こんにちは、ほぼ日の奥野です。
尊敬する編集者にしてゆかいな大先輩、
宝島「VOW」二代目総本部長・古矢徹さんとともに、
ちいさな連載をはじめたいと思います。
スマホや携帯を持たない“丸腰人”人生65年の
古矢総本部長と、スマホは愛用するが
ときどき海に投げ捨てたくなるわたくし奥野が、
世界の片隅にひっそり存在するであろう
愛すべき“丸腰人”を探しに行く‥‥という企画です。
まず手はじめに、“丸腰人”ご本人さま、
もしくは“丸腰人”のまわりにいるみなさまから、
スマホや携帯を持たないがゆえの
困難とペーソスに満ちた日々のエピソードを、
送っていただきたいなと思ってます。
それらを、当連載で紹介していきたいと思います。
投稿どしどしお待ちしてます!
採用された方には、素敵なプレゼントも考え中。
古矢徹(ふるや・とおる)
「止れま」「まさる死ろす」「聞け、わだみつおの声」などのおまぬけネタで知られる、雑誌『宝島』の読者投稿企画“VOW”(バウ)二代目総本部長。『宝島』休刊後、女性誌『sweet』(宝島社)に拾われ今も連載継続中という知る人ぞ知る事実は、21世紀雑誌界の奇跡と言っても過言と言えなくもなくなくない? 声優の古谷徹さんとは別人。最近「久しぶりにVOWのサイトを見たら、二代目総本部長がお元気そうで何よりだった。東秋留の辺りを通りがかるたびに古矢さんっぽい人を探すんだけど見つからないなぁ」との読者のSNSへの書き込みあり。古矢さんっぽい人は、今は西東京市あたりで探すと見つかるかもよ。
追記:VOW二代目総本部長古矢徹さんは、2024年10月4日に逝去されました。古矢さんの御冥福をお祈りいたします。
母方の祖父はスマホを持っていません。
スマホどころか「携帯電話」というものを
持ったことがありません。
あるのは家の固定電話だけ。
わたしが子どものころから、
祖父と待ち合わせるときには
必ず待ち合わせ場所を打合せ。
「○○駅のポストの前にいてね」
「わかった」
そして家を出るときには必ず
祖父から電話をもらっていました。
「今から出るから」
「わかった!」
わたしは子どもながらに、
もし途中でなにかあったら‥‥
待ち合わせ場所に見当たらなかったら‥‥
家を出るときのやり取りが
最後になってしまったらと、
いつもどこか緊張を抱えて
待ち合わせ場所に向かいました。
携帯を持ってくれればいいのに、
何度もそう思いました。
勝手に購入して
渡そうかと思ったこともありました。
祖父は祖母が亡くなってから
一人で暮らしています。
家族もなかなか会いに行けないときは、
家に電話をします。
「トゥルル‥‥トゥルル‥‥」
2回ほど鳴らして、
「はい」と出てくれたとき、
すごくほっとします。
たまに
何回鳴らしても出ないときもあります。
しばらくしてまた電話をかけると、
「買い物に行ってた」ということも。
祖父は現在88歳。
一人で暮らしているから、
なにがあってもおかしくない。
電話を鳴らしている間、
不安がぐるぐる駆け巡ります。
出ないな、どうしたのかな、
寝ているのかな、風邪かな、
何かあったのかな。
最近では、いつも座っているテレビの前から
固定電話まで歩くのも億劫になったらしく、
電話を鳴らす時間が長くなっています。
「トゥルル‥‥トゥルル‥‥トゥルル‥‥トゥルル‥‥」
4、5回ほど鳴らして
やっといつもの声が聞こえてきます
気持ちが、不安から一気に安心へかわります。
はあ‥‥今日もちゃんと生きていてくれてよかった。
あるとき、祖父に聞きました。
「携帯を持つつもりはないの?
いつでも連絡つく方が私たちも安心なんだけど」
間髪入れずに、祖父は言いました。
「その『いつでも連絡つく』のがいやなんだよ。
見張られている感じがするじゃないか」
たしかにそうだ。わたしは、はっとしました。
大袈裟に言えば、
わたしたちはスマホを通して
いつも誰かを見張っているんだ‥‥。
祖父からそう言われるまで、
そのことに気が付きませんでした
祖父の言葉を借りれば、
わたしはずっと見張られています。
小学5年生のときからずっと見張られている。
そのことに慣れてしまっていました。
もしかしたらスマホを持っている人は、
自由に生きているように見えて、
本当は自由じゃないのかもしれない。
いつでも連絡がつく便利さは、
本当は不自由さを生んでいるのかもしれない。
だからわたしは祖父に言いました。
「そうだよね、
おじいちゃんがほんとうに羨ましいよ」
(情報過多に疲れぎみ)
(つづきます)
2024-12-09-MON
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スマホやケータイを持っていない。
ただそれだけなのに、こんなご苦労、こんなひどい目、
はたまた、こんないいことありました‥‥
というエピソードをお送りください。
どんな些細なことでも、けっこうです。
オチなどなくても気にしない。
丸腰人ご本人でも、丸腰人の近くにいるのアナタでも、
誰でも投稿OKです。
総本部長とふたりで、すべての投稿を謹んで拝読し、
「これは!」と感じ入った投稿を、
この連載で紹介してゆきます。
みごと掲載された方には、素敵なプレゼントも考え中。
どうぞ、ふるって投稿ください。
総本部長が長年(?)あたためてきた
この連載の命運は、みなさんの1通にかかっています!イラスト:ゴロー