『MOTHER2 ギーグの逆襲』に登場する
「マニマニのあくま」は謎の多いアイテムである。
いや、アイテムというよりは敵、あるいは概念、
ひょっとしたらテーマと呼んでもいいかもしれない。
ピカピカと怪しげに輝くその黄金像は、
ネスたちの冒険を導くようにあちこちに出現する。
いったい「マニマニのあくま」とは、なんなのだろう?
『MOTHER2』に欠かすことのできないこの像を、
ほぼ日MOTHERプロジェクトで製作して展示したところ、
多くのファンが強い興味を示してくれた。
3月8日から受付をはじめる受注販売にさきがけて、
スペシャルな発売記念企画をお届けする。
糸井重里への特別インタビュー、
テーマはもちろん「マニマニのあくま」について。

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第2回 それを巡って物語が転がっていく。

──
さて、「マニマニのあくま」について
うかがっていきます。
糸井
はい(笑)。
──
『MOTHER2』は発売されたのが30年近く前ですから、
開発はもっと前のことになります。
曖昧になっている部分も多いかもしれませんが、
いま語れることを教えていただければと思います。
糸井
よろしくお願いします。

──
まず、最初に大きく聞いてしまおうと思います。
糸井さんのなかで、「マニマニのあくま」とは?
糸井
はい。まず、ちゃんと答えると、
ゲームのなかにある物語を、
構造として「味方と敵」という図式でとらえたとき、
「敵」のほうをシンボリックに
表現したもの、ですよね。
──
まずは、シンボルである。
糸井
大きなとらえかたとしては。
だって、物語って、ほんとうはそんなに
単純な図式にはならないじゃないですか。
スポーツだと巨人対阪神とか、
歴史でいえば織田軍対今川軍とか、
当てはめちゃうとわかりやすいけど、
物語ってそうはならないから。
たとえば、物語のなかに
光の戦士と闇の戦士がいるとして、
記号みたいにとらえる場合はわかりやすいけど、
「闇の戦士がどうして闇の側にいるんだろう?」
って考えた瞬間、単純な図式では
描けなくなってしまいますよね。
だから、「マニマニのあくま」は
それを描きやすいようにしたもの、かな。
──
なるほど。
糸井
「こうありたい」というふうに
正しい方向に向かっていく人に対して、
「そうはさせない」という
作用と反作用の関係があるわけで。
でも、それも「いい」と「悪い」だけでは
表現しにくいわけです。
反作用の側は、名付けようによっては
「悪魔」と呼ばれることもある。
悪魔は西洋でいうと堕天使だったりもするわけで、
天使と悪魔っていうのは裏表みたいな関係。
吸う空気があれば、吐く息もある、みたいなね。
「マニマニのあくま」は
その「悪」の側のほうのシンボルにした、
というのが、まずはひとつ。
──
はい。
糸井
もうひとつ、大きなことは、
その「悪のシンボル」を、
誰かの手から手へ渡っていくようにしたことです。
それが移動していくことで、
物語を展開させることができる。
──
あーー、たしかに。

糸井
しかもそれが「黄金像」だということも重要で。
やっぱり、黄金の像とか宝の地図というものは、
ストーリー的に非常にワクワクさせるというか、
「この物語はどこへ行くんだろう」って思わせる。
──
たしかに、そうですね。
糸井
黄金って、人を惑わせるシンボルなんです。
映画の『レイダース 失われたアーク』でも、
黄金の像(ゴールデンアイドル)を追いかけて、
インディ・ジョーンズが奔走するじゃないですか。
で、それを巡って物語や謎が
ころころ転がったりぐんぐん広がったりする。
「そういうものがあるぞ」っていう噂だけで、
みんなの欲望をかきたてて、
それがもとで「それを奪おう」だとか、
「あいつを殺そう」だとかの物語が
たくさんできるわけです。
だから、まあ、王道といえばそうなんですけど、
そういうのってやっぱりおもしろいんです。
「マニマニのあくま」は、その意味でいえば、
『MOTHER2』に必要だったともいえる。
──
その「物語を転がすシンボル」は、
ゲームの中ではライヤー・ホーランドさんの
家の地下から見つかります。
糸井
シンボルが掘り出されることで、
そこから「発散されるもの」が、
いろんなことをしでかすようにしたんですよね。
それも、いわゆる「悪」のほうにね。
──
掘り出されることで、
「封印されていたものが解き放たれる」
という感じがしますね。
糸井
当時、赤城山の埋蔵金発掘プロジェクトに
どっぷり関わっていたというのも大きいね。
あの赤城山のときも、
まず「黄金の家康像」というのが出た、
というところから
みんなが本気になっていくんだよ。
──
あーーー、ありました、なつかしい(笑)。
それは番組のなかで出たんでしたっけ?
糸井
いや、古い写真だけがあったの。
昔、この場所から出たということで。
現物はもうなくなってるんだけど、
「出た」っていう事実が大きかったんだ。
その事実があるから、
みんなが応援してくれたし、
資金を出そうという人も現れたりする。
──
それはまさに構造として‥‥。
糸井
「マニマニのあくま」と同じですね(笑)。

(つづきます)

2023-03-08-WED

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  • マニマニのあくま

     

    マニマニのあくま

    9,999円(税込・配送手数料別)

     

    サイズ:高さ200×幅64×奥行60mm
    重さ:約350g
    素材:本体/ポリレジン、底面ラバー/PVC、メッキ/水溶性ポリレジン

    販売期間:
    2023年3月8日(水)午前11時から
    2023年3月29日(水)午前11時まで
    販売形式:受注販売
    出荷時期:2023年5月下旬
    海外発送:あり

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    編集協力:小原久(東京テキスト)

     

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