こんにちは、ほぼ日の奥野です。
以前、インタビューさせていただいた人で、
その後ぜんぜん会っていない人に、
こんな時期だけど、
むしろZOOM等なら会えると思いました。
そこで「今、考えていること」みたいな
ゆるいテーマをいちおう決めて、
どこへ行ってもいいようなおしゃべりを
毎日、誰かと、しています。
そのうち「はじめまして」の人も
混じってきたらいいなーとも思ってます。
5月いっぱいくらいまで、続けてみますね。
- ──
- 吉田さん、お久しぶりです。
さっそくですが、どうされてますか最近。
- 吉田
- 3月1日から4月の半ばごろまで、
ラオスの洞窟へ行くはずだったんだけど。
- ──
- ええ。
- 吉田
- 1月に中止を決断しました。
- ──
- えっ、1月ですか?
- 日本では、まだそんなに、
危機感が高まってなかった時期ですよね。
- 吉田
- こうなるんじゃないかな~と思って。
- ──
- そんな早い段階で、ですか。
- 吉田
- そう。で、みんなに「やめとこう」って。
そしたら賛同してくれたんです。 - そのあとは、どんどん予想したとおりに、
悪いほうに的中していった感じ。
- ──
- それ、何か「根拠」があったんですか。
- 吉田
- 専門家じゃないし、ちゃんとした根拠は
とくになかったけど
中国で感染が発生してるってことは、
東南アジアには、
すぐ広まっていくだろうなと思ったのと。
- ──
- ええ。
- 吉田
- 洞窟の中で発症したら、最悪だからね。
それこそ、生命に関わってくる。
- ──
- 吉田さんは、未踏の洞窟の奥の奥まで、
何週間もかけて潜るんですもんね。 - 熱が出たらからと言って、
すぐには地上に戻ってこれないわけで。
- 吉田
- ヤバいでしょ。そうなったら。
- ──
- ようするに、吉田さんの「勘」ですか。
1月に中止を決めたのは。
- 吉田
- 俺、海外のアクション映画やドラマが
大好きなんだけど、
リスクマネジメントについては、
そういう物語を参考にしてるんだよね。
- ──
- えっと、つまり『24』とか?
- 吉田
- うん。
- ──
- 『ミッション・インポッシブル』とか。
- 吉田
- 大好き♡
- ──
- ジャック・バウアーとか、
イーサン・ハントの考え方や行動を、
現実生活でのリスクマネジメントに、
応用してるってことですか。
- 吉田
- そう。感染症の映画もたくさん見たよ。
ゾンビになっちゃうやつとか。
- ──
- はぁーっ‥‥。
- 吉田
- 日本にいると現実味ないだろうけど、
未踏の洞窟なんか、
本当に何が起こるかわかんないから。 - そもそも、海外では
洞窟にたどりつく前の段階のとこで、
山賊に襲われたりもする。
- ──
- 山賊!
- 吉田
- ようするに、
日本にいたら絶対遭遇しないことが
ああいう映画の中では
バンバン起こるじゃないですか。 - そういうのを、
おぼえておくようにしてるんだよね。
なるほど、
こういうこともあるかもしれないと。
- ──
- あらゆる事態を想定して生きている。
洞窟探検家として。
- 吉田
- ぽやーんとしてたら死んじゃうことが
多いからね。日本以外では。
- ──
- デューク東郷という人は、
「敵の陰謀で、
自分の隠し金庫に閉じ込められる」
可能性まで考慮に入れて、
ダイナマイトを、
自分の隠し金庫の金の延べ棒の山に、
潜ませておいたりする人なんです。
- 吉田
- 用心深いね。
- ──
- 前回お会いしたときも思いましたが、
吉田さんもゴルゴ並みです。
- 吉田
- 臆病だからね。怖がりというかなあ。
でも、
ビビりすぎくらいでちょうどいいよ。 - 海外の遠征先で何日も熱が出たり、
ひどい下痢になったり、
嘔吐したり、
まともな医療機関のないような国で、
ヤバいことになってるから。
- ──
- そういう場合、どうするんですか。
- 吉田
- もう自力で治すしか方法はないよね。
5日くらい寝るだけだけど。
- ──
- 免疫だけで、何とかしてきたと。
- 吉田
- 強いて言うなら、レッドブルかなあ。
アレだけは、世界中にあるんだよね。 - ま、気休めかもしれないけど(笑)。
- ──
- でも、あらためてですけど、
1月の時点で渡航中止を決めたのは、
同業のみなさんのなかでも、
かなり、早かったんじゃないですか。 - クルーズ船の報道が出はじめたのも、
2月くらいからですよ、たしか。
- 吉田
- 実際、仲間のうちには、
海外へ出ちゃった人もいるんだよね。 - ネパールの未踏の山に登ると言って、
3月中旬ぐらいに出発して、
4月頭に帰ってくる予定だったけど、
ロックダウンになっちゃって。
- ──
- ネパールのほうが。
- 吉田
- たぶん、帰ってこられるの5月以降。
- ──
- やっぱり「生き抜く感じ」がします、
吉田さんって。
- 吉田
- まさに今、人類は、
暗い洞窟を探検している感じだよね。 - そういう意味では、
「生き残る」ことが大事だと思うよ。
- ──
- なるほど。
- 吉田
- 探検では、引くときは徹底的に引く。
- 目のまえの困難を乗り越えることも
もちろん重要なんだけど、
生き残るためには、
引くことを知らないと、死んじゃう。
- ──
- ええ。
- 吉田
- 無理せず引いて生き残りさえすれば、
絶対に次のチャンスがあるから。
- ──
- それは、今、できるだけ外出しない、
という人々の行動に、
どこか通じるような話だと思います。
- 吉田
- でも、そのあたりの判断って、
テレビのクルーをガイドしていると、
難しいんだよね。 - 番組を背負ってると思うと、
ついつい、無理しちゃうんです。
- ──
- なるほど。「撮れ高」とか、あるし。
- 吉田
- で、そうやって無理しちゃったとき、
だいたい事故が起こるんです。 - 洞窟のなかでは、
自分自身で、戒めていく必要がある。
吉田、ああしろ、こうしろ、
今はそうじゃない、
って言ってくれる人はいないんでね。
- ──
- 考えるのは自分。決めるのも自分。
- 吉田
- そう。自分で考えて、自分で決断して、
必要だと思ったときには、
潔く引くという選択ができないとダメ。
- ──
- 真っ暗闇の中でも、
自分自身で決断してきた積み重ねが、
吉田さんの「強さ」なんですね。
- 吉田
- で、そういう経験を積んでこれたのも、
生き残ったから。 - 死んだら、そこで「終わり」だからね。
- ──
- 洞窟内の探検のお話が、
いまの状況といろいろリンクしていて
すごくおもしろいんですけど、
このままだと、
吉田さんの魅力をすべて伝えきれず、
まじめな話だけで終わっちゃいますが、
いいですか。
- 吉田
- ウ○コの話とかすればいいの?
- ──
- すいません、じゃあ大丈夫です(笑)。
- でも、吉田さんとしゃべっていると、
明るい気分になりますね。
- 吉田
- まあ、元気だけが取り柄だからね。
- ──
- 吉田さん、すごい食べますしね。
見ていて、気持ちいいくらいに。
- 吉田
- そうだね、めちゃめちゃ食うよね。
身体は基本だから
ふだんから甘やかしてないよ。 - 18年間、フトンで寝てないしね。
前に言ったかも知れないけど。
- ──
- そうなんでしたっけ(笑)。
- 吉田
- うん、床で寝てる。
- ──
- 硬くないんですか。床で。
- 吉田
- 硬いほうがいいんだよね。もはや。
- ──
- 今も、タンクトップ姿ですもんね。
そんな季節でもないと思いますが。
- 吉田
- まあ、タンクトップが1枚あれば、
ことたりてる。だいたい、一年中。
- ──
- 吉田さんと話すと元気が出るのは、
吉田さんが元気だからですよね。
- 吉田
- この性格も、あると思うんだよね。
- いつも、仲間と大笑いする時間を
大事にしてるし。
- ──
- そんな吉田さんでさえ、
今は動かずにいるわけですもんね。
- 吉田
- まあね。オッケーになったら、
すぐに出ていけるように、今は。 - オレ、いつか
ギアナ高地へ行きたいんだよね。
- ──
- おお。
- 吉田
- UMAに遭遇してみたいんだ。
- 俺ら「川口浩の水曜スペシャル」を
夢中で見てた世代だから。
- ──
- UMAって「未確認動物」ですよね。
- 吉田さんなら、
あっちから寄ってきそうですけどね。
- 吉田
- いろんなテレビ局に企画書を書いて
出したりしてるんだけど、
いまのところ、ぜんぜん通らなくて。
- ──
- でも、いつか絶対、行きそうです。
- 吉田
- うん、諦めてないよ。
いつか絶対行ってやるって思ってる。
(明日は天文学者の阪本成一さんの登場です)
2020-05-04-MON