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人生の冴えないワンシーンを絵に描いて、
日々、Twitterに
アップしている人がいます。
イラストレーターの大伴亮介さんです。
いくつかの作品に共感し、
インタビューしにうかがいました。
桜の季節の井の頭公園という
居心地最高のシチュエーションもあって、
インタビューというより、
ただのおしゃべりになってしまいました。
春の陽気と、初対面の大伴さんと、
その日の自分の波長が、
なんだか妙に合ってしまったんですよね。
どうぞのんびり、お付き合いください。
担当は「ほぼ日」奥野です。
- ──
- ワンシーン画を額装して飾ってあったら、
その家は、どうでしょうか。 - ぼくは、なかなかだなと思うんですけど。
- 大伴
- 飾るという発想はなかったですけど、
もしそんな家庭があったら、
住む人の心に余裕があると思います。
- ──
- わざわざ、きちんと額装したうえで、
下のほうに、ちいさく
「スライス卵の黄身が抜けたシーン」
とか書いてあるという。
「スライス卵の黄身が抜けたシーン」
- 大伴
- ハハハ。どう思えばいいのか、それ。
- ──
- ネタのもとになるシーンというのは、
どうやって集めてるんですか。
- 大伴
- 川に流れてくる漂流物を拾うように、
目の前にあらわれるシーンを、
つねにメモるようにしているんです。
- ──
- そういう目になってるんでしょうね。
- ぼくらなんかが「チッ!」としか
思わないような
「日常のちいさな不満や残念」を、
いちいちメモしておくわけですね。
- 大伴
- たまに、よく思いつきますねーって
言われるんですけど、
メモるかメモらないかのちがいだけ、
という気がします。
- ──
- これまでに、反応のよかった作品を、
いくつか教えていただけますか。
- 大伴
- わりと最近、描いたものなんですが、
これとかウケがよかったです。 - タイトルは
「おりがみの先端がこうなるシーン」
です。
- ──
- あー。こんなんばっかりです。人生。
「おりがみの先端がこうなるシーン」
- 大伴
- 思いついて1分くらいで完成しました。
- ──
- 速すぎませんか。
- 大伴
- ほとんど手がかからず、
それでいて「スパッと切れた」という
手応えがあったので、
個人的にも気に入っている作品です。
- ──
- だいたいこうなるもんなあ。折り紙。
- 大伴
- 先っぽ、たいがいこれ系ですよね。
- ──
- ツルの羽根の部分なんか、
うまく折れたときのほうが珍しいし。
- 大伴
- これも、反応よかったです。
- ──
- 「野菜室のドアにネギが挟まるシーン」
- 大伴
- ネギ‥‥それも長ネギって、
野菜室に納まらないことがあるんです。
- ──
- 長さが長いですもんね。長ネギって。
「野菜室のドアにネギが挟まるシーン」
- 大伴
- けっこうな数、
「いいね!」を押されたんですが、
やっぱり、
すぐ描けちゃうほうがウケるかも。 - あんまりネチネチ手を入れたのは、
ダメだったりします。
- ──
- パッと描けちゃうシーンのほうが、
勢いがあるというか、
通じる力があるってことですかね。 - 大橋トリオさんも、
まったく同じことを言ってました。
- 大伴
- おそれ多すぎますよ。
- ──
- そう思うと‥‥ワンシーン画って、
取り上げる瞬間が、
ほとんどすべてって感じですかね。
- 大伴
- どの瞬間を切り取るかの勝負です。
- ──
- シーン自体に
おもしろくなる可能性がなければ、
絵でおもしろくしようとしたって、
むずかしいですもんね。
- 大伴
- ですね。そもそも、
絵にあまり熱を入れたくないので。
- ──
- ああ、そうか。スッと出す派だ。
- 大伴
- そうやって、
なるべく平熱な感じに描いたとき、
そこはかとない
おもしろさのにじみ出るシーンが、
理想ですね。
- ──
- なるほど。
- 大伴
- たまに「腹がよじれるほど笑った」
みたいな感想をいただくんですが、
作者としては、
そこまでの爆笑は想定してなくて。 - もちろん、笑っていただけるのは
うれしいんですけど‥‥。
- ──
- 複雑な気持ちになる(笑)。
- 大伴
- え、そんなに‥‥大丈夫ですかと。
- ──
- ずっとやれそうな感じありますか。
- 大伴
- ええ、自分が飽きさえしなければ。
- シーン自体は、
自分がこの世に生きているかぎり、
尽きない気がします。
- ──
- ただ、日常と言っても、
そこまでプライベートなシーンは
出てこないですね。
- 大伴
- 老若男女いろんな人の
共感を得られる作品にしたいなと
思っているんです。 - たとえば、男女に偏りがあったり、
子どもがいないとわからない、
そういうシーンは、基本ないです。
- ──
- そうなんですね。
「爪を切り終えて足を上げたらチラシがくっついてきたシーン」
- 大伴
- たとえば、
ぼくはメガネをかけてるんですが。
- ──
- かけてますね。見るからに。
- 大伴
- いわゆる「メガネあるある」って、
数え切れないほどあるんです。
- ──
- 単純に「曇る」とかですかね?
- 大伴
- ゆでたパスタをザルにあけたとき、
かならずメガネが曇って、
かんじんのパスタを見失ったりね。
- ──
- うん、たしかにそうなんだろうな、
とは思うのですが、
コンタクトレンズ派の自分には、
正直、実感はともなわないですね。
- 大伴
- 温泉に行くと、
メガネNGのところがあるんです。 - 割れたら危ないから。
- ──
- へえ‥‥それは知らなかった。
- 大伴
- でも、薄暗い岩風呂なんかですと、
足元が覚束なくて危ないから、
なるべくメガネかけたいんですよ。
- ──
- そうでしょうね。
- 大伴
- ただ‥‥そこで、メガネをかけて
温泉の洗い場に立つと、
妙な気分に襲われることがあって。
- ──
- 妙な?
- 大伴
- 何か自分の姿がおかしいというか、
考えれば考えるほど、
落ち着かないんです、なんとなく。
- ──
- ああ、そうか。
- 大伴
- わかりますか。
- ──
- 素っ裸なのに、
なんでメガネだけかけてんの、と。
- 大伴
- そう。
よく考えると、違和感ないですか。
- ──
- 言われてみれば‥‥あります。
- つまり「全裸に靴下」とか、
「全裸に蝶ネクタイ」に感じるのと、
地続きの「違和感」ですね。
- 大伴
- そう。
- ──
- それがふつうのメガネじゃなくて、
パーティ用の鼻メガネだった場合、
洗い場が一気にザワつくというか、
ある意味では、
変質者になってしまいますもんね。
- 大伴
- でもそこ、紙一重じゃないですか。
全裸メガネから全裸鼻メガネって。
- ──
- 文字にしたら1文字の違いです。
- 大伴
- こういう気持ちって、
たぶんメガネをかけてない人には
伝わりにくいんです。
- ──
- ですね。実際わからなかったです。
今の「全裸メガネ」のお気持ちは。
ど れ く ら い、身 に 覚 え あ り ま す ?
日替わり!ワンシーン画 SLIDE SHOW
003
(つづきます)
2019-08-07-WED
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書籍
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「連載を読んでくださった
ほぼ日読者のみなさまに‥‥」と、
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ワンシーン画や
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大伴さん、とってもよろこびます。なお、この作品集は
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2019年8月19日(月)午前11時まで。
当選された方にのみ、
2019年8月20日(火)中に
メールでご連絡いたします。