コント、大喜利、脚本などなど、
さまざまな分野で活躍するバカリズムさんは
じつは『MOTHER2』が大好きで、
ほぼ日で発売された『MOTHER2』グッズを
ファンとしてふつうに買ったりしていたそうです。
そんなバカリズムさんと糸井重里が
『MOTHER2』発売30周年を記念して対談しました。
とはいえ、もちろんゲームの話だけじゃなく、
互いのものづくりについてもたっぷりと。

※このコンテンツは3ヵ月間限定の掲載です。

>バカリズムさん プロフィール

バカリズム

1995年「バカリズム」を結成。
2005年12月よりピン芸人として活動。
現在、TVレギュラー番組を中心に活動するかたわら、
定期的に単独ライブを行っており、
発売と同時に即完売となる人気を誇る。
他にも脚本、俳優など多方面で活動中。

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第2回 どうでもいいこともふくめて

糸井
バカリズムさんは、
ひとりでつくっていて、不安はないですか?
バカリズム
いや、不安です(笑)。
だから、とりあえず書いてみて、
そのときのスタッフさんの反応で、
「あっ、大丈夫なんだ」って安心したり。
あと、ひとりでつくってると、
これは無理だなって、出すまえに
自分で勝手に下げちゃうことが多いんですよね。
糸井
あ、それはありそうだ。
バカリズム
もう山ほどありますね。
糸井
もったいない。
バカリズム
そうなんですよ、じつは。
コントとかでも、ボツにしたもの、
単体ではイマイチだったなって思うものを、
一緒にしてみたらめちゃくちゃよかった、
みたいなことがけっこうあるんです。
だから、自分でボツにしたものも、
データとしてはとっておくようにしていて。
糸井
それは、絶対大事だと思いますね。
一回、自分が忘れちゃったおかげで、
あとから思い出したときに
ちょっと違うものになったりとか、
そういうこともあるから。
バカリズム
はい、はい、ほんとに。
すごくわかります。
糸井
ぼくも、基本は、ひとり芸だったので、
バカリズムさんと似てるのかもしれないですね。
でも、ドラマの脚本なんかはチーム仕事でしょう?
それは、ずいぶん違いますか。
バカリズム
あの、脚本のときは、
監督さんもいて、プロデューサーさんもいて、
なんていうか、おもしろくなくても
みんなの責任になりますから(笑)。
糸井
ははははは。

バカリズム
自分のネタって、すべると自分だけが困るから。
だから、脚本は失敗しても
それを共有できるというか、
そういう意味では気がらくですね、
お笑いのネタつくるよりも。
糸井
そういう意味でいうと、
最近、思っていることがあって、
いわゆる名人と言われる人って、
「いいハズレ」をたくさん出すんですよね。
バカリズム
「いいハズレ」。
糸井
つまり、どんな名人だって、
ぜんぶ当たりっていうのは絶対ありえないわけで。
ハズレも平気で出すんだけど、
そのなかにいいハズレがたくさん混ざってる。
「あの人のハズレはそこそこおもしろい」
っていうのが名人なんじゃないかなと。
バカリズム
あー、なるほど、おもしろい。
それって、本人的には
ハズレだと思ってても、ってことですか。
糸井
そう。ハズレはハズレなんですよ。
本人的にもそう思ってるし、
お客さんにとっても当たりではない。
でも、そういうものを平気で、
ばんばんつくっちゃう。
落語の名人なんかでも、
「今日のあれはよかったねぇ!」っていうものと、
そうじゃないものがあって、
「流してたな」っていうのも、当然、ある。
でも、それがまたいいんだよね、っていう。
バカリズム
つまり、そういうのもひっくるめて、
いいんだよな、って。
糸井
そうそうそう。
バカリズム
『MOTHER2』って、そういうとこありますよね?
糸井
あーー(笑)、そうですね。
どうでもいいことがいっぱい入ってるものね。
ぜんぶに魂込めてるわけじゃないというか。
バカリズム
そういうところも含めて
ぼくはぜんぶを隅々まで楽しみましたけど。
糸井
どうでもいいところもたっぷりあるから、
ぜんぶをたのしめたんじゃないですか? 
本に余白がなくて活字が
びっしりあるのってやっぱりちょっと困るし、
ページをめくってもめくっても
ずっとおもしろい、っていうのもいいんだけど、
やっぱりちょっと安定させてくれないと。
ここ、平凡な展開だな、みたいなのは、
まったくないと困るんですよ。
バカリズム
はい、はい。
糸井
たとえば、宿屋に泊まったみたいなときに、
毎回毎回変化があると面倒なんですよね。
それよりは、ただ泊まっておやすみなさい、
みたいなのがふつうに流れているところに、
ちょっとだけ変化をつけるほうがおもしろい。
バカリズム
ああ、そっか、強弱をつけていくんですね。
糸井
そう考えてやってるわけじゃないんですけどね。
でも、バカリズムさんのつくるもののなかには、
ちょうどいい安定がすごくありますよね。
たとえば、なにかをどんどん羅列していく、
っていうパターンがあるじゃないですか。
それが仮に10個続くとしたら、
「このくらいのもあっていいだろう」っていうのを、
バカリズムさんはちゃんと入れてますよね。
バカリズム
あ、そうですね。多少自信があるやつと、
まあとりあえず数合わせで、
っていうのがあったりしますね。
で、ときどき、その数合わせのほうが
ウケたりすることもあって。
糸井
(笑)
バカリズム
ほんとに多いんですよ、そういうことが。
たとえばドラマの企画書を出すとき、
ぼくは不安なので、
だいたい5個ぐらい考えて出すんですよ。
で、そのなかで、3つぐらいは、
自分で見えてるんだけど、
残りの2つはまさに数合わせというか、
あんまり見えてなかったりするんですね。
まあ、ちゃんとサボらずに考えてきましたよ、
っていうのを見せるための2つというか。
でも、なんかそっちが選ばれるんですよ。
糸井
わかる、わかる(笑)。
バカリズム
えーっ、これでいいんですか? みたいな。
もっとこっちの方が、けっこうびっしり書いて、
その先の展開も決めてたりするんですけど? 
みたいな感じなんですけど、
「いや、こっちにしましょ」って。
だから、自分がそんなに力入れてないものの方が
客観的に見るといいって思われることが多い。
なんなんですかね、あれって。
糸井
やっぱり、力を入れると偏るんですよ。
自分の知ってる世界のところに
どうしても重心がいっちゃうんで、
みんながなんとなく感じてるおもしろさとか、
共通認識から離れちゃうんじゃないかな。
バカリズム
あー、そうなんですよね。
だからネタもほんとにそういうのがあって、
ここはまあそんなウケないだろうと
思ってるところが一番ウケたりとか、
一生懸命考えてつくったものよりも、
10分ぐらいで思いついて書いて、
ちょっと罪悪感があるくらいなものの方が
めちゃくちゃウケたりとか。
あの、ぼくの昔のネタで
「都道府県の持ちかた」
っていうのがあるんですけど。
糸井
はいはい、大好きですよ(笑)。
バカリズム
たんに47都道府県のかたちを、
持ちやすいか持ちづらいか、
持つとしたらどう持つか、
っていうことを言ってるだけなんですけど。
あれ、そんなにウケると思ってなかったんですよ。
みんな思うよね、くらいに思ってた。
糸井
思わないよ(笑)。
バカリズム
地図見たら一回ぐらいは思うよね、
ぐらいの感じだったから、
なんかちょっと申し訳ないというか、
ほんとにただの思いつきで、
展開があるわけでもないし。
糸井
あれは、展開、ないねぇ(笑)。
バカリズム
ただただ持つところを羅列してるだけですから。
「石川県は持ちやすい」とか。
それがあんなにウケて、本にもなって、
いまだにしっくりきてないんですよ。
糸井
そうなんだ(笑)。

(つづきます)

2024-08-28-WED

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  • 『MOTHER2』のひみつ。

     

    渋谷PARCO 8階 ほぼ日曜日
    2024年8月1日(木)—9月8日(日)
    11:00—20:00 19:30最終入場
    入場料:1500円 ※小学生以下無料/会期中再入場可(事前予約制の日を除く)

    >詳細はこちら

     

     

     

    『MOTHER2』のひみつ。
    サテライト展

     

    TOBICHI東京[入場無料]※終了しました
    2024年8月1日(木)—8月18日(日)
    ※8月13日、14日、15日は休店
    東京都千代田区神田錦町3丁目18 ほぼ日神田ビル 1F

     

    梅田ロフト[入場無料]
    2024年8月1日(木)—9月1日(日)
    大阪府大阪市北区茶屋町16-7
    梅田ロフト4階イベントスペース

     

    札幌PARCO[入場無料]
    2024年8月8日(木)—9月1日(日)
    北海道札幌市中央区南1条西3丁目3
    札幌PARCO 7F 0% SAPPORO

     

    名古屋PARCO[入場無料]
    2024年8月23日(金)—9月23日(月)
    愛知県名古屋市中区栄3丁目29−1
    名古屋PARCO 東館 B1F 0% NAGOYA

     

     

     

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