかったんです。
たとえば普段オーバーオールを着ている方は、
デザインからして馴染めると思います。
- 飯島
- みんなで「どちらを選ぶ?」と話すのが楽しくて。
「彼女はジップかな?」と思うと、
ジレを選んだり、その逆だったり。
意外であると同時に、たしかに甲乙付けがたいんですよね。
- 児玉
- そうなんです。意外な似合い方をしますよね。
男性の場合はジップ一択になるとは思うんですけれど。
女性は「どっちも、ありかな?」となります。
とくにジップ派と思っていた人が
ジレ派に行くことがあるような気がします。
特に今回、女性目線で色をチョイスしてるじゃないですか。
だから、ジレエプロンは本当に
洋服の延長線上の雰囲気になりました。
- 飯島
- ジレエプロンの色については、和名をつけました。
これは「瑠璃色」(るりいろ)、
こちらは「千草色」(ちぐさいろ)。
- ──
- ジップエプロンと印象を変えたくて、
名前のつけかたも変えたんです。
- 児玉
- いいですね。個性がそれぞれあって。
- 飯島
- 職業や生活スタイルで、
長い時間エプロンをつける人も
意外と多いと多いと思うんですよね。
それこそカフェで働いてたり、
食品関係じゃなくても
たとえば文房具屋さんで働いている人にも、
このエプロン、いいと思うんです。
なにしろ楽ですから!
制服がないお店で働いてる人は、
これを自分で制服みたいにしちゃえばいいと思う。
- 児玉
- これを制服に使っていただけたら最高です。
- 飯島
- もし「これを制服にしたい」っていうお店があるなら、
オリジナルカラーで受注ができたらいいですね。
あたらしく、エコバッグをつくりました
- 児玉
- バッグは話すことがいっぱいありますよ。
これは最初に飯島さんからリクエストをいただいて
始まったんです。
- ──
- 飯島さんが、長く使ってるエコバッグがあって、
それが大きくて丈夫で肩紐が痛くないのだけれど、
世の中にもう売ってないんです、と。
だから「大きくて丈夫で肩紐が痛くない」
というテーマで、エコバッグのデザインを、
児玉さんにお願いしたんです。
- 児玉
- これはめちゃめちゃ工夫しました。
縫製工場のお姉様方には主婦の方が多いので、
みなさんの意見を聞きながら、
つまり日常的に食材を買う主婦目線を入れてます。
そういうふうにリアルに買い物をしてる人たちの声と、
奈美さんのフードスタイリストとしての経験値を
どれだけデザインに入れ込めるかなって。
たとえば内側に4つに分かれる仕切りがあるんですが、
それはワインボトルや牛乳パックを
ホールドするための工夫なんです。
- 飯島
- そうなんですよ!
- ──
- すごい。ということはそこに
長ネギもさし込めますね。
- 児玉
- 長いゴボウも入ります。
- ──
- 油やお醤油を買ったときもいいですね。
- 児玉
- そのなかでいちばん大きな仕切りには
A4サイズの資料が入ります。
- ──
- ということは13インチのパソコンが入るんですね。
- 児玉
- どうかな‥‥入れてみましょうか。
あっ、入った!
しかも、シンデレラフィットで。
- 飯島
- すごい。
わたしたち、ずいぶん工夫を重ねましたね。
- 児玉
- そうですよ。
そしてもう片側にはポケットがあり、
スナップボタンで留められるようになっています。
携帯はもちろん、長財布の入る幅で設計しています。
高密度で丈夫!
- 飯島
- 生地は、高機能素材の得意な児玉さんが
選びに選んでくださいましたね。
- 児玉
- 高密度のナイロンで撥水がかかっている、
っていうところが条件だったので、
そこから選んでいます。
すごく特殊っていうほど特殊ではないんですけど、
本当に強靱なものを選んでいます。
エコバッグってあんまり高くてもリアルさが減るというか、
使うのに遠慮しちゃう物を
これに関しては作りたくなかったんですよ。
やっぱりその中でどれだけ強さを出せるか。
これ撮れるかな? よく見ると、
これリップストップなんですよ。
- 飯島
- リップストップってなんですか?
- 児玉
- リップストップというのはですね、
裂け防止の太い糸が織り込まれてる特殊な素材です。
- 飯島
- 裂けないんですね!
- 児玉
- 裂けないんです。
例えば何かで穴が開いてしまったら、
普通の生地はそこから穴が広がっちゃう。
でもリップストップだと、
広がっていかないんですよ。
- 飯島
- 元々何かに使われている素材なんですか?
- 児玉
- ミリタリー系の定番です。
その強靱さを、普段の生活に、
いい意味で生かせればいいかなと思います。
- 飯島
- 旅行行くときに服を入れて仕舞って、
帰りに荷物が増えそうになったらエコバッグとして使う、
というようにしてもいいですよね。
- 数枚あれば、ちょっと長めの旅行で
スーツケースの中を整理するのにも使えますね。
季節の衣類を押し入れに仕舞う時とかも。
- 児玉
- いろんな使い方ができると思いますよ。
- ──
- 夏の布団くらい入りそうですね。
もちろん使わないときはくるくると丸めておける。
そのために留めておけるゴムもつけましたね。
- 児玉
- はい、「たたみやすい」ということも大事にしました。
真四角なエコバッグでたたみやすいものって
意外と少ないんですよ。
袋が付属しているタイプは面倒だと感じたり、
ポケットに仕舞えるようになっているものもありますが
なかなか扱いが簡単じゃなかったりもして。
だったらクルクルっと丸めて
留めておけるようにしようと。
日常使いだったらハンドバッグにも入り、
買い物のときだけ出して使える、
忙しい人でもこれならめんどくさがらずに使えて、
家に帰ってたたむのも簡単、そういうふうに。
- 飯島
- たたみかたも自由ですよね。
こうじゃなくては、ということもなく、
そこも使いやすさにつながるんです。
- 児玉
- そう。雑に使うのもアリっていう。
大きさは、大と小
- ──
- 大小のサイズ感は、
7 days kitchenで身長差のあるみなさんで
実験していただいて決めましたね。
- 児玉
- 奈美さんが背が高いので、奈美さんに合わせると、
小柄な人に合わないかもしれないというので、
みなさんで実験していただいたんです。
結果、大きいほうも、手で持っても引きずらない
ぎりぎりのサイズを狙ったんですよ。
まあ、実際大きいほうを手で持つことは
あまり多くないでしょうけれどね。
- 飯島
- 肩からかけますよね。
- 児玉
- そうですね。なので肩にかける場合でも素直に、
するっと手が入りやすいような
ストラップの長さを考えました。
といっても長くしすぎず、邪魔にならないよう、
これが一番ベストかなっていうところに
落ち着いたんですよね。
- 飯島
- そうなんですよ。
あとはやっぱりこの口の大きさ!
- 児玉
- 物を入れるための袋とはいえ、
ここまで口が大きいっていうのは、
なかなかないかもしれません。
あと細かい部分で言うと、
縫い込み(縫い代の中に入れ込んで縫われた部分)
などのやりかたは、
lelill(レリル)の基準で作っているので、
しっかりしていますよ。
- ──
- 雑貨ではなく洋服の基準なんですね。
- 児玉
- 結局、重たい物入れたときに、ほつれてはいけないので。
こういうところってロックミシンで
ガチャガチャ縫われてるのがほとんどなんですけど、
それだと引き裂きに弱いんです。
でも縫い込みにすればひっかかりもないし。
あと底に、接ぎ(はぎ)がないんですよ。
- 飯島
- ないですね!
- 児玉
- だから重たい物を入れてもちゃんと持つ。
生地を切って縫い付けるのが普通なんですが、
それだと重たい物入れたときに縫い目が開いちゃうんです。
- ──
- 1枚にしたわけですね。
- 児玉
- そう。1枚で。
そのほうがきれいだし強度も出ます。
そこは最初から絶対外せない部分として考えました。
- 飯島
- これ防水なんでしたっけ?
- 児玉
- 弱撥水、ですね。
撥水加工というのは、何回か洗っていくと
どうしても落ちていくので、
その辺は本当に簡易的だって思っていただくほうが
いいかなと思うんですけどね。
- ──
- 汚れたら洗えますか?
- 児玉
- 丸洗いできます。
綿と違うのは、洗っても型崩れがない。
色は3つです
- 飯島
- そして色。3色つくっていただきました。
食べ物の名前をつけたんですよ。
黒がトリュフノワール、
黄色がパプリカ、
クリームホワイトはブリアサヴァラン。
- 児玉
- 最後のブリア‥‥は、何の食材でしたっけ?!
- 飯島
- チーズの名前です。
- 児玉
- すてきですね!
これ、色、秀逸でしたね。
- 飯島
- ね。いいですよね。
派手な色をちょっと入れたかったんですよ。
- 児玉
- 黄色、大正解じゃないですか?
僕はこの黄色が欲しい。
- 飯島
- 子供の塾のバッグに使ってもいいかも。
- 児玉
- 重たい物いっぱい運ばなきゃいけなくて、
でもでっかいバッグはちょっと嫌だっていう人にも、
これは本当に便利です。
やっぱり天地の高さが秀逸だと思うんですよ。
エコバッグでこんな深いバッグ、ないかも。
- 飯島
- ないですよ。
- ──
- 軽くてかさばるものってあるじゃないですか。
トイレットペーパーとか、介護用品とか、
こどものおむつとか、ペット用品とか。
- 飯島
- あと、ちょっとした電化製品を買いに行ったとき。
- 児玉
- 分かる!!
- 飯島
- 私の場合、フードプロセッサーとか
買っちゃったとき!
- 児玉
- ‥‥なかなか普通のひとは
思いつきでフードプロセッサー買わないです(笑)。
- 飯島
- 紙袋だと手が痛いんです。
- 児玉
- なるほど、そういうときにもぜひ、ですね。
- ──
- すごく地味な部分のアピールをしていいですか。
ハンドルがぐるり口のところに通っているんですが、
中でねじれちゃって、いらいらすることがないよう、
ちゃんと留めてあるんです。
うまく伝わるでしょうか。
- 児玉
- 大事です。そういうところ。細かいところ。
- ──
- これ、つくった私たちからして、
どのサイズのどの色を買おうか、
すごく迷っちゃいますね。
迷っているのが、楽しいんですけど。
- 児玉
- ありがとうございます。
- ──
- 児玉さんから伝えておきたいこと、
ほかにありますか。
- 児玉
- 「遠慮なく雑に使ってください!」
ということですね。
丈夫な道具ですから。
遠慮して使ってほしくないですよね。
- 飯島
- そうですよ。
児玉さんはどうお使いになりますか。
- 児玉
- 僕、出張が多いんですが、
たとえば地方の空港でお土産を買うとき、
あの店で買い、この店でも買い、
ということがあるので、
いっぺんに収納できるのがほんとうに便利じゃないかなと。
自分でつくったlelill(レリル)のエコバッグだと、
全然入んなくて‥‥。それのときに、これ、いいなぁ。
だから出張の時に絶対1個持って行きます。
- 飯島
- そうしてください!
どの色を選ばれますか。
- 児玉
- ぼくは黄色と黒が欲しいんですが、
奥さんと意見が割れたんですよ。
うちの奥さん白が欲しいって言ってて。
- 飯島
- そういうときはですね、
3色ぜんぶ買っていただくと、
家庭は平和ですよ!
- 一同
- (笑)
- 児玉
- 大きさも、もめたんですよ。
奥さんは、やっぱりちっちゃいのがいい。
僕はもう圧倒的に大きいほうがいい。
- ──
- ちっちゃいほうも、けっこう大きいんですよ。
- 児玉
- そうですね、普通のエコバッグよりは大きいかも?
- 飯島
- そうですね、だから「どっちも便利ですよ」ですね。
- 児玉
- できあがってみると、
飯島さんのプロデュースだけに、
エプロンと通ずるものがありますよね。
ジップエプロンは特にそうですが、
ユニセックス感がすごくあるじゃないですか。
このバッグも、本当にジェンダーレスに使えます。
- 飯島
- いいものをつくってくださってありがとうございました。
まだまだ、アイデア、あるんですよ。
相談させてくださいね。
- 児玉
- ぜひ!
(おわります)
2022-12-16-FRI
-
飯島奈美さんと児玉弘樹さん、
そして「ほぼ日」がいっしょにつくった
エプロンの新色とエコバッグは
12月20日(火)午前11時より
「ほぼ日ストア」で販売開始です。
どうぞおたのしみに!