コント、大喜利、脚本などなど、
さまざまな分野で活躍するバカリズムさんは
じつは『MOTHER2』が大好きで、
ほぼ日で発売された『MOTHER2』グッズを
ファンとしてふつうに買ったりしていたそうです。
そんなバカリズムさんと糸井重里が
『MOTHER2』発売30周年を記念して対談しました。
とはいえ、もちろんゲームの話だけじゃなく、
互いのものづくりについてもたっぷりと。
※このコンテンツは3ヵ月間限定の掲載です。
バカリズム
1995年「バカリズム」を結成。
2005年12月よりピン芸人として活動。
現在、TVレギュラー番組を中心に活動するかたわら、
定期的に単独ライブを行っており、
発売と同時に即完売となる人気を誇る。
他にも脚本、俳優など多方面で活動中。
- バカリズム
- ぼくが「都道府県の持ちかた」を思いついたのって、
地理がほんとに嫌いだったからなんですよね。
地図を見てても、もう、興味がないから、
あれを地面として見られなかったんですよ。
で、「石川県は持ちやすそうだな」とか、
そういう二次元の形でしかとらえられなくて。
- 糸井
- 興味がないっていうのは、
ある意味、その人のすごい資質ですよね。
興味がないと、違う見方しかできないから。
- バカリズム
- あ、そうですね。
- 糸井
- そういうのでいうと、ぼくは、
ちいさいころから夢でうなされる
ひとつの苦手なパターンがあって、
それは「むやみに大きいもの」を怖がる夢なんです。
なにが大きいのか、具体的な形はわかんない。
ピラミッドは大きいとか、アルプスは大きいとか、
そういうなにかじゃなくて、
大きいっていう概念が怖いんですよ。
- バカリズム
- 何かが大きいことが怖いんじゃなくて、
「大きさそのもの」が怖い。
- 糸井
- うん、「大きい」っていう概念が怖い。
だからいつも「大きい」について、
ぼくは不断に考えてるらしくて、逆にいうと、
ほかの人よりも、おもしろがってもいる。
みんなが思ってないときに、
「大きいなぁ」って気づいてたのしんでたり。
- バカリズム
- へぇーー。
- 糸井
- 『MOTHER2』の中にもその要素はあるんですよ。
後半に出てくる地底大陸がまずそうですよね。
あれは、とにかく、「大きい」を表現したかった。
- バカリズム
- ああ、地底大陸。
- 糸井
- あそこで「大きい」を表現したくて、
「大きい恐竜がどんどん出てくるんだよ」
ってぼくが言うと、スタッフの人たちが
「わかりました」ってつくってくるのが、
だいたい「大きい足」だったりするんだよ。
ゴジラの映画なんかもそうですけど、
ドン! と大きい足だけが出てくるとか。
窓の向こうに目だけが見えるとかね。
でも、それはぼくからすると、大きくない。
それで思いついたのが、
「自分を小さくできないか?」ってことで。
自分たちをすっごく小さくすれば、
相対的にまわりがすごく大きくなるから。
- バカリズム
- そうですよね、たとえばゴジラも
人間から見て大きいだけですもんね。
- 糸井
- そうそうそう。
だから、「大きい恐竜」じゃなくて、
「大きい」を表現したいわけだから、
ああいう見せ方になるんだよね。
そういう「ことばではいえるけど表現できない」
みたいなものがぼくは好きなんです。
- バカリズム
- あー、すごくおもしろい。
- 糸井
- こないだも、宇宙の星の数っていうのは、
地球上の砂浜の砂粒を全部足したよりも多い、
っていう話を聞いて、「はぁーー」って。
こう、はてしない感じがするんですよね。
- バカリズム
- それ、同じように感じてます。
ぼく、ちっちゃいころから宇宙のことを
あんまり考えないようにしてるんです。
なぜかというと、ぞっとするから。
「解決しない恐怖」が襲ってくるから。
- 糸井
- そうなんですよね。
すっごいわからないものなのに、
「宇宙ができたのは132億年前」って、
そこだけはっきりしてたりね。
- バカリズム
- なんでそんなにはっきりしてんだ、と。
- 糸井
- そうそうそう。
- バカリズム
- で、いまも、ここからさきも、
宇宙は続いていくし‥‥もう‥‥。
- 糸井
- 嫌ですよね。
- バカリズム
- 考えないようにしてます。
考えが追いつかないから、怖いんです。
- 糸井
- それはあらゆる物事にいえるんですよね。
概念としてある、ってこと自体が、
気持ち悪さとして残っているというか。
たとえば「1」って概念じゃないですか。
「2」とか「1」とか。
デジタルの信号では、やりとりできるけど、
でもほんとうに「1」ってどこにあるの?
って言われたらないじゃないですか。
- バカリズム
- はい。
- 糸井
- そういう気持ち悪さとぼくは毎日生きてる。
つまりきっと、傷ついてるんです、毎日。
- バカリズム
- そっか、自分の理解を超えるものに対する恐怖と
うっすらつき合ってるんですね。
- 糸井
- そう。だから、さっきの、
「地理が苦手」って聞いたときに、
あっ、苦手だからあれができたんだっていう。
- バカリズム
- ああ、そうですね。
- 糸井
- 得意な人ならもっと違うこと考えてるもんね。
- バカリズム
- そうですね、「都道府県を持つ」とかいう
発想にいかないですね、そもそもね。
- 糸井
- ですよね。だから、苦手とか、怖いとか、
気持ち悪いっていうのは大事な感性です。
- バカリズム
- 大事ですね。
- 糸井
- つくるものにも反映される。
「気持ち悪い」をつかって遊んだり、
「気持ち悪いでしょ?」って見せたり。
- バカリズム
- それは自分が気持ち悪いと思ってるものを
みんなにも共有してほしいってことですよね。
- 糸井
- そうですね。
つぶつぶとかプチプチを気持ち悪がる人って、
みんなに見せたがるじゃない? それだよね。
- バカリズム
- そうですね。
- 糸井
- そうすると「悲しい」とかも同じで、
「こういうの、俺、すごい悲しいんだよね」って、
みんなにも味わわせたりする。
で、そういう作品は、だいたいいいじゃない?
- バカリズム
- なんか、自分の中に、うまく言語化できない、
じわーん、となるものがあるんですよ。
なんていったらいいですかね‥‥
たとえば高速のサービスエリアとかの、
外のテラス席みたいななところで、
ひとりでソフトクリーム食べてる女性を見たとき、
なんか胸がギューッてなるんですよ。
- 糸井
- ああ、いいですね。
- バカリズム
- 本人はほんとにおいしそうに
ひとりでソフトクリームを食べてて、
そのすごく個人的な時間をたのしんでる感じがして、
なんか勝手にいろいろ想像して、
いい人だなあ、って思う、みたいな。
- 糸井
- なぜ、そういうこと思うんだろうね。
- バカリズム
- うーん‥‥なんか、あるんですよね。
勝手に、なんか。言語化できない。
- 糸井
- でも、いいじゃないですか。
そういうのって、
『MOTHER2』そのものじゃないですか。
- バカリズム
- そうかもしれない。
(つづきます)
2024-08-29-THU
-
『MOTHER2』のひみつ。
渋谷PARCO 8階 ほぼ日曜日
2024年8月1日(木)—9月8日(日)
11:00—20:00 19:30最終入場
入場料:1500円 ※小学生以下無料/会期中再入場可(事前予約制の日を除く)『MOTHER2』のひみつ。
サテライト展TOBICHI東京[入場無料]※終了しました
2024年8月1日(木)—8月18日(日)
※8月13日、14日、15日は休店
東京都千代田区神田錦町3丁目18 ほぼ日神田ビル 1F
梅田ロフト[入場無料]
2024年8月1日(木)—9月1日(日)
大阪府大阪市北区茶屋町16-7
梅田ロフト4階イベントスペース札幌PARCO[入場無料]
2024年8月8日(木)—9月1日(日)
北海道札幌市中央区南1条西3丁目3
札幌PARCO 7F 0% SAPPORO名古屋PARCO[入場無料]
2024年8月23日(金)—9月23日(月)
愛知県名古屋市中区栄3丁目29−1
名古屋PARCO 東館 B1F 0% NAGOYA©SHIGESATO ITOI / Nintendo