突然ですが、上のタイトルまわりの画像、
懐かしくないですか?
馴染みがない、という世代の方も、
ご家族が持っていませんでしたか?
1980~90年代に日本中の観光地で売られていた、
これらのファンシーな絵が施されたグッズに
「ファンシー絵みやげ」という名前をつけ、
全国で「保護」活動をしている
山下メロさんという方がいます。
ある日、メロさんが書いた1冊の本が
ほぼ日に届いたことをきっかけに、
社内でちょっとしたブームがおきました。
メロさんは、なぜ、こんな活動をしているんだろう。
ファンシーな世界が大好きな
ほぼ日・フジタが話をうかがってきました。
(まずは、メロさんの研究室近くにある
飲食店でお会いしました)
- ーー
- はじめまして。
今日はよろしくおねがいします。
- メロ
- こちらこそ、よろしくおねがいします。
- ーー
- 『ファンシー絵みやげ大百科』を拝読して、
いつかお会いしたい、と思っていました。
本を私のデスクの上に置いていたら、
通りがかる同僚たちが、次々に、
「え、何これ。‥‥懐かしい」と言って、
中をパラパラとめくりはじめ、
しばらく見入っているんです。
それだけみんなの心にぐっとくるものがあるんだな、と。
- メロ
- ほぼ日さんの『ただいま製作中』にも
載せていただいて。
ありがとうございます。
- ーー
- メロさんは、全国の土産店の片隅に
ひっそりと残っている、
懐かしくファンシーなグッズを集めて
「保護」しているそうで。
なぜ、こういう活動をはじめたんですか?
- メロ
- 簡単に説明すると、
私は小学生のころ、ファンシーなキーホルダーや
文房具をすごくたくさん持っていたんです。
観光地に行くとそういうものしか売っていないし、
自分でも買うし、友達からもおみやげにもらうし。
それから、ジャンルはちょっと違いますが、
サンリオグッズも好きでした。
「けろけろけろっぴ」とか「みんなのたあ坊」のような、
女子だけでなく、男子が持っても許されるものが
ありましたから。
- ーー
- 「けろっぴ」や「たあ坊」、わかります。
持っている男子、多かったです。
- メロ
- そういうファンシーグッズを
喜んで使っていた小学校高学年のころ、
女子の中で、突然、英語のロゴしか入っていない
「パーソンズ」の布のペンケースを
使いはじめる子が出てきたんです。
みんながファンシーな缶ペンを持って
キャピキャピしていたところに、
その子は、突然、「パーソンズ」の
ペンケースをかばんから出した。
それだけでなく、
「無印良品」のアルミの定規まで出して、
使いはじめたんです。
- ーー
- 「パーソンズ」!
私が通っていた小学校でも同じ現象がありました。
- メロ
- あ、同世代ですか。
それは話が早いです(笑)。
それで、みんな一気にキャラクターの缶ペンが
恥ずかしくなったんです。
私も、恥ずかしくなりました。
- ーー
- その感覚、覚えてます。
革命のようなできごとでした。
「パーソンズ」は、大人びて、かっこよく見えました。
- メロ
- ですよね。
まあ、そういう恥ずかしさがあって、
缶ペンを捨てると同時に、
家にたくさんあったファンシーグッズも
全部捨てました。
- ーー
- 全部、捨てた。
- メロ
- はい。捨てたあと、
なぜか、ずーっと忘れていました。
同時に、修学旅行先の定番である京都でも、
ファンシーな絵が描かれたグッズが
徐々に影を潜めはじめます。
一方でパロディグッズが全盛を極めていきました。
サザエさんとバカボンのパパを
無断で合体させた「サザエボン」とか、
清涼飲料水「なっちゃん」のパロディの
「おっちゃん」とか、「アムロ波平」とか。
京都と関係ないものが大量に売られはじめ、
おみやげコーナーが変わっていったんです。
- ーー
- ああ、はい。
おっしゃっている現象、わかります。
- メロ
- 自分が捨て、観光地からも消え、
私はその存在を完全に忘れていました。
そして約20年後の2010年に、突然再会したんです。
フリーマーケットで、あるキーホルダーを見つけて、
「懐かしい。こういうファンシーなキーホルダー、
昔、ものすごく好きだったな」
そう思って、買って帰りました。
- メロ
- そのとき、同時に
「そういえば、なぜ忘れていたんだろう」と思いました。
ちなみに私は20歳ごろから10年間ほど、
80年代のタレントグッズが好きで集めていたんです。
『1980年大百科』などの
80年代のカルチャーの本もよく読んでいました。
そういう80年代を追いかけていた10年間にも、
過去にたくさん持っていた
ファンシーなお土産のことは
一度も思い出さなかった。
なんでだろう、と考えていて、わかったんです。
つまり、これらのグッズが、
一切言及されていなかったんだと。
- ーー
- 誰も話題にしていなかった。
- メロ
- はい。
そしてこのキーホルダーを見つけた2010年は、
きゃりーぱみゅぱみゅさんがブレイクしたり、
クリィミーマミがアパレルとコラボしたりと、
80年代ファンシーがリバイバルされつつあって、
こういうグッズを集めたら、
当時の若い世代に受けるかな、と思いました。
とはいえ、さすがに誰かが先に集めているはずだと思い、
ネットで調べようとしたんですけど、
検索ワードがわからなかった。
検索窓の前で「この名前は何なんだ」と。
「サンリオ風」とか「かわいいおみやげ」とか
いろんなワードで検索したんですけど、
どうも出てこない。
それで、怖くなりました。
- ーー
- 怖くなった?
- メロ
- あれほど長く世間に存在し、
受け入れられた時代があったのに、
今、こんなにネットで言及されていないものがあるのかと。
歴史の中に確かに存在したものが忘れ去られている。
そのことに怖くなって、
これは誰かがちゃんとやらないとまずい、
この文化を残さないといけない、
そう思って自分が集めることにしました。
- ーー
- どうやって集めはじめたんですか?
- メロ
- 最初はフリーマーケットです。
週末ごとに行って、10円なら買う、
100円、200円なら高いから買わない、
という気軽なノリで集めはじめました。
当時、コレクターの先輩からは、
「早く言え、こういうのを集めている、って
宣言した者勝ちなんだから、早く言え」
と言われ続けていました。
私としては、まだ全体像も見えない状況で発表して
お金の力で全国を回る人が現れたら、
すぐ抜かれちゃうかも、と思って、
内緒にしていたんです。
その人がちゃんと文化を残す形で動いてくれるなら
安心なのですが、それもわからないので。
- ーー
- なるほど。
- メロ
- でも2014年に『ファンシーメイト』という本が出て、
そこでコレクションについて書くことになり、
結局は公表しました。
そのとき、そもそもの問題だった
これらのグッズを総称する
名前をつけようということになって、
「ファンシー絵みやげ」という名前をつけました。
ファンシーショップで売られていたような商品群に
平面イラストのキャラクター(絵)をプリントした
観光地みやげ、という分類です。
公表した以上、
これはライバルが増えるに違いないと思って、
それまでは観光地にも行かず
近場で気軽に集めていたんですけど、
そこから日本中を回るようになって、
一気にコレクションが増えました。
- ーー
- 今、何個くらい集まったんですか?
- メロ
- 2014年の段階では
500個くらいしか持っていませんでした。
そこから全国を回りはじめ、
5年経って一気に1万7000種類になりました。
- ーー
- 1万7000種類!
- メロ
- でも、誰か追いかけてくるだろうなと思ったら、
誰も後ろを追いかけてこなかった。
ライバル出現せず。
- ーー
- 誰も真似しなかった。
- メロ
- 公表するまで、ずっと孤独に集め続けてきました。
集めているうちに、
1つ1つに当時の若者文化が反映されていたり、
当時の最新技術が用いられていたり、
あまりに民俗学的な資料として
価値が高いことに気づきました。
そこで集められる限り集めて、
体系化することにしました。
他にやりたい人がいるなら、
その人に譲ってもいいぐらいだったんですけど、
たぶんこんなに面倒くさいこと
誰もやってくれないだろうし、
これは気づいた人の責任だから、
ゴールまで持っていかないといけない。
私がやらなきゃいけないんだ、と思ったんです。
(つづきます)
2019-12-26-THU
-
年末年始ファンシー企画!
山下メロさんが鑑定します。
年末年始、大掃除したり帰省したりする方も
いらっしゃるかと思います。
‥‥それはつまり!「ファンシー絵みやげ」を
発掘する可能性があるということです。
もしご自宅やご実家からそれらしきものを見つけた、
という方は、ぜひ写真に撮ってお送りください。
お写真をメロさんが見て、ファンシー度や
レア度などの観点から鑑定します。
メロさんの心をぐっと掴んだ1名様には
「山下メロ賞」としてメロさん所有の
「ファンシー絵みやげ」を1つと
「ほぼ日グッズつめあわせ」をプレゼント。
発表は3月末までに「ほぼ日」上で、
鑑定中の様子とともに記事にて掲載します。<応募期間>
2019/12/26(木)から
2020/1/20(月)23:59まで
<送り先>
postman@1101.com「ファンシー絵みやげ」の写真をメールに添付し、
ハンドルネームを記入し、上記までお送りください。
件名は「ファンシー絵みやげ」でお願いします。また、Twitterでの応募も可能です。
ハッシュタグ #ファンシー鑑定
をつけて上記期間までにツイートしてください。※お送りいただいた全ての写真を鑑定できるわけではありません。予めご了承ください。
※「山下メロ賞」当選者には、こちらからご住所を伺うフォームをお送りいたします。
※いただいたお写真とハンドルネームは当企画にのみ使用いたします。=======
<2020年4月追記>
応募は終了しました。
2020年3月31日より、こちらの
山下メロさんのファンシー絵みやげ鑑定!
で鑑定を行いました