元テレビ東京のプロデューサーで、
現在はフリーで活躍する佐久間宣行さん。
著書『ずるい仕事術』をきっかけに、
糸井重里とじっくり話していただきました。
テーマは「はたらく」について。
やりたいことをやるためには、
何を乗り越えなければならないのか。
そのためには何が必要で、何が要らないのか。
いまの若い人たちを思いながら、
かつての自分たちを思い出しながら、
ふたりの「はたらく」についての対談です。
佐久間宣行(さくまのぶゆき)
- 佐久間
- これまでお会いした
一流のクリエイターの方々を見てると、
みなさん受け手としての自分が
現役の人ばかりですね。
- 糸井
- そういう人の言ってる
「おもしろい」というものを、
自分も見てみたいって思いますよね。
ぼくにとっては三谷幸喜さんがそうで、
三谷さんにすすめられて
『チェルノブイリ』という
海外ドラマを観たんですけど、
やっぱりすごかった。
- 佐久間
- あのドラマ、とんでもないですからね。
- 糸井
- あの大道具とかセットとか憧れますよ。
- 佐久間
- 秋元康さんもそうですね。
お会いするとドラマの話ばっかりしてきます。
- 糸井
- 秋元さんはラジオを聴いて
ハガキを出す人だったわけですから、
もともとが「受け手」ですよね。
- 佐久間
- 受け手なんですよね。
そうやって思い返してみると、
いろんなものがつながりますね。
- 糸井
- だいぶん長く話してきたので、
このへんでこういうことを聞くんですけど、
佐久間さんが思う
「自分がおもしろいこと」って何ですか?
- 佐久間
- 自分がおもしろいこと?
受け手としてですか?
- 糸井
- 受け手としてじゃなくて、
自分の欲望とか自分の願いとか。
- 佐久間
- 欲望とか願いですか‥‥。
ぼくは60とか70になったときに、
自分がおもしろいと思う人たちが、
みんな売れていてほしいんです。
自分がおもしろいと思うクリエイターが、
それこそ三谷幸喜さんくらいの
場所にまで行っていてほしい。
そういう人たちのきっかけに
なりたいっていうのはずっとあります。
- 糸井
- なるほど。
- 佐久間
- ぼくの番組とか、ぼくの作るものって、
いろんなカルチャーをミックスするんですけど、
それは「お笑い」というものが
一番媒介になりやすいからなんです。
その人たちと作り上げたものに囲まれて、
読み手とか受け手として楽しみたいから、
まずはその人たちに
売れてほしいってずっと思ってます。 - あと、ぼくの年齢だと
まだやれるんじゃないかと思ってるのは、
そういう人たちと一緒に
日本のカルチャーをミックスしたもので
世界のフォーマットになるようなものを
作りたいという気持ちがあります。
この間はNetflixで
『トークサバイバー!』っていうのをやって。
- 糸井
- やってましたね。
- 佐久間
- あのときは完全に日本の
お笑いバラエティーの文脈で作ったんですけど。
- 糸井
- あれは信じ切ってるよね。
出てる芸人さんたちを。
- 佐久間
- ぼくはそこからはじまります。
まずはこっちが信じる。
その信じ切ってるのがあっち側にも。
- 糸井
- 伝わるよね。
- 佐久間
- 恐ろしさとして伝わるというか。
俺は信じ切ったから、
お前らがスベッたら終わりだよっていう(笑)。
- 糸井
- そのスリルがたぶん、
佐久間さんが発明した新しいお笑いですね。
- 佐久間
- あー、そうですね。
舞台は用意するっていう。
なので、まずは日本の文脈の中で
伝わるものを作ろうと思っていますけど、
いつか日本のお笑いカルチャーと
いろんなものをミックスしたもので、
世界を震わせたいなという気持ちはあります。
- 糸井
- 昔、はっぴいえんどの松本隆さんが、
一番進んでると思ったのがマンガだったから、
自分たちのレコードジャケットを
宮谷一彦さんや林静一さんにお願いしたという話を、
やっぱり受け手としてしゃべってましたね。
- 佐久間
- それはミュージシャンとしての
松本さんだけじゃなくて、
カルチャー好きの松本さんが錆びてたら、
そこにはたどり着かないですよね。
- 糸井
- 着かないでしょうね。
そこはなんなんだろうね。
自分を簡単に自然に低くできるのが、
やっぱり残る人なのかなぁ。
みんな自分を低くできるんですよね。
さっきからぼくが名前を挙げるような人も。
- 佐久間
- 木村さんとか、矢沢さんとか。
- 糸井
- 永ちゃんと釣りに行ったときも、
糸通して、ライン結んで、ルアー付けてって、
そういうのけっこう面倒なので、
ぼくが代わりにやってあげてもいいわけ。
- 佐久間
- ええ。
- 糸井
- あんまり釣りをやらない人を連れて行くときは、
代わりにやってあげたりするんです。
でも永ちゃんは「ちょっと待って」って言って、
ぼくの竿と自分の竿を同じ向きにして、
「教えて」って言うんです。
- 佐久間
- はーー。
- 糸井
- 「ここをこう通して」っていうのを、
全部同じにようにマネしながら、
全部「やらせて」って言う。
- 佐久間
- それはすごいですね。
自分の知らないジャンルに行ったら、
ちゃんと門外漢の立場に
立てるってことですよね。
そこは世界の矢沢じゃないんですね。
- 糸井
- ぼくの中にも両方があって、
「やってくれてありがとう」というのと、
「やらせて」という両方があるんだけど、
彼はやる必要があるっていうことを、
ぼくなんかよりもずっと深く思ってますね。
- 佐久間
- 本当に楽しむんだったら、
そういうのからやった方がいいって
わかってるってことなんでしょうね。
-
20年以上のサラリーマン生活で学んだ
佐久間さんの「仕事術」をまとめた本です。
タイトルに「ずるい」とありますが、
楽に仕事をするための「ずるさ」ではありません。
自分を消耗させず、無駄な戦いはせず、
まわりに疎まれることなく
やりたいことをやるにはどうしたらいいか。
若かりし頃の佐久間さんが悩み苦しみ
必死になって身につけた「62の方法」が、
出し惜しみされることなく詰め込まれています。
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