こんにちは、ほぼ日の奥野です。
尊敬する編集者にしてゆかいな大先輩、
宝島「VOW」二代目総本部長・古矢徹さんとともに、
ちいさな連載をはじめたいと思います。
スマホや携帯を持たない“丸腰人”人生65年の
古矢総本部長と、スマホは愛用するが
ときどき海に投げ捨てたくなるわたくし奥野が、
世界の片隅にひっそり存在するであろう
愛すべき“丸腰人”を探しに行く‥‥という企画です。
まず手はじめに、“丸腰人”ご本人さま、
もしくは“丸腰人”のまわりにいるみなさまから、
スマホや携帯を持たないがゆえの
困難とペーソスに満ちた日々のエピソードを、
送っていただきたいなと思ってます。
それらを、当連載で紹介していきたいと思います。
投稿どしどしお待ちしてます!
採用された方には、素敵なプレゼントも考え中。

>宝島「VOW」二代目総本部長・古矢徹さんとは。

古矢徹(ふるや・とおる)

「止れま」「まさる死ろす」「聞け、わだみつおの声」などのおまぬけネタで知られる、雑誌『宝島』の読者投稿企画“VOW”(バウ)二代目総本部長。『宝島』休刊後、女性誌『sweet』(宝島社)に拾われ今も連載継続中という知る人ぞ知る事実は、21世紀雑誌界の奇跡と言っても過言と言えなくもなくなくない? 声優の古谷徹さんとは別人。最近「久しぶりにVOWのサイトを見たら、二代目総本部長がお元気そうで何よりだった。東秋留の辺りを通りがかるたびに古矢さんっぽい人を探すんだけど見つからないなぁ」との読者のSNSへの書き込みあり。古矢さんっぽい人は、今は西東京市あたりで探すと見つかるかもよ。

追記:VOW二代目総本部長古矢徹さんは、2024年10月4日に逝去されました。古矢さんの御冥福をお祈りいたします。

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ある丸腰人の物語 08

母は林芙美子の命日付近に行なわれる
「あじさい忌」に参加すべく、
尾道へ2泊3日の旅に出ました。
出発は直江津駅です。

6月下旬、4時過ぎの電車で向かう予定で
私はホームまで見送りに行きました。

少し早めに乗車して発車を待っていたので、
車中にいる母を
ホームから撮ってLINEに送りました。

そのLINEを見ようとした母は、
充電していたiPhoneを
忘れてきたことに気づきました。
発車5分前。

取りに行く時間はなく、
必要なことはメモ帳に書いていたので大丈夫と
かえってうれしそうな顔をする母でありました。

その後のわたしは
母からの連絡は当分こないと思いつつも、
乗り換えの時間に出れる状態でいなくちゃと
思いました。

プラス、7回くらいで留守電になる設定を
鳴り続ける設定に変更。

直江津→上越妙高→敦賀→新大阪→福山→尾道。
行程をつくったのは、わたし。
母が乗り換える時間や宿泊先は押さえているので
なんかあったら連絡あるだろーと、
これまた母の遺伝子なのか、
わたし自身も
スマホをほたらかす時間が確実に増えました。

翌日朝、
母は尾道駅前の公衆電話から電話をくれました。
めっちゃ元気でした。
11時からの「あじさい忌」まで
2時間くらいあったと思いますが、
はずむ声の向こうに
ここはええとこぢゃぁと語った
林芙美子の声が聞こえてくるようでした。
歩きたくなる街と
母が言っていた言葉が印象的でした。

昼過ぎ、ちゃっかりしてる母は
林芙美子の会のかたにスマホを借りて、
わたしに電話してくれました。

わたしはその方と面識があったので
丁重にお礼を伝え、電話を切りました。

翌日、尾道から直江津まで
無事に帰ってきた母は目がキラキラで、
旅をしてきたあとのコーフンに
つつまれていました。

写真を撮らなきゃとか、LINEしなきゃとか、
そういう一切合切をおいて旅する醍醐味。

プラス防災訓練ではありませんが
公衆電話の災害時、
無料で使えるようになることが学べた
3日間でした。

必要なことは
スマホがなくてもメモっていたこと、
待ち合わせの場所と時間を
事前に打ち合わせしていたことは
あっぱれなことでした。

さすが、円がまだ360円のころ、
アメリカに行ったことのある人です。

(河端さん)

(つづきます)

2024-10-15-TUE

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    オチなどなくても気にしない。
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    誰でも投稿OKです。
    総本部長とふたりで、すべての投稿を謹んで拝読し、
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    この連載で紹介してゆきます。
    みごと掲載された方には、素敵なプレゼントも考え中。
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