突然ですが、上のタイトルまわりの画像、
懐かしくないですか?
馴染みがない、という世代の方も、
ご家族が持っていませんでしたか?
1980~90年代に日本中の観光地で売られていた、
これらのファンシーな絵が施されたグッズに
「ファンシー絵みやげ」という名前をつけ、
全国で「保護」活動をしている
山下メロさんという方がいます。
ある日、メロさんが書いた1冊の本が
ほぼ日に届いたことをきっかけに、
社内でちょっとしたブームがおきました。
メロさんは、なぜ、こんな活動をしているんだろう。
ファンシーな世界が大好きな
ほぼ日・フジタが話をうかがってきました。
- ーー
- 「ファンシー絵みやげ」には、
当時の若者文化が反映されている
ということですけど、
メロさんの本を見ていて、確かに、と思いました。
「AB型のヒト、募集中!」と
書かれたキーホルダーや
「UOZA」と書かれた星座キーホルダーを見て、
当時『My Birthday』という占い雑誌が
女子の間で大人気でしたが、
そういう文化が反映されているのかな、と。
- メロ
- いいですねえ。
ちょうどその話になったので、
見ていただきたいものがあります。
(ポーチからキーホルダーを取り出す)
このキーホルダーなんですけど‥‥。
- ーー
- 「片思いの彼をふりむかせるおまじない」。
- メロ
- このキーホルダーを触っていたら、
本体がずれたんです。
あれっ動くのかな、と思って触っていたら、
スッとスライドして、
中に、こんな呪文が‥‥。
- ーー
- ‥‥。
- メロ
- 何の説明もなくこれが書いてあった。
この奇妙な文章を、
どうとらえたらいいんでしょう。
どういう場面で言えばいいのかも書かれていないし。
夜、部屋で言えばいいんでしょうか。
考えこんでしまいます。
- ーー
- これは、ちょっと、かなりすごいです。
- メロ
- この呪文、見る人が見たら、
デタラメではなく、
意味があるのかもしれないので、
反応が難しいものでもあります。
- ーー
- わかる方がいたら、
ぜひ教えてほしいですね。
- メロ
- ほかにもあります。
ポーチを出したついでに、いくつか。
- ーー
- ああ‥‥1つ1つにぐっときます。
メロさんの本では
「ローマ字日本語でセリフが書かれている」とか、
「丸文字」とか、
「目と鼻が顔の下に小さく集まっている」とか、
「ファンシー絵みやげ」の定義が
細かく定められていますね。
こういうイラストって
全部テイストが似通っている印象があるのですが、
全国のイラストレーターのみなさんが
このようなタッチを描けたんですか?
それとも描ける人が限られていて、
少数精鋭で、作られていたんでしょうか。
- メロ
- 基本的にはイラストレーターの方が
たくさんいらっしゃって、
みなさん所属はバラバラです。
全国のおみやげを一手に引き受けている
東京や長野の会社もありましたし、
その地域ごとにメーカーさんもありました。
どこかのメーカーが開発した新しい描き方を
「今これが流行っている」ということで
誰かが真似をして、
真似が真似を呼んで、
大抵のイラストが結果的に
似通っている、ということなのです。
- ーー
- その方たちは、
今もイラストを描いているのでしょうか。
- メロ
- 描いてらっしゃるかもしれません。
ただ、本人が名乗り出ないという問題があります。
たまに名乗り出てくださる場合でも、
表立ってではなく、
こっそりDMで「実は私です」と
連絡が来ることが多いです。
- ーー
- 控えめな方が多いんですね。
- メロ
- そういう理由だけではないんです。
当時、美大などを出た方が、
イラストが描けるということで
この世界に入るんですけど、
自分の好きな絵を描くというよりは、
「これが売れ筋なので、これに似せて描いて」
と言われて描いていた方もいるそうです。
つまり名前の出ない仕事で、
自分の作風ではないものを描いている。
なので、中には「忘れたい過去」になっている
ケースもあるようです。
- ーー
- そんな。
「これ描いたんだよ」と堂々と
言えない方がいらっしゃるなんて。
私は大好きです、このテイスト。
昔も今も、気持ちがあかるくなります。
- メロ
- 特に、自分が本にしたりテレビで喋ったりする前は、
ネットでも言及されていない存在だったので、
余計に言いづらかったと思うんです。
だから今は多少言いやすく
なってくれているといいなと。
- ーー
- メロさんが発掘しなければ、
歴史の中で消えていってたかもしれないんですね。
- メロ
- あり得たと思います。
結局そのときはネットに全然情報がなかった。
名前もなくて観光地からも消えかかっていたし、
各家庭からも捨てられ続けていました。
かなりの資料が散逸していたでしょう。
自分のほかに活動する人が現れれば別ですけど、
そうじゃなかったら、消えていたと思います。
- ーー
- メロさんの研究室には、
それらがたくさんある、ということで。
ぜひ、それを見せていただけますでしょうか。
- メロ
- はい。では行きましょうか。
- ーー
- (歩きながら)
研究室は自宅とは別なんですか?
- メロ
- いえ、自宅の一角が研究室です。
地方に調査活動へ行って、帰ってきて、
保護してきたものを置いて、
またすぐ出かけたりするので、
永遠に整理中、といった状態で‥‥。
- ーー
- 毎月いくらぐらい
「保護」に使われているんですか?
- メロ
- ‥‥考えたくないです(笑)。
交通費・宿泊費が一番かかってます。
お金も時間もたくさんかけて行って、
収穫ゼロのときも多々あります。
- ーー
- うわあ‥‥。
- メロ
- でもそれも調査なので。
ただ、全国を塗りつぶしていけば終わるかと思えば、
1回目行って見つからなかったものが、
2回目行くとあったりする。
「え? 前はないって言ってたじゃないですか」
とお店の人に言うと、
「あなたが来た後、何となく頭のすみっこにあって、
そういえば倉庫のあそこに置いてたわって
思い出したの」と。
自分が行って、質問したことがきっかけで、
お店の人の記憶の引き出しが開くようです。
先日も、神社の参道にあるお店で
「そんなのありません」と冷たく言われて
店を後にして神社へ、
帰りにまた同じ参道を通ると、
ファンシー絵みやげが店頭に並んでたんですよ。
「さっきこんなの並んでなかったじゃないですか」
と言ったら、
「あなたに聞かれた後、そういえば裏に
しまってたことを思い出したから並べた」と‥‥。
- ーー
- (笑)
掘り起こしていますね。
- メロ
- 私も、
「そんな、並べられたら
他の人が買っちゃうかもしれないじゃないですか。
何なんですか」
なんて言って。
それからは「もし見つかったら教えてください」と言って
連絡先を置いてくるようにしています。
- ーー
- 全国の、土産店が密集しているような観光地とか、
ドライブインとか、
そういうところを回っているんですか?
- メロ
- 売店が一軒しかなくても行ってます。
- ーー
- え? そんな感じで回っているんですか?
- メロ
- そこにあったらどうするんですか。
その一軒に。
- ーー
- 確かに‥‥。
- メロ
- 行ったら売店がなかったとか、定休日だったとか、
そういうことはしょっちゅうあります。
年に数日しか開かない店もありました。
何回行っても閉まっているから、
廃業されたのかと思い込んでいたのですが、
念のため周囲の人に聞き込みをしたら、
「その店は正月だけ開いている」と。
あと、お店がなくなるスピードが早すぎるんです。
一度調査をした土産店に数週間後に行くと、
すでに店をやめていたり。
一生かけてゆっくり集めようなんて、
とても言っていられない状況なのです。
全国はほとんど回り終えました。
2周目、3周目しているエリアもあります。
- ーー
- 全国を2、3周‥‥。
ちなみにこういう活動をされる前は、
どんなお仕事をされていたんですか?
- メロ
- 会社員です。
- ーー
- 会社員!
- メロ
- 活動に専念するために辞めました。
こんなことをしていても
お金にはならないと思ったんですけど、
とりあえずは貯金を崩して、
足りなくなったらどんな仕事でもすればいい、と。
文化を残すためなら大したことじゃないなと思いました。
- ーー
- 「気づいちゃった責任」で。
- メロ
- そうです。
(つづきます)
2019-12-27-FRI
-
年末年始ファンシー企画!
山下メロさんが鑑定します。
年末年始、大掃除したり帰省したりする方も
いらっしゃるかと思います。
‥‥それはつまり!「ファンシー絵みやげ」を
発掘する可能性があるということです。
もしご自宅やご実家からそれらしきものを見つけた、
という方は、ぜひ写真に撮ってお送りください。
お写真をメロさんが見て、ファンシー度や
レア度などの観点から鑑定します。
メロさんの心をぐっと掴んだ1名様には
「山下メロ賞」としてメロさん所有の
「ファンシー絵みやげ」を1つと
「ほぼ日グッズつめあわせ」をプレゼント。
発表は3月末までに「ほぼ日」上で、
鑑定中の様子とともに記事にて掲載します。<応募期間>
2019/12/26(木)から
2020/1/20(月)23:59まで
<送り先>
postman@1101.com「ファンシー絵みやげ」の写真をメールに添付し、
ハンドルネームを記入し、上記までお送りください。
件名は「ファンシー絵みやげ」でお願いします。また、Twitterでの応募も可能です。
ハッシュタグ #ファンシー鑑定
をつけて上記期間までにツイートしてください。※お送りいただいた全ての写真を鑑定できるわけではありません。予めご了承ください。
※「山下メロ賞」当選者には、こちらからご住所を伺うフォームをお送りいたします。
※いただいたお写真とハンドルネームは当企画にのみ使用いたします。=======
<2020年4月追記>
応募は終了しました。
2020年3月31日より、こちらの
山下メロさんのファンシー絵みやげ鑑定!
で鑑定を行いました