突然ですが、上のタイトルまわりの画像、
懐かしくないですか?
馴染みがない、という世代の方も、
ご家族が持っていませんでしたか?
1980~90年代に日本中の観光地で売られていた、
これらのファンシーな絵が施されたグッズに
「ファンシー絵みやげ」という名前をつけ、
全国で「保護」活動をしている
山下メロさんという方がいます。
ある日、メロさんが書いた1冊の本が
ほぼ日に届いたことをきっかけに、
社内でちょっとしたブームがおきました。
メロさんは、なぜ、こんな活動をしているんだろう。
ファンシーな世界が大好きな
ほぼ日・フジタが話をうかがってきました。

>山下メロさんのプロフィール

山下メロ(やましためろ)

ファンシー絵みやげ研究家。
1980年代・90年代の庶民風俗を研究。
特に観光地のファンシーイラストが描かれた
お土産雑貨=「ファンシー絵みやげ」を
収集・研究しており、
各種メディアで保護を訴えている。
所有するファンシー絵みやげは17000種を超える。

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第2回 歴史から消えていた。

ーー
「ファンシー絵みやげ」には、
当時の若者文化が反映されている
ということですけど、
メロさんの本を見ていて、確かに、と思いました。
「AB型のヒト、募集中!」と
書かれたキーホルダーや
「UOZA」と書かれた星座キーホルダーを見て、
当時『My Birthday』という占い雑誌が
女子の間で大人気でしたが、
そういう文化が反映されているのかな、と。
メロ
いいですねえ。
ちょうどその話になったので、
見ていただきたいものがあります。
(ポーチからキーホルダーを取り出す)
このキーホルダーなんですけど‥‥。

ーー
「片思いの彼をふりむかせるおまじない」。
メロ
このキーホルダーを触っていたら、
本体がずれたんです。
あれっ動くのかな、と思って触っていたら、
スッとスライドして、
中に、こんな呪文が‥‥。

ーー
‥‥。
メロ
何の説明もなくこれが書いてあった。
この奇妙な文章を、
どうとらえたらいいんでしょう。
どういう場面で言えばいいのかも書かれていないし。
夜、部屋で言えばいいんでしょうか。
考えこんでしまいます。

ーー
これは、ちょっと、かなりすごいです。
メロ
この呪文、見る人が見たら、
デタラメではなく、
意味があるのかもしれないので、
反応が難しいものでもあります。
ーー
わかる方がいたら、
ぜひ教えてほしいですね。
メロ
ほかにもあります。
ポーチを出したついでに、いくつか。

ーー
ああ‥‥1つ1つにぐっときます。
メロさんの本では
「ローマ字日本語でセリフが書かれている」とか、
「丸文字」とか、
「目と鼻が顔の下に小さく集まっている」とか、
「ファンシー絵みやげ」の定義が
細かく定められていますね。
こういうイラストって
全部テイストが似通っている印象があるのですが、
全国のイラストレーターのみなさんが
このようなタッチを描けたんですか?
それとも描ける人が限られていて、
少数精鋭で、作られていたんでしょうか。
メロ
基本的にはイラストレーターの方が
たくさんいらっしゃって、
みなさん所属はバラバラです。
全国のおみやげを一手に引き受けている
東京や長野の会社もありましたし、
その地域ごとにメーカーさんもありました。
どこかのメーカーが開発した新しい描き方を
「今これが流行っている」ということで
誰かが真似をして、
真似が真似を呼んで、
大抵のイラストが結果的に
似通っている、ということなのです。
ーー
その方たちは、
今もイラストを描いているのでしょうか。
メロ
描いてらっしゃるかもしれません。
ただ、本人が名乗り出ないという問題があります。
たまに名乗り出てくださる場合でも、
表立ってではなく、
こっそりDMで「実は私です」と
連絡が来ることが多いです。
ーー
控えめな方が多いんですね。
メロ
そういう理由だけではないんです。
当時、美大などを出た方が、
イラストが描けるということで
この世界に入るんですけど、
自分の好きな絵を描くというよりは、
「これが売れ筋なので、これに似せて描いて」
と言われて描いていた方もいるそうです。
つまり名前の出ない仕事で、
自分の作風ではないものを描いている。
なので、中には「忘れたい過去」になっている
ケースもあるようです。
ーー
そんな。
「これ描いたんだよ」と堂々と
言えない方がいらっしゃるなんて。
私は大好きです、このテイスト。
昔も今も、気持ちがあかるくなります。
メロ
特に、自分が本にしたりテレビで喋ったりする前は、
ネットでも言及されていない存在だったので、
余計に言いづらかったと思うんです。
だから今は多少言いやすく
なってくれているといいなと。
ーー
メロさんが発掘しなければ、
歴史の中で消えていってたかもしれないんですね。
メロ
あり得たと思います。
結局そのときはネットに全然情報がなかった。
名前もなくて観光地からも消えかかっていたし、
各家庭からも捨てられ続けていました。
かなりの資料が散逸していたでしょう。
自分のほかに活動する人が現れれば別ですけど、
そうじゃなかったら、消えていたと思います。
ーー
メロさんの研究室には、
それらがたくさんある、ということで。
ぜひ、それを見せていただけますでしょうか。
メロ
はい。では行きましょうか。

持参したファンシーグッズの
鑑定もしていただきました。 持参したファンシーグッズの 鑑定もしていただきました。

ーー
(歩きながら)
研究室は自宅とは別なんですか?
メロ
いえ、自宅の一角が研究室です。
地方に調査活動へ行って、帰ってきて、
保護してきたものを置いて、
またすぐ出かけたりするので、
永遠に整理中、といった状態で‥‥。

トレーナーは「マザーグースの森」の
moumouちゃん。
トレーナーは「マザーグースの森」の moumouちゃん。

ーー
毎月いくらぐらい
「保護」に使われているんですか?
メロ
‥‥考えたくないです(笑)。
交通費・宿泊費が一番かかってます。
お金も時間もたくさんかけて行って、
収穫ゼロのときも多々あります。
ーー
うわあ‥‥。
メロ
でもそれも調査なので。
ただ、全国を塗りつぶしていけば終わるかと思えば、
1回目行って見つからなかったものが、
2回目行くとあったりする。
「え? 前はないって言ってたじゃないですか」
とお店の人に言うと、
「あなたが来た後、何となく頭のすみっこにあって、
そういえば倉庫のあそこに置いてたわって
思い出したの」と。
自分が行って、質問したことがきっかけで、
お店の人の記憶の引き出しが開くようです。
先日も、神社の参道にあるお店で
「そんなのありません」と冷たく言われて
店を後にして神社へ、
帰りにまた同じ参道を通ると、
ファンシー絵みやげが店頭に並んでたんですよ。
「さっきこんなの並んでなかったじゃないですか」
と言ったら、
「あなたに聞かれた後、そういえば裏に
しまってたことを思い出したから並べた」と‥‥。
ーー
(笑)
掘り起こしていますね。
メロ
私も、
「そんな、並べられたら
他の人が買っちゃうかもしれないじゃないですか。
何なんですか」
なんて言って。
それからは「もし見つかったら教えてください」と言って
連絡先を置いてくるようにしています。
ーー
全国の、土産店が密集しているような観光地とか、
ドライブインとか、
そういうところを回っているんですか?
メロ
売店が一軒しかなくても行ってます。
ーー
え? そんな感じで回っているんですか?
メロ
そこにあったらどうするんですか。
その一軒に。
ーー
確かに‥‥。

全国を回って保護活動するメロさん。
新潟県の粟島にて。 全国を回って保護活動するメロさん。 新潟県の粟島にて。

本州最南端の土産店にて。 本州最南端の土産店にて。

雪の日も、もちろん活動。
宮城県の鳴子温泉にて。 雪の日も、もちろん活動。 宮城県の鳴子温泉にて。

メロ
行ったら売店がなかったとか、定休日だったとか、
そういうことはしょっちゅうあります。
年に数日しか開かない店もありました。
何回行っても閉まっているから、
廃業されたのかと思い込んでいたのですが、
念のため周囲の人に聞き込みをしたら、
「その店は正月だけ開いている」と。
あと、お店がなくなるスピードが早すぎるんです。
一度調査をした土産店に数週間後に行くと、
すでに店をやめていたり。
一生かけてゆっくり集めようなんて、
とても言っていられない状況なのです。
全国はほとんど回り終えました。
2周目、3周目しているエリアもあります。
ーー
全国を2、3周‥‥。
ちなみにこういう活動をされる前は、
どんなお仕事をされていたんですか?
メロ
会社員です。
ーー
会社員!
メロ
活動に専念するために辞めました。
こんなことをしていても
お金にはならないと思ったんですけど、
とりあえずは貯金を崩して、
足りなくなったらどんな仕事でもすればいい、と。
文化を残すためなら大したことじゃないなと思いました。
ーー
「気づいちゃった責任」で。
メロ
そうです。

(つづきます)

2019-12-27-FRI

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  • 年末年始ファンシー企画!

    山下メロさんが鑑定します。

    年末年始、大掃除したり帰省したりする方も
    いらっしゃるかと思います。
    ‥‥それはつまり!「ファンシー絵みやげ」を
    発掘する可能性があるということです。
    もしご自宅やご実家からそれらしきものを見つけた
    という方は、ぜひ写真に撮ってお送りください。
    お写真をメロさんが見て、ファンシー度や
    レア度などの観点から鑑定します。

    メロさんの心をぐっと掴んだ1名様には
    「山下メロ賞」としてメロさん所有の
    「ファンシー絵みやげ」を1つと
    「ほぼ日グッズつめあわせ」をプレゼント。
    発表は3月末までに「ほぼ日」上で、
    鑑定中の様子とともに記事にて
    掲載します。

    <応募期間>
    2019/12/26(木)から
    2020/1/20(月)23:59まで
    <送り先>
    postman@1101.com

    「ファンシー絵みやげ」の写真をメールに添付し、
    ハンドルネームを記入し、上記までお送りください。
    件名は「ファンシー絵みやげ」でお願いします。

    また、Twitterでの応募も可能です。
    ハッシュタグ #ファンシー鑑定
    をつけて上記期間までにツイートしてください。

    ※お送りいただいた全ての写真を鑑定できるわけではありません。予めご了承ください。
    ※「山下メロ賞」当選者には、こちらからご住所を伺うフォームをお送りいたします。
    ※いただいたお写真とハンドルネームは当企画にのみ使用いたします。

    =======

    <2020年4月追記>
    応募は終了しました。
    2020年3月31日より、こちらの
    山下メロさんのファンシー絵みやげ鑑定!
    で鑑定を行いました

  • ファンシー絵みやげ大百科/山下メロ著
    (イースト・プレス)

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