こんにちは、ほぼ日の奥野です。
以前、インタビューさせていただいた人で、
その後ぜんぜん会っていない人に、
こんな時期だけど、
むしろZOOM等なら会えると思いました。
そこで「今、考えていること」みたいな
ゆるいテーマをいちおう決めて、
どこへ行ってもいいようなおしゃべりを
毎日、誰かと、しています。
そのうち「はじめまして」の人も
混じってきたらいいなーとも思ってます。
5月いっぱいくらいまで、続けてみますね。
- ──
- 青山の国連大学の前でやっている
ファーマーズマーケットで
お会いしたのが、最後でしたかね。
- 中田
- そうですね。一昨年の夏ですよね。
- ──
- 中田さんは、アルケッチァーノの
奥田政行さんにお声がけされて、
郡山で
「福ケッチァーノ」というお店を
やってらっしゃって。
- 中田
- ええ、そうですね。
3年ほどやらせていただきました。
- ──
- 郡山の「しゃべれる農家」である
藤田浩志さんや、
300品種もの野菜をつくる
鈴木光一さんに、
何度かお連れいただいたんですが。
- 中田
- はい、偉大な先輩方です(笑)。
- ──
- その後、ご自身のお店を持たれて。
もう、どれくらいですか。
- 中田
- 1年と3カ月になります。
- ──
- Facebookで拝見していたんですが、
予約、埋まりっぱなしでしたよね。
- 中田
- ええ、おかげさまで、
店をオープンしてから1年と2カ月、
コロナの直前までは
毎日、満席だったんですけど、
4月が4割減、
5月は、いまのところ、
まったく予約が入らない状況ですね。
- ──
- そうですか。やっぱり大きな影響が。
- そんななか、中田さんも、
テイクアウトをはじめていますよね。
- 中田
- そうですね、週末だけやってますね。
- ただ、テイクアウトって、
10%が利益といわれてる飲食業で、
さらに箱代もかかるので。
- ──
- ああ、そうなんですか。
- 中田
- けっこう、利益の薄い商売なんです。
- 毎日、
確実に注文があるわけでもないので、
月曜日に入ったあと、
次、木曜金曜まで入らないとなると、
食材ロスになってしまったり。
- ──
- いま、多くのお店がテイクアウトを
やってらっしゃいますが、
じゃあ、みなさん、
経営的にはかなりむずかしいことを、
やってらっしゃるんですか。
- 中田
- そうだと思います。
- ──
- それ以外の取り組みって、何か‥‥。
- 中田
- 郡山に「AMEKAZE」さんという、
このへんではいちばんの、
おしゃれなスーパーがあるんですが、
そちらで
「シェフがつくった冷凍食品」
という取り組みを、はじめています。
- ──
- おお。
- 中田
- ご自宅でも、無添加で、安心安全な
料理人のつくった料理を、
温めるだけで食べてもらえる商品。 - いま、何社か合同で進めていまして、
遅くとも6月の頭には、
スタートできたらと思ってるんです。
- ──
- すごい、そのスピード感。
それはコロナの後の動き出しですか。
- 中田
- ええ、具体的にはそうなんですけど、
2年くらい前から、
AMEKAZEさんと話を進めてまして。
- ──
- じゃあ、その「助走」があって。
- 中田
- はい。もともと話し合ってた企画を、
このコロナを機に、
もう、一気にカタチにしていこうと。
- ──
- どんなメニューを考えてるんですか。
- 中田
- お店によっていろいろなんですけど、
うちなら、地元の和牛を使った
ハヤシライスやカレー、とかですね。 - 和食屋さんなら、牛のしぐれ煮とか。
だいたい500円から、
最大2000円くらまでの価格帯で。
- ──
- 自宅で、手軽にシェフの味。
ちょっと贅沢したいってときとかね。
- 中田
- ええ。お弁当もいいと思うんですが、
どうしたって、
冷めたら味が落ちてしまうんですよ。 - だったら、お湯に「チャポン!」で、
あったかくて、
おいしく食べられるものがいいなと。
- ──
- そういった取り組みと並行して、
お店も、開けてらっしゃるんですか。
- 中田
- ええ、予約自体は承っています。
- いまは、縮小して営業しているので、
「1日1組、4名様」
からで、やらせていただいています。
- ──
- 中田さんの新しいお店、
まだ、ぼく行ったことないんですが、
コンセプトだとか、
教えていただいてもよろしいですか。
- 中田
- 郡山駅前に、このあたりで
いちばん歴史の古い神社があって、
その参道に、
ポツンと建つレストランなんです。 - 1日2組様、最大7名様で、
その日、
畑で採れた野菜でつくった料理を、
お出しするようにしています。
- ──
- あー、野菜。おいしいですもんね。
郡山の野菜って、とっても。
- 中田
- お肉も地元、
お魚も、なるべくは地元のもので、
「知産知消」つまり
知っている人がつくったものを、
知っている人に食べてほしい、
という気持ちで、やっていますね。
- ──
- 知っている人がつくったもの‥‥
というと、
野菜で言えば、鈴木光一さんとか。
- 中田
- はい、ほぼほぼ鈴木さんの野菜を、
使わせていただいています。 - そこに、会津の伝統野菜や、
いわきのほうの伝統野菜も加えて。
- ──
- 中田さんが「福ケッチァーノ」の時代、
出してくださったお料理が、
すごくおいしかったのを覚えてますが、
ああいった感じのお料理ですか?
- 中田
- 自分は、これまでずっと
フランス料理をやってきたんですけど、
郡山の野菜を使えば使うほど、
いろんなものが、削ぎ落とされてきて。
- ──
- ええ。
- 中田
- バターさえ、使わなくなっちゃって。
- ──
- なんと。
- 中田
- バターの乳脂肪分が、
このへんの食材‥‥とくに野菜の味を、
伝わりにくくしてしまうような、
そんな気がするんです。
- ──
- 郡山の野菜って、
たしかに、食味が「濃い」ですものね。
甘みが強いというか。
- 中田
- フランス料理って、
バターをバンバン入れるんですけれど、
どんどん必要なくなってきて‥‥
最近では、
和食に近づいてきたような感じですね。
- ──
- しろうとの半端な知識で言っても、
バターって、
コクだとか旨味みたいなことなんだと
思うんですけど。
- 中田
- ええ。
- ──
- そういった部分は、
何で、どうやって代替してるんですか。
- 中田
- 野菜そのもののちから、です。
- ──
- わあ。
- 中田
- 味の薄い野菜って、バターや塩で
味を立たせなきゃならないんですけど。
ここの野菜は、
そんなことをする必要がないんです。 - この恵まれた味を活かし切るためには、
どうしたらいいか考えたら、
どんどん、
よぶんなものが削ぎ落とされていって。
- ──
- ここの野菜‥‥っていうのは、
つまり郡山ブランド野菜のことですね。 - ジュースにすると最高のニンジンとか、
スイーツみたいなサツマイモとか。
- 中田
- はい、そうです。
- ──
- 毎年、冬になると、「ほぼ日」でも
販売させていただいてますが、
たいてい1日で売り切れちゃいます。
- 中田
- 野菜のことを知り尽くした光一さんが、
本気出してつくってるんで。 - ぼくらも畑で勉強させてもらってます。
- ──
- そうなんですか。
- 中田
- いま、忙しいんですよ、農家さんって。
- とくに、光一さんの鈴木農場さんって
種苗店でもあるので、
販売用の苗を‥‥
たとえばナスだけで20種類もあって、
それを何万本も育ててたりして。
- ──
- ひゃー、すごい数。
さすがは300品種の野菜をつくる人。
- 中田
- 料理人仲間をいっしょに連れていって、
お手伝いという名の、
野菜の勉強をさせていただいています。
- ──
- 将来、自分が使うことになるお野菜を、
育てている‥‥みたいな感覚ですか。
- 中田
- そうですね。農家の苦労を知れば、
料理も、変わってくると思うんですよ。 - まあ‥‥もともと、鈴木農場の野菜は、
ぜんぶ自分のものだと
思っちゃっているんですけどね(笑)。
- ──
- いまの時期は、何がおいしいんですか。
- 中田
- いまだと「くきだち」がいいですね。
- 白菜なら白菜の「くきだち」といって、
芯の部分から
新しい芽が出てこようとするんですね。
- ──
- その部分を、食べる?
- 中田
- そうです。
- キャベツのくきだち、白菜のくきだち、
いろんな葉物野菜のくきだちが、
いま、地元には、出回っているんです。
- ──
- あ、市場には出荷しない野菜ですか。
- 中田
- おそらく。
このへんの人の口にしか、入らない。 - おひたし、天ぷらにしてもいいです。
あとは「山菜」が、最高です。
- ──
- あー、時期的に。おいしいですよね。
どうやって食べるんですか。
- 中田
- まだ、ホタルイカがシーズンなんで、
ぼくだったら、
ホタルイカで肝のソースをつくって、
タラの芽をフライにして‥‥。
- ──
- おお。
- 中田
- 細かく刻むと粘りの出てくる
「うるい」という山菜がありますが、
それをサッと茹でて、
そこへ、マスタードを和えたりして。 - ホタルイカの肝の「海の苦み」と、
山菜の「山の苦み」を、
楽しんでもらう一品料理ですとか。
- ──
- おいしそうです。
いやあ、聞くだに、おいしそうです。
- 中田
- うん、おいしいと思います。
- ──
- お店、こんど必ず、うかがいますね。
ここまで聞いたら、行かずには。
- 中田
- ああ、ありがとうございます(笑)。
お待ちしてます!
(つづきます)
2020-05-23-SAT