2024年、ほぼ日の「老いと死」特集
満を持してスタートしました。
そのかたすみで、
ひっそりと生まれた企画がひとつ。
「正直、老いや死のことを、
まだあまりイメージできない」という
2、30代の乗組員が、ざっくばらんに話し合う
「老いと死の歌座談会」です。
おそらく私たちの手に負えるテーマではないけれど、
いま考えていることを、気張らずに話してみます。

‥‥タイトルの「歌う」が気になっている方も
いらっしゃるかもしれません。
よくぞ気づいてくださりました。
そうなんです、座談会の最後は、
毎回のおしゃべりから誕生した歌を
みんなで歌います。
どんな歌が生まれるのか、少しだけ、ご期待ください。
担当は、ほぼ日の20代、松本です。

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第3回〈その4〉おもしろくなりたいと思っていたら、大丈夫。

赤間
死んだあとのことも、最近、よく考えます。
自分に子どもや孫はいるのかなぁ‥‥とか、
そのころの社会はどうなっているんだろうとか。
あとは、死に化粧を‥‥
「誰が私のメイクするの?」というのも気になる。
全員
(笑)
赤間
なるべく、変な顔にはされたくない。
松本
死に化粧に「似合わせメイク」とか、
あるんですかね。
赤間
ここの髪を短くしてくださいとかね。
あと、私の髪は天然パーマなんですけど、
ちょっといいドライヤーで乾かすと、
まっすぐになるんです。
となると、棺桶に入るとき、
私は天パなのか、
いいドライヤーで乾かされた
まっすぐな髪なのか‥‥
というのも気になっていて。

菅野
あははは。
持田
気になるね。
赤間
なるべく天パがいいなと思うけれど、
「いや、天パは日本の棺桶にはよくないんですよ」
と言われたら、どうしよう。
松本
遺言状に書くというのはどうですか。
赤間
遺言で
「私の髪はちょっと湿らせるとクルクルになります」
とか書くのか(笑)。
「アイシャドウのラメは、
絶対まぶたの中央につけてください」。
持田
ヘアメイクはこの人、メイクはこの人、と
指名しておくのがいいかもよ。
赤間
専属のスタイリストを。
持田
そうそう。
生前に指示書を渡しておけば、
生きているうちから準備してくれるかもしれない。
赤間
それ、やりたい。
「生きているあいだは
ヘアブリーチを禁止されていたので、
最後に金髪にしてください」とか、
お願いしようかな。
菅野
さっきの赤間ちゃんの
「お母さんは急に老ける理論」で言うと、
自分自身も一気に老けるのかな。
赤間
そうだと思います。
持田
ある日、鏡を見たら、
「自分はこういう見た目」と思っていた
イメージが剥がれて。
赤間
撮られた写真を見て
「あれ、私、こんな顔だったっけ?」
みたいなことが。
菅野
ああ、ある、ある。
持田
老けたのを認識するのは怖いけど、
ずっと若いときの姿のままだと思い込んで
生きていくのも怖いかもね。
赤間
たしかに。なるべく早めに、
イメージと現実を結びつけておきたい。
松本
老いることも感情が動くことも含め、
生きていると、どこかしら、
ずうっと動いてるんですね。
持田
そうか、死ぬというのは、
唯一「止まる」ことなのか。
松本
そう思ったら、「老いという動き」も、
なんだかすてきな気がします。
生きていることの一部ですもんね。
赤間
ああ、逆に言えば、
「止まりたい」と感じたときに
「死にたい」という感情が出てくるのかも。
持田
たしかに。
赤間
生きてる限りはどうしても
動き続けなくちゃいけなくて、
でも、動き続けると疲れるから。
松本
そうか。
赤間
定期的に人間関係をリセットしたくなるという話も、
よく聞きます。
いったん人間関係のなかで生きるのを
ストップするという意味では、
これも「止まる」だなと思いました。
松本
誰も自分のことを知らないところに行くとかも。
そういえば以前、
「いったん死んで、もう一回生き返るというのは、
どうしてできないんだ」と思っていたんですよ。
赤間
ああー。
松本
すごく落ち込んだときなどに
「ちょっときょうから3日間だけ、
いなくなることにできませんか? 
3日経ったらまたちゃんとがんばるので」
みたいな‥‥。
でも、いまの話を聞いていたら、
生きながらにして「ちょっと止まる」というのは、
ありだなと思いました。

赤間
‥‥でも、やっぱり私は、
生きてるっていいなって思う。
最近は、落ち込んでいても
「ああ、自分、落ち込んでるなぁ」と
観測している自分も出てきて、
ちょっとおもしろがれるようになってきたんです。
松本
わあ、すごい。早くそれになりたいです。
持田
僕も、少しずつそうなってきたなぁ。
けっこう、わが人生もいろいろあって、
うまくいかなかったこともたくさんあったんだけど、
それを気にせず全部、人に話すようにしたときに、
いろんな人に「おもしろい人生だね」
と言ってもらったことが、
すごく心に残っているんです。
当時、たいへんな状況の
真っ最中にいた自分からしたら、
おもしろいなんて思えなかったんだけどね。
でも、人におもしろがってもらった経験があると、
落ち込んでも、俯瞰になって
「まあ、おもしろい人生だしな」と立ち直れる。
「やっぱり生きてるのたのしいな」とも思う。
いま自分がどう思ってるか、
どういう状況なんだろうか、ということを
客観的に考えるセンサーを持っておくと、
意外と「ほんとはそこまで落ち込んでなかったんだ」
と気づいたりもします。

松本
以前、菅野さんが言ってくださったことを
思い出しました。
私が「もう、この先やっていける気がしないですぅ」
みたいな泣き言を言ったときに(笑)、
「苦労すればするほど、人はおもしろくなるから。
おもしろくなりたいと思っていたら、大丈夫だよ」
と言ってくださったんです。
その言葉のおかげで、
「そうだよな、おもしろくなりたいよな」
と思いながら、いまは生活できています。
赤間
うん、うん。
菅野
私、そんな立派な境地にいたってないよ(笑)。
自分を客観視なんて、いまだにできないし。
赤間
菅野さんは客観視、
すごくしていると思ってました。
菅野
いやいや、まだまだですよ。
私の話はいいので、そろそろ、歌にいきましょう。
歌の時間ですよ、みなさん。立ってください。
今回、できあがった歌はこちら。
♫なんでもね、結果論
未来で過去を書き換える
そういうことだったのかなと、
自分で振り返る防衛本能
生きている人が優先
生きている人が優先

(3曲目はおしまいです。お読みいただき、ありがとうございました! 来月、4曲目をお届けします。)

2024-10-11-FRI

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