『MOTHER2 ギーグの逆襲』に登場する
「マニマニのあくま」は謎の多いアイテムである。
いや、アイテムというよりは敵、あるいは概念、
ひょっとしたらテーマと呼んでもいいかもしれない。
ピカピカと怪しげに輝くその黄金像は、
ネスたちの冒険を導くようにあちこちに出現する。
いったい「マニマニのあくま」とは、なんなのだろう?
『MOTHER2』に欠かすことのできないこの像を、
ほぼ日MOTHERプロジェクトで製作して展示したところ、
多くのファンが強い興味を示してくれた。
3月8日から受付をはじめる受注販売にさきがけて、
スペシャルな発売記念企画をお届けする。
糸井重里への特別インタビュー、
テーマはもちろん「マニマニのあくま」について。

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第3回 物語製造マシーン

──
悪のシンボルとして物語を転がしていく
「マニマニのあくま」ですが、
ゲームの中で、最終的には
「げんえいマシーン」だったと説明されます。
糸井
うん。「げんえいマシーン」だった、
っていうコンセプト、わりと好きなんですよね。
──
「マニマニのあくま」という
「げんえいマシーン」は、
ネスの冒険を邪魔するために、
ギーグがあの世界に送り込んだもの、
ということでいいんですよね?
糸井
そうですね。
掘り出したのはホーランドさんですけど、
ホーランドさんがつくったものだとすると、
やっぱりちょっとおもしろくない。
『MOTHER2』の物語の中心にいる
悪の総大将はギーグなので、
「マニマニのあくま」を誰かがつくったとしたら、
それはギーグでしょうね。
──
ギーグがつくった「げんえいマシーン」が、
いろんな人の手から手へ渡って、
へんな力を与えたり幻影を見せたりして、
『MOTHER2』の物語は展開していきます。
あらためて考えるとおもしろい構造です。
糸井
だから、いってみれば、
「マニマニのあくま」って、
「げんえいマシーン」だけど、
物語製造マシーンなんですよ。

──
ああ、なるほど。
糸井
さっき『インディ・ジョーンズ』の話を
しましたけど、実際の世界でもそういうことはあって、
たとえばトルコのトプカピ宮殿にあるダイヤモンドは
もともとは漁師が拾ってそれをスプーンと交換して‥‥
というような物語を背負っているわけです。
それがどう動くかによってストーリーに幅ができる。
人の手に渡れば渡るほど、おもしろくなっていく。
「マニマニのあくま」は、『MOTHER2』のストーリーを
展開していくときに重要な機関なんです。
それがなんなのか、正体もよくわからないのに
「あれを欲しい」と思ってしまう気持ちが、
ストーリーを生み出す大きな力になっている。
いいにせよ、悪いにせよ、平和にせよ、争うにせよ、
それらを生み出す大もとが「マニマニのあくま」。
それがマシーンだというのも、
おもしろいところなんじゃないかな。
──
ちょっと脱線するかもしれませんけど、
『MOTHER2』には「タコけしマシン」とか、
「ぐるめとうふマシン」とか、
いろんなマシン(マシーン)が出てきますよね。
それは、なんというか、糸井さんのクセ?
糸井
ははははは。
まあ、あれだよね、「マシン」にすることで、
概念みたいなものでもグッズ(アイテム)みたいな
扱いにできるからだよね。
──
ああ、なるほど、ゲームの仕様として。
糸井
そうそう。当時、ロールプレイングゲームを
つくるときには、あるものがあったとき、
それが魔法とグッズのどっちに入る要素なのかを
決めるのが重要だったんです。
『MOTHER』では、武器もグッズ。
「サルのきもち(敵を動けなくするグッズ)」は
気持ちだから概念なんだけど、
概念は概念でグッズに分類している。
──
ダンジョンの入り口に戻してくれる
「あなぬけねずみ」なんかも、
物語上では生き物だから仲間に近いんだけど、
機能としては魔法みたいで、
でも『MOTHER2』ではグッズとして持ち歩ける。
糸井
うん(笑)。
──
しかも「あなぬけねずみ」は、
そのあたりのややこしさを、
おかあさんねずみの
「じょうぶなこですから
グッズあつかいしてくれて
けっこうです」というセリフ一発で
解決しているのが『MOTHER』らしい。
糸井
そういうちいさな発明を
あちこちでやってるんですよね。
──
そのへんの考えかたは、本当におもしろいです。
糸井
『MOTHER』っていうのは、ある意味、
批評性の強いゲームだと思うんです。
それまでのゲームのお約束そのものを
遊びに変えちゃうような視点を持っている。
だから、隠れた遊びやメタファーや
ダジャレみたいなことがいっぱい入っていて、
それを受け取ったプレイヤーは、
大人になってもいろいろ言ってたのしめる。

──
だから、発売から30年近く経っても、
こうして世界中の人たちが憶えている。
糸井
ただ、あまりそういう、ひねったような
おもしろさだけに光を当てすぎると、
本当の主役である、
「少年たちの物語」が薄らいでしまうからね。
まあ、そういう意味では、
『MOTHER2』というゲームのたのしまれ方は、
ちょうどいい濃さなんじゃないかな。

(つづきます)

2023-03-09-THU

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  • マニマニのあくま

     

    マニマニのあくま

    9,999円(税込・配送手数料別)

     

    サイズ:高さ200×幅64×奥行60mm
    重さ:約350g
    素材:本体/ポリレジン、底面ラバー/PVC、メッキ/水溶性ポリレジン

    販売期間:
    2023年3月8日(水)午前11時から
    2023年3月29日(水)午前11時まで
    販売形式:受注販売
    出荷時期:2023年5月下旬
    海外発送:あり

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    編集協力:小原久(東京テキスト)

     

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