突然ですが、上のタイトルまわりの画像、
懐かしくないですか?
馴染みがない、という世代の方も、
ご家族が持っていませんでしたか?
1980~90年代に日本中の観光地で売られていた、
これらのファンシーな絵が施されたグッズに
「ファンシー絵みやげ」という名前をつけ、
全国で「保護」活動をしている
山下メロさんという方がいます。
ある日、メロさんが書いた1冊の本が
ほぼ日に届いたことをきっかけに、
社内でちょっとしたブームがおきました。
メロさんは、なぜ、こんな活動をしているんだろう。
ファンシーな世界が大好きな
ほぼ日・フジタが話をうかがってきました。

>山下メロさんのプロフィール

山下メロ(やましためろ)

ファンシー絵みやげ研究家。
1980年代・90年代の庶民風俗を研究。
特に観光地のファンシーイラストが描かれた
お土産雑貨=「ファンシー絵みやげ」を
収集・研究しており、
各種メディアで保護を訴えている。
所有するファンシー絵みやげは17000種を超える。

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第3回 はじまりはキツネ。

(研究室に到着しました)

メロ
どうぞ。整理が追いついてない状態ですけど。

ーー
おじゃまいたします。
ええと‥‥
ちょっと時空が‥‥
今が一体いつなのかわからなくなる空間ですね。

ーー
(我に返る)
すみません‥‥あまりの懐かしさに
仕事を忘れて見入ってしまいました。
あ、「ポケベル」と書かれた
段ボールがありますね。

メロ
それ中身は全部ポケベルです。
40個か50個入ってます。
ーー
たしか「88」がハートだったような‥‥。
メロ
さすが同世代。
はい、「88」はハートです。
ーー
家電もありますけど、
こういうものも集めているんですか?

メロ
家電もちょっと守らなきゃいけないジャンルなので。
ーー
これも「保護」対象なんですか。
メロ
昭和レトロのテレビや冷蔵庫は
珍重されているんですけど、
80年代のプラスチック製の量産品が
あまり価値が出てなくて、
バンバン捨てられているんです。
使えなくなったらポイ、みたいな感じ。
なので、これも保護しなきゃ、と。
個人で所有するのは大変なので
収集はあんまり進んでないですが。
ーー
あ、「所さん」!

「猫ニャンぼー」のむこうに、
所ジョージさんのマスコットを発見。 「猫ニャンぼー」のむこうに、 所ジョージさんのマスコットを発見。

ーー
所さんを見て思い出しました。
一時期、全国にタレントショップが
ありましたね。
メロ
お、出身はどちらですか?
ーー
私ですか? 香川県です。
メロ
ゴールドタワーというタワーがありますよね。
ーー
あります!
メロ
ゴールドタワーのキーホルダーもあるんですよ。
香川の人が連れて行ってくれたんですけど、
タワー周辺に、
タレントグッズを売っている店が
たくさんあったと言っていました。
瀬戸大橋が開通した1988年ごろ‥‥でしたっけ。
ーー
そうです。まさにそのころ、
ゴールドタワー周辺は、
四国の原宿と言ってもいいほど、
タレントショップがたくさんありました。
メロ
あ、ご存知ですか。
もうちょっと詳しく教えてもらえませんか?
どういうタレントショップがありましたか?
実は全国のタレントショップの
マップを作りたいと思っているんです。
ーー
ええと‥‥所ジョージさんのショップとか、
山田邦子さんのショップ、のりピーショップ、
ビートたけしさんの
カレーショップなどがありました。
とても賑わっていて、
私も休日によく行っていました。

メロ
勉強になります。
こういう情報が大事なんです。
原宿のタレントショップについては本が出ていますけど、
地方のどこにどんなショップがあったかという
情報はあまりないんです。
みんなの思い出の中にしかなくて、
でも聞くと、「あった、あった」と
思い出してもらえるので、おもしろいです。
ーー
思い出の中だけの共通体験。
インターネットにも
載っていないんでしょうか。
メロ
はい。ほとんど誰も書いていないので、
地道に地元の人から聞くしか
情報を手に入れる手段がないんです。
これ、ゴールドタワーのキーホルダーです。
表は普通に渋めなデザインですけど、
裏にはちゃんとファンシーなキャラクターがいます。

ーー
えっと、裏は「3つのお願い」と書かれてますね。
「恋人が出来ますように。
お金が貯りますように。
病気にならないように。」
‥‥なんて勝手な。

メロ
(笑)
ーー
というか、どうして今パッと出せたんですか?
メロ
県別に分類しているので。
(キーホルダーを取り出し)
これは香川県の与島のものです。
かつて与島に存在した
フィッシャーマンズ・ワーフの跡地にも行きました。
地域の人が施設の前に一大おみやげ街を作っていたと聞いて
行ったんですけど、もうなくなっていました。
これは与島の名前が入ったもので
唯一所有しているキーホルダーです。

ーー
ここまで詳しいということは、
もしかして「ファンシー絵みやげ」のスタートも
わかっているんですか?
メロ
はい。「ファンシー絵みやげ」界の
はじめてのキャラクターは、
北海道のキツネです。
ーー
キツネ!
メロ
1979年ごろ、北海道で「North Fox in Hokkaido」
という文字とともに、
舌を出して泣いているキツネのイラストが生まれたんです。
業界では「ナキギツネ」と呼ばれているんですけど、
これがはじめてのキャラクターじゃないかな、と
仮説を立てまして。

ーー
なぜこれが最初のキャラクターだと
思ったんでしょうか。
メロ
まず、第一に他のファンシー絵みやげの
キツネに比べて、鼻が描かれていたり、
眉毛を描いてなかったり、
デフォルメ具合が洗練されていません。
ーー
なるほど。
メロ
そして、もっと重要なことがありまして、
パーツが他のファンシー絵みやげと違ったんです。

メロ
この右側の「ナキギツネ」のキーホルダーは
蛇腹っぽいチェーンが使われていますが、
普通の「ファンシー絵みやげ」では、
もっとねじれが起こりにくいチェーンが使われています。
左側のものも、チェーンが
普通の「ファンシー絵みやげ」とは違う。
どうも異質なので、
もしかしてこれは初期のものなのかな、と。
その仮説を言わずに北海道の土産店で
「最初のものってどれですか?」と聞いたら、
この「ナキギツネ」だと言われました。
ちょうど『キタキツネ物語』という動物映画が
テレビ放映されたころで、
時代も合っているみたいですし、
たぶん間違いないです。
ーー
なるほど。
このキーホルダーのキツネ、
確かに動物っぽさが残っていますね。
その後、メーカーさんが
ちょっとずつ変化をつけてデフォルメして、
どんどん広まっていったんでしょうか。
メロ
そうですね。
最初は、ただ子ども向けでかわいいものを作ろうと、
そんなに深く考えずに作ったものが
売れたんだと思うんです。
その後いろんな漫画の要素などが入ってきて
かなり洗練されていきました。
目が点になり、ヒゲも省略され、
鼻もとがらせなくなりました。
鼻を横っちょにつけたり、
口を下の輪郭にはみ出るように描いたり。
あとだいたいキツネの尻尾って
筆状に描いて途中から白くなるという描き方を
するんですけど、極端なものになると、
キツネなのにしっぽが丸っこいんです。
キツネのイラストは、
当時のアイディアが詰まった最たる例です。

初期の「ナキギツネ」。
しっぽがまだ長く、鼻もとがっている。 初期の「ナキギツネ」。 しっぽがまだ長く、鼻もとがっている。

よりかわいくデフォルメが進んだキツネ。
足が完全にとけていて、しっぽも丸い。
「これは革新的なキツネの描き方です」とメロさん。
よりかわいくデフォルメが進んだキツネ。 足が完全にとけていて、しっぽも丸い。 「これは革新的なキツネの描き方です」とメロさん。

ーー
ファンシーグッズの中に、
キツネのイラストをよく見かけますけど、
はじまりがキツネだった、
という理由があったんですね。
メロ
はい。そもそもキツネって
道などに出てこないから見かけないだけで、
実は日本全国の山に分布しています。
なので、自然が多い観光地では
キャラクターとして使いやすかったんです。
ーー
え、そうなんですか。
全国にいるのはタヌキだけかと思っていました。
メロ
ただ四国は、昔はキツネが少なくて、
2000年代になってキツネが増えていったようです。
瀬戸大橋を渡ったのか、
どういうルートで四国に来たのかわからないのですが、
四国は最近キツネの棲息域が
広がっているエリアです。
ーー
キツネだけでもこれだけ語れる。
すごいです。

(つづきます)

2019-12-28-SAT

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  • 年末年始ファンシー企画!

    山下メロさんが鑑定します。

    年末年始、大掃除したり帰省したりする方も
    いらっしゃるかと思います。
    ‥‥それはつまり!「ファンシー絵みやげ」を
    発掘する可能性があるということです。
    もしご自宅やご実家からそれらしきものを見つけた
    という方は、ぜひ写真に撮ってお送りください。
    お写真をメロさんが見て、ファンシー度や
    レア度などの観点から鑑定します。

    メロさんの心をぐっと掴んだ1名様には
    「山下メロ賞」としてメロさん所有の
    「ファンシー絵みやげ」を1つと
    「ほぼ日グッズつめあわせ」をプレゼント。
    発表は3月末までに「ほぼ日」上で、
    鑑定中の様子とともに記事にて
    掲載します。

    <応募期間>
    2019/12/26(木)から
    2020/1/20(月)23:59まで
    <送り先>
    postman@1101.com

    「ファンシー絵みやげ」の写真をメールに添付し、
    ハンドルネームを記入し、上記までお送りください。
    件名は「ファンシー絵みやげ」でお願いします。

    また、Twitterでの応募も可能です。
    ハッシュタグ #ファンシー鑑定
    をつけて上記期間までにツイートしてください。

    ※お送りいただいた全ての写真を鑑定できるわけではありません。予めご了承ください。
    ※「山下メロ賞」当選者には、こちらからご住所を伺うフォームをお送りいたします。
    ※いただいたお写真とハンドルネームは当企画にのみ使用いたします。

    =======

    <2020年4月追記>
    応募は終了しました。
    2020年3月31日より、こちらの
    山下メロさんのファンシー絵みやげ鑑定!
    で鑑定を行いました

  • ファンシー絵みやげ大百科/山下メロ著
    (イースト・プレス)

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