京都のTOBICHIで約4年間、
スタッフとしてはたらいていた、かつての仲間が、
ひとりのクリエーターとして、
かつての職場「TOBICHI京都」で個展をひらきます。
クリエーターの名前は、正木(まさき)ゆうひ。
彼女がTOBICHI京都を卒業してから、
わずか2か月後の個展開催です。
まだまだ「仲間」という感覚が強く、
互いに気恥ずかしさもあるのですが、
せっかくの機会。
きちんとインタビューを行いました。
手を挙げる彼女の、作品に、言葉に、
よろしければ触れてください。
ひとりの若きクリエーターの、
「あかるい覚悟」を感じていただけると思います。
正木ゆうひ(まさき ゆうひ)
イラストレーター、アーティスト。
1995年生まれ。
京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)
情報デザイン学科 イラストレーションコース卒業。
卒業後、母校の出版物やいくつかの紙媒体で
イラスト・挿絵等の仕事を手がけるほか、
これまでに2回の個展を開催している。
個展「月火水木金土日以外の日」
(634展示室/東京・国分寺/2020年)
個展「Songs from Somewhere
たとえば、ぽてとの向こうなんかから。」
(子どもの本屋ぽてと/大阪/2023年)
また、関西のクリエイター4人組ユニット
「ポテト持ち込みOK出版」のメンバーであり、
「チェンマイのヤンキー」というユニットでは
音楽活動も行なっている。
2019年5月~2023年4月まで、
TOBICHI京都のスタッフとして勤務。
退職して約2か月後の2023年6月に
かつての職場TOBICHI京都で、
正木ゆうひ個展
「にんじんがくつ下になると聞いて」を開催。
正木ゆうひのInstagram
@yuhimasaki
正木ゆうひのTwitter
@yuhi_masaki
- ───
- すごく、ふしぎな感じですね。
- ゆうひ
- はい(笑)。
- ───
- なぜふしぎかと言いますと‥‥
- ゆうひ
- はい。
- ───
- こうしてインタビューしている相手が、
ついこの前まで、この場所、
TOBICHI京都ではたらいていた仲間だからです。
- ゆうひ
- そうですね、ふしぎですね。
- ───
- TOBICHI京都のスタッフになったのは、
どのくらい前でしたっけ?
- ゆうひ
- ええと、2019年の春からなので、
ちょうど4年前です。
- ───
- ああ、そんなになるんですね‥‥。
それで、つい先日、
4月16日で、ご卒業となりました。
- ゆうひ
- はい、ありがとうございました。
お世話になりました。
- ───
- こちらこそです。
4年間、この場所をたのしくしてくれて
ほんとうにありがとうございました。
- 後ろから声
- ゆうひちゃん、がんばれ~。
- ───
- (笑)かつての仲間、
TOBICHI京都のスタッフが何名か、
ゆうひちゃんのインタビューを
見届けに来ています。
- ゆうひ
- みんな、もっと前に来てほしい!
- ───
- (スタッフたちに)前に来てほしいって。
- スタッフ
- いやいやいや、こっから見てますー。
がんばれ~(笑)。
- ゆうひ
- 恥ずかしい(笑)。
- ───
- きょうのインタビューの写真も、
やはりかつての仲間、
写真のお仕事もされている、
梅戸繭子さんに撮ってもらっています。
- 梅戸
- ゆうひちゃん、がんばってな(笑)。
- ゆうひ
- いや~!
- ───
- (笑)仲間といっしょなら心強いでしょ?
- ゆうひ
- そうですけど‥‥。
- ───
- インタビューを受けるのは初めてですか?
- ゆうひ
- はい、人生初のインタビューです。
- ───
- それはぼくらも光栄です。
ええと、なにから聞きましょう。
ゆうひちゃん‥‥じゃなくて、
作家さんですから「ゆうひさん」ですね。
- ゆうひ
- いやいやいや!
「ちゃん」でいいです、
「ちゃん」にしてください!
- 一同
- (笑)
- ───
- では親しみをこめて、ゆうひちゃん、
TOBICHIでの4年はどうでしたか?
- ゆうひ
- この4年‥‥。
あの、心がすごい元気になりました。
- ───
- 心が元気に。
- ゆうひ
- はい、じんわりと。
- ───
- よかったです。
スタッフもお客さんも
みんないい人ばかりですから。
- ゆうひ
- はい。
- ───
- そんなゆうひちゃんが、
TOBICHIを卒業して2か月後に
ここで個展をひらくことになりました。
- ゆうひ
- ありがとうございます、よろしくお願いします。
- ───
- こういうケースって、
ほぼ日ではたぶん初めてなんですよ、
仲間だった人が主役になって
展示を行うということが。
- ゆうひ
- そうなんですか?
- ───
- たぶん。
こうしてインタビューまでして、
仲間の個展をひらくのはほぼ日史上初です。
- ゆうひ
- わあ‥‥。
- ───
- ただ、ここできちんと言っておきたいのは、
ゆうひちゃんが知り合いだから
個展をひらくわけではありません。
- ゆうひ
- はい。
- ───
- いい人だから、でもありません。
- ゆうひ
- はい。
- ───
- ゆうひちゃんの絵を
ぼくらみんなが好きだから、です。
- ゆうひ
- ‥‥ありがとうございます。
- ───
- あの、4年前のこと、
ぼくははっきり覚えてるんですが、
ゆうひちゃんは、
共通の知り合いのご紹介で
TOBICHIではたらくことを希望されましたよね?
- ゆうひ
- そうでした。
- ───
- 「どんな子?」って聞いたとき、
最初に見せられたのが「絵」だったんですよ。
本人に会うより先に
インスタグラムの絵を見たんです。
- ゆうひ
- あ、インスタの。
- ───
- 履歴書じゃなくてインスタの絵を見て、
「この絵を描く人なら大丈夫だろう」
って思ったんです。
- ゆうひ
- おお。
- ───
- とはいえまだ会ってませんから、
あかるい子だったらいいなぁ、
気難しいアーティストだったらどうしよう、
などと思っていました。
- ゆうひ
- (笑)
- ───
- で、実際に会ってみたら‥‥
よかった、あかるい。
- ───
- あかるいどころか、おもしろい。
- ───
- くったくがない。
- ───
- ほかのスタッフとも、すぐに仲良く。
- ───
- 京都のスタッフに欠かせない人になりました。
- ゆうひ
- なんだか恐縮です‥‥。
- ───
- 絵にも人物にも興味をもったので、
「TOBICHIで展示をやればいいのに」
と自然に提案したんです。
- ゆうひ
- はい、けっこう前から
そう言っていただいてました。
- ───
- ただどうしても、
「スタッフの個展」というのは
あとまわしになって‥‥。
結局、卒業後になってしまいました。
お待たせしてごめんなさい。
- ゆうひ
- いえいえ、そんな。
- ───
- どうですか?
かつての職場TOBICHI京都で、
自分の個展を開くお気持ちは。
- ゆうひ
- 実感がありません(笑)。
- ───
- そうかもしれませんね。
でもほら、このインタビューのために
何点か作品をもってきてもらったんですが、
こういう感じになるんですよ。
- ゆうひ
- そうですね‥‥。
- ───
- この空間にとても合うと思います。
- (しばし無言。皆、絵を見ている)
- ───
- ‥‥あのね。
- ゆうひ
- はい。
- ───
- ‥‥なんて言うんでしょう、
描かれている人や物に、
なにか事情があるって感じるんです。
- ゆうひ
- 事情。
- ───
- この登場人物たちは、
意味があってここにいる。
これを描いた人は、
しっかりとひとつずつ
それを描いている印象がありました。
- ゆうひ
- そうですね。
意味があると言えば、そうです。
- ───
- で、それでね。
この前、はじめて聞いたじゃないですか、
「この絵の人たちは何をしてるの?」って。
- ゆうひ
- はい。
- ───
- そうしたらもう、みごとに答えてくれました。
「この人はこういうことをしてます」
「この花はこういう理由でここにある」
すらすらとよどみなく。
- ゆうひ
- 聞かれると、話せるので。
- ───
- 感動したし、笑いました。
ほんとーに、すごくたのしかった。
「どう感じるかは見た人次第です」
みたいなことをぜったい言わないですよね。
- ゆうひ
- そうですね。
でも、見た人が思ったことも
正解だと、もちろん思います。
逆にわたしが聞きたいくらいです。
- ───
- あー、そうなんですね。
- それをわかったうえで、
きょうはぜひお願いしたいのですが‥‥。
あのときのように絵の解説を
していただけますでしょうか?
- ゆうひ
- あ、ここで?
- ───
- はい。
- ゆうひ
- いま?
- ───
- そのつもりで動画用のカメラと
マイクも用意してきました。
- ゆうひ
- じゃあ、はい。わかりました。
- (席を立ち、動画撮影の準備を整える)
- ───
- では、背景にある、
おおきな絵の解説をお願いします。 - ‥‥はい、回りましたー。
まずはこの絵のタイトルからお願いします。
- ゆうひ
- はい。
タイトルが「oneday part.826」です。
- ───
- 826もあるんですね‥‥。
- (解説の続きは動画でご覧ください)
- ───
- 服宛!
ありがとうございました。
- ゆうひ
- はい、ありがとうございます。
- 一同
- (拍手)
- ───
- やっぱり、すばらしいです。
- ゆうひ
- 動画はすこし緊張します(笑)。
- ───
- すごく客観的に解説をしますよね。
自分の作品ではないように。
- ゆうひ
- そうですね、なんかこう‥‥
その絵の中の
時間みたいなところを大事にしたくて。
それぞれの時間を過ごされているので。
- ───
- 絵の中の人たちは、
それぞれの時間を過ごしている。
- ゆうひ
- 好きに生きてほしいので、
わたしが邪魔しないよう気をつけてます。
- ───
- そっとのぞき見るような感じでしょうか。
- ゆうひ
- はい。ほんとにそうですね。
この方々の時間なので。
- ───
- この方々。
- ゆうひ
- はい。
- ───
- この方々に対して、
すごく尊敬があるのですね。
- ゆうひ
- そうですね。尊敬しています。
(つづきます!)
写真:梅戸繭子(TOBICHI京都クルー)
撮影協力:TOBICHI京都クルー全員
動画編集:中林芽愛(ほぼ日)
インタビュー・編集:山下哲(ほぼ日)
2023-06-02-FRI