※本についてはこちらをどうぞ。
うれしいお知らせです。
ほぼ日刊イトイ新聞の奥野武範が担当した
数々のインタビューコンテンツが
1冊の本にまとまることになりました。
本は星海社さんから出るのですが、
インタビューアーを軸にした本になるなんて、
なかなかないことだと思います。
ここは、胸を張って「本が出ます!」と
言いたいところなんですが‥‥
ま、奥野本人は言いづらいんじゃないかと。
そこで、何人かの乗組員で、
著者と本を応援する文を書くことにしました。
担当:菅野綾子(ほぼ日)
なぜインタビューを
読むのですか。
インタビューって、なぜ読むのだろう?
誰かの話を誰かが聞いている、そのようすを読む。
おもしろい。なぜだ?
「興味があるから?」
いいや、そうじゃないと思う。
奥野武範さんのやっているインタビューには、
私の生活に役立つことは載っていない。
ぜんぜん正解が書かれていない。
俳優さんや自転車のパンクを直す人の言うことが
私個人のお得な情報とは思えない。
でも、読む。
驚く。
つぎつぎと行を追っては泣く。
顔をあげると景色が変わって見えたりする。
そうか。
私は、変わりたいんだ。
インタビューを読む人、つまり読者は、
いまあるルールや規定を信じ込んでいない。
現在が正解で完璧で終了、とは思っていない。
誰かが生きて発した言葉が、
自分になにか問いかけるのを待っている。
その問いを自分のなかで続けていくのだ。
だって世界は広いじゃないですか。
みんな住んでいるところも違えば
年も違うじゃないですか。
体調や気候が変わるだけで
気分は入れかわるじゃないですか。
だからひとつの正解だけが
通用するわけがないじゃないですか。
そういう世界に、奥野さんという人がいる。
インタビューに答える人は、
ひとりごとを言っているのではない。
奥野さんにむかって話している。
奥野さんの目や髭や、頷きや、差し挟む返事に反応して
言うこと自体どんどん変えていく。
奥野さんはそれをあくまで受けとる姿勢でいる。
それどころかたのしんでいる。
しかもこのタイトルにあるとおり、これは
「インタビューというより、おしゃべり。」だ。
話者は奥野さんを反射している。
だからほかのインタビューと似ない。
奥野さんはふだんはとても静かで、
前に出ない恥ずかしがり屋だ。
しかし口を開くとおもしろい。
それは存在にセンスがあるからと思う。
顔も情報が多くて印象ぶかい。
宝もののような人だと思う。
奥野さんが人の話を聞くときは、
キラッとした目をする。
私は知ってます。
私にいちどだけ、
そういう目をしてくれたことがあるから。
あれは奥野さんがほぼ日に入社してすぐのこと。
誰かの家でプライベートな食事会があった。
その席で奥野さんは私に
いろんなことを訊ねてくれた。
どうしてそういう服を着てるんですか?
おいしいものが好きなのはなぜですか?
どういうときにそれを思うんですか?
熱心に、次々と、好奇心むき出しに
質問をくり出していた。
こんな私に対しても敬意があふれていた。
これまで注がれたことがないほどの敬意だ。
しかしそれ以降は一切、私には興味をもってくれない。
インタビューを受ける人は、
あの奥野さんのキラッとした目を見て話したのだ。
インタビューを受けた人は
みんな奥野さんを好きになる。
そのことも奥野さんが最終的に残した原稿に
煌めきとなって乗っている。
話がそれて暴走しまくった先のメガトンパンチ。
奥野さんの驚きが文字になる。
この本はワクワクにあふれている。
感想を言うといつも
奥野さんは恥ずかしそうにニヤニヤする。
奥野さんは宝ものだ。
これからももっと何千何万も、
おもしろいインタビューをしてほしい。
それが、読者である私を自由に、そして、
強くしてくれるから。
(ほぼ日 菅野綾子)
(次の乗組員につづきます。)
2020-04-17-FRI
-
<本について>
『インタビューというより、おしゃべり。
担当は「ほぼ日」奥野です。』
奥野武範星海社
ISBN: 4065199425
2020年4月26日発売
※更新時27日と記していましたが、ただしくは26日です。
訂正してお詫びいたします。(2020年4月22日追記)
1,980円(税込)◇星海社さんのページはこちらです。
◇Amazonでのお求めは、こちら。
※ほぼ日ストアでの販売はありません。