『マリオ』や『ゼルダ』や『ピクミン』をつくり、
世界中で尊敬されているゲームクリエイター‥‥
と書くと、正しいんですけど、なんだかちょっと
宮本茂さんのことを言い切れてない気がします。
クリエイティブでアイディアにあふれているけど、
どこかでふつうの私たちと地続きな人、
任天堂の宮本茂さんが久々にほぼ日に登場です! 
糸井重里とはずいぶん古くからおつき合いがあり、
いまもときどき会って話す関係なんですが、
人前で話すことはほとんどないんです。
今回は「ほぼ日の學校」の収録も兼ねて、
ほぼ日の乗組員の前でたっぷり話してもらいました。
ゲームづくりから組織論、貴重な思い出話まで、
最後までずっとおもしろい対談でした。
え? 宮本さんがつけた仮のタイトルが、
『なにもできないからプロデューサーになった』? 
そんなわけないでしょう、宮本さん!

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第12回

ふつうの人たちで違うことを

糸井
「大ヒットを飛ばしてやれ!」
っていう気持ちがつねにあると、
いつかその芽が見つかる。
この考え方はすごくいいですね。
よその真似なんかしてたら、
ホームランは打てないですものね。
宮本
そうなんです。
あと、「ホームラン打とう!」って言ってると、
本来は打つタイプじゃない人まで、
ホームランを打つ話をしはじめるじゃないですか。
糸井
うん、あるある(笑)。
宮本
だから、まずは、みんなに、
ホームラン打ちそうなことしてほしいですよ。
それでもなかなか当たらないし、
まあ、当たっても飛ばないわけですから。
糸井
(聞いている乗組員たちに)
‥‥このモードの宮本さんはね、厳しいんだよ。
一同
(笑)
糸井
ファミコンのころから
宮本さんといっしょにやってきた、
ローリング・ストーンズ的な人たちは、
「ホームランを打とう」みたいな考え方は
たぶん、一致してるんでしょうね。
手塚(卓志)さんとか、中郷(俊彦)さんとか。
宮本
ああ、そうですね。
手塚と中郷のふたりはね、
なんか、現場がえらいことになってるのが
大好きなみたいで、そういうときほど、
「もうー、えらいことですわぁ」って
ニコニコしてるんですよ。
一同
(笑)
宮本
「もう、あれとあれがたいへんで」とか。
糸井
わかる(笑)。

宮本
で、「えらいこと」になってるのに、
ぜんぜん悲壮感がないのが
ぼくらのチームの特長で。
それができると、ラクなんですよね。
「えらいこと」をたのしもうと思ってると、
「ほんならこうしたら?」っていう話になって、
だいたい片づいていくから。
糸井
つまり、愚痴るにしても相談するにしても
ちゃんと話し合うにしても、
遠慮がないわけですよね。
宮本
遠慮、ないですね。
「バレたらどうしよう?」みたいなこととか、
ぜんぜん思ってないですし。
糸井
いまさら誰かに
バカって思われてもかまわないし。
宮本
もう、ぜんぜんかまわないです(笑)。
みんなそうです。
糸井
そのあたりが、
初期からいる人たちの特長というか。
宮本
そうですね。
だから、たぶん、ぼくひとりが中心でやってたら、
絶対生まれなかっただろうなというものが、
任天堂のなかにはたくさんあるんですよ。
あのメンバーが集まって、
いっしょにバカがやれたから、
ぼくもラクだったんですよね。
糸井
でも、なんというか、ひとりひとりは、
ふつうの人たちですよね、みなさん。
宮本
みんなふつうですよ、ちゃんとしてます(笑)。
それは、古い人たちも、若い人たちも。
糸井
ねぇ。
宮本
はい、ふつうです、ほんとうに。
みんな礼儀正しいし(笑)。
そういう、ふつうの人たちで、
人と違うことをやろう、というのがいいんです。
糸井
それは任天堂っぽいですね。
宮本
はい、うちは、大会議室に
「独創」って書いてありますから。
糸井
いいですね(笑)。
‥‥さて、たくさん話して、
しっかりと時間が経ってきました。
宮本
はい(笑)。

糸井
あの、ちょっとおおげさですけど、
ぼくは生きてるうちに
人前で宮本さんとしゃべるのって、
そんなに何度もないなと思ってて。
正直、これが最後かなとも思ったですけど。
宮本
(笑)
糸井
でも、もう一回、やりませんか、どっかで。
もう一回あると思ったら、
なんか今日が終われるよう気がするんですよ。
今後、もうないと思うと、
いつまでもやりたくなるんで。
宮本
はい、わかりました(笑)。
糸井
おもしろかったです。
宮本
あの、これは今日の反省ですけど‥‥。
このあいだ友だちに、
「どこに出ても真面目な話ばっかりしてるね」
って言われて。
糸井
ははははは。
宮本
不真面目な話もしたいんですけど、
つい、ぼくって真面目な話に(笑)。
真面目なんですよね、根がね。
糸井
あ、それは、なんかわかります。
ぼくも、宮本さんと話すときは、
真面目な話になるんですよ。
比べるのもへんだけど、
岩田(聡)さんと話すときのほうが、
無駄話が多かったというか。
宮本
ああ(笑)。
糸井
たぶん、ぼくと宮本さんが目指すところに
近いものがあって、そこをやっぱり
往復したくなっちゃうんでしょうね。
それでいて、宮本さんがぼくとは
種類が違う人だっていうのも、いいんですよね。
宮本
似てるけど、タイプが違うので。
糸井
そうそうそう。
じゃあ、宮本さんの真面目じゃない話は、
次回のテーマにしましょうか。
宮本
そうしましょう(笑)。

糸井
というわけで、新春対談でした。
宮本
新春対談だったか(笑)。
糸井
そして‥‥なんか‥‥。
宮本
んん?
──
ええと、みなさん、今日はなんと
宮本さんの誕生日です!
糸井
そうそうそう。
一同
(拍手)
宮本
あ、すごい。
ええー、ありがとうございます!
糸井
え、ぼくは(笑)?
宮本
糸井さんは先週でしたよね。
一同
(笑)

(最後までお読みいただき、ありがとうございました!)

2024-01-12-FRI

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