三國万里子さんが書いた初のエッセイ本
『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』が
この秋、新潮社から発売されました。
三國さんはニットデザイナーですが、
この本は純粋に文学としての力を持っている本です。
なにしろ、由緒ある出版社である新潮社さんが、
「この文章はすばらしい!」と絶賛して、
トントン拍子に出版が決まったのですから。
そんな文学界の老舗、新潮社。1896年設立。
神楽坂にある社屋も歴史と伝統があって、
ものすごくかっこよくて、いろいろおもしろいんです。
いつかこの場所を紹介したいなあと思っていた
Miknits担当のほぼ日乗組員みちこが、
ある秋の日、三國万里子さんといっしょに
新潮社のあちこちを見学させていただきました。
日本を代表する文芸出版社、新潮社ってどんなところ?

前へ目次ページへ次へ

第1回 新潮社さんの受付

 
こんにちは、ほぼ日のみちこです。
ほぼ日でMiknitsの担当をしています。
三國万里子さんの新刊のエッセイ本が新潮社さんから
出版されることになってとても喜んでおります。
出版の記念になにかコンテンツを‥‥と
思っていたところ、著者の三國さんから
こんな提案がありました。
「ほぼ日の『新潮社探検記』みたいなのが読みたいです。
10万部以上売れた本が並ぶ部屋とか、
平松洋子さんが通うと噂の社食に潜入してほしい。
有名な作家さんがカンヅメになるという部屋とか、
歴史ある装幀室とか、校閲の部署とか、
あちこち見学してレポートしてほしい」
新潮社さんといえば日本を代表する出版社。
私のようなあまり熱心に本を読まない者ですら、
新潮社さんから出版された本は何冊も読んでいますし、
学生時代はYonda?グッズにも応募してました。
とはいえ、私のような一読者が
取材にお邪魔してもよいものなのでしょうか‥‥。
ドキドキしながら三國さんの書籍の担当編集者の
松本太郎さんにメールしてみたところ、
「この日とこの日とこの日なら、
こんな順番で取材が組めそうです」と、
すぐに「ウェルカム!」なお返事をいただきました。
そうと決まれば、
このコンテンツの発案者の三國万里子さんをさそって
いっしょに行ってきました! 新潮社に!

▲入り口の看板からすでに伝統を感じてテンションがあがっています。
(撮影:三國万里子さん) ▲入り口の看板からすでに伝統を感じてテンションがあがっています。 (撮影:三國万里子さん)

みちこ・三國
こんにちはー。
松本
こんにちは。お待ちしてました。
今日は忙しいですよ。
どうかいろいろと見ていってくださいね。
みちこ
はい、よろしくおねがいいたします。

▲三國さんの担当編集者、松本太郎さん。
最近手がけられた書籍でおすすめの『砂まみれの名将ー野村克也の1140日』を手にポーズ。
ご自身もバリバリの球児だったそう。
ほぼ日との出会いは、『旅』編集部在籍時代に糸井重里と南伸坊さんの
「黄昏」コラボ企画を担当してくださったのがきっかけ。
2011年には『できることをしよう。―ぼくらが震災後に考えたこと』の編集も担当してくださいました。 ▲三國さんの担当編集者、松本太郎さん。 最近手がけられた書籍でおすすめの『砂まみれの名将ー野村克也の1140日』を手にポーズ。 ご自身もバリバリの球児だったそう。 ほぼ日との出会いは、『旅』編集部在籍時代に糸井重里と南伸坊さんの 「黄昏」コラボ企画を担当してくださったのがきっかけ。 2011年には『できることをしよう。―ぼくらが震災後に考えたこと』の編集も担当してくださいました。

松本
まずは受付・総務の取材からスタートです。
三國
新潮社の受付ってね、なんだかすごいのよ。
みちこ
私もうっすらですが、
すでにそんな予感がしてます。

▲この重厚感‥‥! ▲この重厚感‥‥!

工藤
はじめまして、新潮社総務部の工藤と申します。
受付を担当しております。
はじめまして、総務の森です。
松本
総務部の課長が森で、受付は、総務部の管轄なので
この二人に聞いていただけたら
受付のことはなんでもわかるかと。
みちこ
ありがとうございます。

▲左から森さん、工藤さん。 ▲左から森さん、工藤さん。

三國
新潮社の受付ってたくさん人が出たり入ったりするのに、
そのだいたいを受付の方がちゃんと把握している印象があって、
すごいなあと思ってたんです。
松本
新潮社の社員の顔は、だいたい覚えてます?
工藤
そうですね、だいたいは。
松本
ちなみに新潮社の社員は480人くらい。
みちこ
480人全員の顔を覚えてるんですか!
工藤
そうですね。
あとは出入りの多い印刷所の方とか製本所の方とか。
広告代理店の方も自然に覚えてしまいますね。
松本
そういう人は、いわゆる「顔パス」で。
工藤
そうですね。
三國
ときには、文学史に残るような、
作家の方もいらっしゃいますよね?
工藤
はい。今日はあの方が来るな、
身が引き締まるな、みたいなのはありますね。
みちこ
私たちがいま思いつかないような、
新潮社ならではの方もいらっしゃいますか?
工藤
たとえば、そうですね、
持ち込みの原稿をもってくる方も、ときどき。
そういう方には、募集要項をご案内して、
うちで主催している賞にご応募いただけませんか、
と対応したりしています。
三國
なるほど、なるほど。
みちこ
そういった、予約のない飛び込みの方にも
丁寧に対応されるんですね。
工藤
どの方もお客様かもしれないですし、
本は皆さん買ってくださるので。
みちこ
ああ、そうですね。
皆さん、本を買うかもしれないですもんね。
はーーー、なるほど。
松本
工藤さんは受付になって何年目くらいですか。
工藤
私は最初4年半くらいいて、いろんな部署を渡り歩いて、
また受付に戻ってきて6、7年くらい経ってるかしら。
みちこ
普通に人事異動で受付になるんですね。
工藤
そうなんです。
最初が受付で、次がネットワーク室。あと、メディア編集室。
それから管理部とか、営業部の受注とか。
途中産休とか入ったりして、出版企画部にもいましたね。

松本
あと、受付の業務としては、
接客以外に会議室の管理があります。
ぼくらが「何時から何時くらいまでお願いします」
みたいな曖昧なお願いをしても、
職人芸で、うまいことやってくれるんですよ。
みちこ
へーーー。
工藤
社内の人の会議だったら
特に問題はないんですけど、
来客の方がいらっしゃる会議や取材ですと、
「これ1時間っておっしゃってるけど、
もうちょっとかかるかも?」って判断して
ちょっとこっちで調整したりとか。
松本
ほんとうに助かってます。
あと、作家の取材日とかがあると、
1日に5件とか6件とか7件とか、
集中して取材が入るんですよ。
そういうときの受付は、応対も含めて、
本当に入れ代わり立ち代わりで‥‥。
工藤
受付チームで朝予定をみて、
一日の動きを入念に確認しますね。
松本
あと、ご覧のように、いま新潮社の本社は
営業しながら改装、修繕の工事をしているので、
社内で部署の引っ越しがあったりして、
会議室の管理もたいへんなんですよ。
そのへんは総務の森さんが苦労しています。
そうですね(笑)。
大きい会議室をつかって、
「ここの部署を改装するから、
みんなあそこに引っ越してください」って感じで、
フロアを空にして、改装して、また引っ越して、と
玉突き的にやっていて。
みちこ
わあ、大変‥‥。
松本
あと、みんな、なにかあると、
なんでも森さんに聞いちゃうんですよね。
普段の会議室を無理やり職場にすれば、
いろいろ不備が出るじゃないですか。
「森さん、あれがないよ」とか、
「森さん、暑いよ」とか(笑)。

いやあ、でも、いろいろ準備してるつもりでも、
思わぬことがあったりするんですよ。
「あ、あの部屋は電話線引いてなかった」とか。
三國
(笑)
で、いつまでに引かなきゃいけないとか、
慌てて手配してたら、
その部屋の入口にロッカーがあって。
電話線引く以前に、物理的に机が入らないよ、と。
みちこ
うわ(笑)。
だから、まず、ロッカーを使ってる5人に、
いつまでにロッカー空けてくれって言って、
その5人のロッカーの荷物を移してもらって‥‥
とかっていうのを1週間で処理する、
みたいなことが、あるんですよね。
で、それらがつつがなく終わって、
机が運び込まれたときに
「‥‥ああ、よかった」と(笑)。
みちこ
たいへんだー。

松本
そろそろお時間ですね。
みちこ
たくさんお話をきかせてくださって
ありがとうございます。
三國
ありがとうございました!
松本
つぎは装幀部に向かいます。

(つづきます!)

2022-11-23-WED

前へ目次ページへ次へ