お母さんやおばあさんからゆずりうけた
真珠のブローチやネックレス、
片方だけになったピアスなどが
おうちに眠っていることはありませんか?

真珠の目利きで、日本にまだ9人しかいない
「パール・スペシャリスト」の山本和佳さんは、
いまは使われなくなった真珠を、
持ち主と相談しながら、
そのひとに一番似合うデザインに
作り直す仕事をしています。
TOBICHI京都の「パール・ザ・バトン」企画に向けて、
山本さんに、真珠のことや、いい真珠の選び方、
「パール・ザ・バトン」の活動について
おうかがいしました。

>山本和佳さんプロフィール

山本 和佳(やまもと わか)

真珠の産地である伊勢志摩で生まれ育つ。
2005年、地元の真珠卸の会社・覚田真珠に入社。
商品企画デザイン、販売、広報、
ブランドマネージャーなどを経験し、
2020年パール・アカンパニーとして独立。
真珠をリメイクする
「パール・ザ・バトン」の活動をスタート。
日本真珠振興会認定 真珠スペシャリスト®
※日本でまだ9人しかいない最上位資格。
パール・ザ・バトン公式サイト

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1.たくさんの人が繋いでいく、真珠のバトン。

──
山本さんは、真珠とのおつきあいは長いそうで。
山本
お仕事としては、真珠の会社に勤めていましたし、
もっとさかのぼると、
伊勢志摩で生まれ育っているので。
──
真珠の産地ですね。
山本
そう、産地なんです。
だから、真珠っていうのは漁業だと思って育ちました。
同級生のおうちとか、私の親戚にも養殖業者がいて、
漁業も盛んなところですから、
真珠養殖は周りの人たちがしている
海のお仕事のひとつなんです。
そういう延長線上にあったので
真珠が宝石っていう意識はなかったんですよ。
ですから真珠の会社に勤めたときも、
地場産業に勤めたようなイメージでいたんですね。
その会社は真珠の養殖から加工、卸、小売まで
幅広く手がけておりまして、
私は商品製作からスタートしました。
お仕事をしていくなかで、
真珠が宝石に生まれ変わるところを
たくさん見てきました。
まず養殖屋さんが真珠をつくって、
それを加工メーカーさんが
その真珠にいちばん適した処理をほどこして、
私のような商品製作をしている者が
留め具をつけてネックレスができあがって、
お客様にお渡しする‥‥
バトンを渡すようにお客様に届けるところが、
すごく面白いと思ったんです。
会社では、
小売の部門で企画やデザインを担当したり、
ブランドマネージャーもしました。
真珠検定の初代シニアアドバイザーになって、
真珠の魅力を発信するような機会もありました。
真珠の仕事に携わっておりますと、
以前に買ってくださったものを
糸替えなどでお持ちになるお客様も多いんです。
お預かりをするときには、一緒にお話も聞くんですよね。
これはお母さんから引き継いだもので、とか、
二十歳の記念にプレゼントされて‥‥と。
そういう受け継がれていく真珠を
実際に見る機会が多かったんです。
どれだけの大事に思ってる気持ちが
この真珠っていう宝石にこもってるんやろって、
ますます真珠が好きになったんです。

やっぱり私には、真珠なんだ。
──
真珠は、バトンのような存在。
そこから真珠のリメイクをする
「パール・ザ・バトン」の活動をはじめられた?
山本
いえ、すぐに「パール・ザ・バトン」に
繋がったわけじゃないんです。
私、真珠の会社を、
子育てが終わったときに辞めたんですね。
当時はもう真珠に関わることはないと思っていました。
──
そうだったんですか。
なにかほかのことがしたくなったとか?
山本
まったくなにも決めずに、辞めたんです。
これからどうやって生きていこうかなって思ってました。
そういうときに、「生活のたのしみ展」で
アルバイトをさせていただきまして。
──
そうでした!
開催のたびに伊勢志摩からやってきて、
参加してくださって。
山本
会期中、休憩時間に
ほぼ日のみなさんともおしゃべりして、
私、真珠をやってたんですって話をしたり、
いつか一緒にやりたいですねと言っていただいたり、
真珠のことをお話する機会が何回かあって。
あ、やっぱり私って真珠かもって思ったんです。

真珠と人との出会いに寄り添いたい。
山本
でも、いままでの仕事とは
違うことをしたいと思いまして。
今お持ちのものをお預かりしてケアしたり、
リメイクしてあたらしくすることで、
生まれ変わるようなことをしようと決めました。
具体的には、
お手持ちの真珠を、リメイクやケアする取り組みがひとつ。
それから、真珠に関する実習や講座。
そして、出番のないパールの
あたらしい使い方をご提案する活動の3つです。
どの活動も基本的な考えは同じなんです。
真珠と人との出会いの場をつくっていきたい。
その人だけの真珠を手にするお手伝いをしたい。
そう思っています。

真珠と出会ったときに、
いちばんいいものを選べるように。
山本
誰にでも、真珠に出会うタイミングがあるはずなんですよ。
そのときに、その人にとってのいちばんいいもの、
いちばんいい真珠を選ぶには、
やっぱり、知識が必要だと思うんです。
──
知りたいです!
山本さんは、日本真珠振興会の真珠検定の
パール・スペシャリストでもあるんですよね。
この検定の最上位資格で、
日本でも9人しかいないんだそうですね。
山本
真珠検定は、日本真珠振興会が
教育事業として行なっている検定です。
日本真珠振興会というのは、
真珠の仕事をしている人や会社の
95パーセントが参加している業界最上位団体です。
──
検定の勉強をすることで、
真珠についての知識が得られるんですか?
山本
そうなんです。
じつは真珠の価値基準ってむずかしくて、
しかも以前は、あいまいでもあったんです。
価値基準があいまいだからこそ、
真珠に携わっている人が、
真珠について正しく理解することを目的に
検定が始まったんですよ。
──
真珠の価値基準。
どんなものなんでしょう。

撮影:大江弘之 撮影:大江弘之

(つづきます)

2023-10-25-WED

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  • 11/3〜5の3日間、TOBICHI京都に
    「パール・ザ・バトン」のお店が
    オープンします。

    パール・スペシャリストの山本さんに、
    おうちに眠っているパールを
    自分に似合うデザインにリメイクしてもらう相談会を
    TOBICHI京都で開催します。
    クリーニングのみのご相談や
    あたらしいネックレスのお仕立ても大歓迎です。
    詳しくはこちらをごらんください。