2021年に活動30周年を迎える増田セバスチャンさんは、
日本のKawaiiカルチャーを牽引する世界的アーティスト。
このたび、渋谷PARCO「ほぼ日カルチャん」にて、
イベント『増田セバスチャンと6%DOKIDOKI 1995→2021』
を開催することになりました。
このイベントでは、
「Sensational Kawaii(センセーショナル・カワイイ)」を コンセプトに掲げる
増田セバスチャンさんの原宿のショップ
「6%DOKIDOKI(ロクパーセントドキドキ)」をフィーチャー。
26年前のオープン当時の写真や商品カタログ、
商品デザインに使用されたアート作品などを展示します。
また、最新アートグッズやファッションアイテムのほか、
90年代に使用していたデザインの復刻版ポスターの販売も。
今回、イベントに先駆けて、
増田セバスチャンさんと
増田さんのアトリエのマネージャー北村さんに
たくさんのお話を聞きました。
Kawaiiとは何なのでしょうか。
そして、増田セバスチャンさんは
どこへ向かっているのでしょうか……?
[過去のほぼ日のコンテンツ]
増田セバスチャンさんと、糸井重里
増田セバスチャンの 「あっちとこっち」展 のページはこちらから。
<第1回>
禅とKAWAIIが日本のイメージ
- ――
- 「6%DOKIDOKI」のスタートは1995年だそうで。
- 増田
- はい。
もともと20代前半は
現代美術や演劇界隈にいたんですけど、
なかなか評価されませんでした。
‥‥1995年って、阪神淡路大震災と
地下鉄サリン事件があった年なんですよね。
- ――
- そうでしたね。両方とも1995年でした。
- 増田
- そういった、時代が変わってしまう瞬間に
なにか新しいことをしたくて、
当時おもしろいことを一緒にやっていた
同世代の仲間と「6%DOKIDOKI」を開いたんです。
アートもファッションもカルチャーもぜんぶ入りの店で、
雑誌では「ジャパン・インポート・ショップ」と
紹介されたりしていました。 - 当時って、ノストラダムスの大予言で地球が滅亡するって、
みんながなんとなく信じていた時代でも
あるじゃないですか。
- 北村
- 1999年に、ですよね。
- ――
- たしかに。
うっすら「あるかも」と思っていました。
- 増田
- とてもリアルに、というわけではないんだけど、
漠然とね(笑)。
だから、その影響もありました。
けっきょく地球は滅亡しなかったけど、
その10年後に東日本大震災があって、
20年後に今回の新型コロナウィルスがあって。
そういうネガティブな節目にこそ、
逆にポジティブにバーンとやってやろうと
僕は毎回思うんです。
- 北村
- マイナスなパワーを、プラスに転換して。
- 増田
- そう。
それまでの価値観がひっくり返るときにこそ、
自分の出番だと思うんです。
といっても、僕はずっと同じことやってきたんですよね。
でも、それを見聞きしてくれない人も多かった。
だからこの機に、また新しい提案といいますか‥‥
これまでにやってきたことを、
切り口を変えて見せたいんです。
- ――
- それで、今年は
Kawaiiに関する展覧会を開催されるんですね。
- 増田
- そうなんですけど、
そもそも昨年、参加するはずだった展覧会が、
10個もなくなっちゃったんです。
ベルギーで開催中だった展覧会も
イベントを開催予定だったんですが、
渡航の3日前に緊急事態宣言が発令されてしまって
美術館がいったん休館に‥‥。
- ――
- そのイベントも、中止に。
- 増田
- はい。さすがに、
この先どうなってしまうんだろうと落ち込んで、
出張先の京都で延暦寺を訪ねてみたり、
考える時間が増えていきました。 - でも新しい時代を迎えるにあたって、
あえていまのタイミングならKawaiiについて
聞いてみたい、見てみたい、知りたいと、
みんなに思ってもらえるんじゃないかと。
それで、一見小さな世界かもしれないけど、
実はそこから大きな世界に連れて行ってもらえるような。
そういう増田セバスチャンの世界を見てもらいたくて、
展覧会を開催しようと決めたんです。
- ――
- 具体的な内容は、どのようなものになるんですか?
- 増田
- 「Yes, Kawaii Is Art」というタイトルの展覧会で、
東京と大阪で展示する予定です。
本当は9月から東京でスタート予定だったんですが、
コロナ禍で延期になってしまって、
11月の大阪が最初の会場になります。 - なぜ国境や世代、性別を超えて、
Kawaiiの価値観が伝播して
コミュニティーが継続していくのかを、
僕のアーティストとしての表現と
アクティビストとしての活動を通して、
Kawaiiが持つ奥の深さと新たな可能性を探ります。
- 北村
- 3年前にフランスで
日本の現代アートを紹介する美術展が開催されたんですが、
その展覧会のキュレーターの方に館長から
「フランス人が日本文化についてもっている定番理解は
カワイイと禅なので、これ以外を紹介してください」
というリクエストがあったと聞いたんです。
そう言われると、
まるでKawaiiがもう古いもの、
というふうに聞こえるかもしれませんが、
そうではなくて。
- ――
- すでにスタンダードなものになっていた、と。
- 北村
- そうなんですよ。
浸透していたんですね。
- 増田
- しかも日本=(イコール)禅かKawaiiだよ、と。
フランスでは、禅とKawaiiが
並んで認識されていたわけです。
でも、日本人が禅とKawaiiについて詳しいかというと、
あまりよくわかっていないじゃないですか。
日本語としての「かわいい」が
日常的なものというのもあって、見落としがちだし、
わざわざ理解しようとも思わないですから。
- ――
- たしかに、当たり前に使う言葉なので、
立ち止まってちゃんと考えたことは
なかったかもしれません。
- 増田
- ですよね。
だから、なぜKawaiiが世界中に広まって
リスペクトされたのか。
それをもう一度僕が歩んできた人生の歴史、
そして「6%DOKIDOKI」の歴史とともに掘り下げて、
「こういうことなんだよ」と見せてあげたいんです。
- 北村
- でもとある美術関係の方に聞くと、
じつはフランスの方も
あまりKawaiiを理解していないと思う、
と言うんですよね。
- 増田
- 表面的なことはよくわかっているんだけど、
本来の意味は、ね。
- 北村
- だからKawaiiの根っこの部分を解き明かせるのは、
何年もかけてKawaiiと向き合っている
増田セバスチャンのアートと活動しかないんじゃないか、
とも言われて。 - それで、
「Yes, Kawaii Is Art」
の展覧会の企画が始まりました。
(つづきます)
2021-09-22-WED