2003年頃、コンピュータといえば、
アメリカのシリコンバレーが中心でした。
ざっくりいうと、いま「ほぼ日」があるのも、
シリコンバレーのおかげです。
その頃、日本からエンジニアとしてアメリカへ渡り、
シリコンバレーの会社で働いていた上田ガクさんに、
現地のことや働き方などについて
レポートしてもらいました。
あれから20年。
コンピュータやインターネットは
スマートフォンやさまざまなAI技術として
人々の日常に欠かせないものとなり、
デジタル産業は世界の経済に影響を与えるように。
さていま、シリコンバレーと呼ばれた場所は
どうなっているのでしょう？
現在は彼の地で起業している上田ガクさんに、
久しぶりにレポートをお願いしました。
大学の頃からコンピューターとインターネットが好きで、
2001年にシリコンバレーに渡り、
以来22年間シリコンバレーで生活している。
Yahoo!、Google、Twitterなどのテック企業で
ソフトウェアエンジニアやエンジニアリングマネージャーとして
会社の急成長を中から見てきた。
2014年にセンサーや機器もインターネットに参加させる
Internet of Things (IoT)の
スタートアップの会社MODE, Inc.をアメリカで起業し、
今はシリコンバレーの次のグローバルな働き方について
日々考えている。
好きな食べ物はハンバーガー。
- ベンチャーキャピタルを巡って
投資してくれる人を探していると、
いつかは自分たちの会社を気に入ってくれる投資家に
出会います。 - ミーティングであったベンチャーキャピタルの人が
投資しようと思った後は、
まずベンチャーキャピタル内で情報共有をし、
「いい投資先が見つかったんだよ」と
他の同僚に話をするようです。 - 第２回のミーティングに呼び出されます。
このときは、最初に話した人の他に、
同じように投資を行っている同僚が
１人か２人一緒に出てきて、質問の嵐になります。 - どんな製品なのか、デモを見せたり、
どういうお客さんと話をしたのか、
どれぐらい売る計画あのか、などなど、
あらゆる質問に答えなくてはなりません。 - このミーティングでは多分、
同僚から見てもこの会社は良さそうじゃない？
という確認をするためのもののようです。 - このミーティングがうまくいくとまた連絡があり、
今度は最初に話したベンチャーキャピタルの人と、
お金の担当の人とのミーティングになり、
「タームシート」が提示されます。
このタームシートというのは
簡単に言うと投資のオファーです。
こういう条件で、（例えば）$1M投資するよ、
というような感じです。 - タームシート自体は紙切れ１ページか２ページほど。
４、５分あれば読める短い文章です。 - 自分の会社のチームにこれを持ち帰り、
顧問弁護士に
「これって普通の条件？」というような感じで
常識について質問をし、OKであれば、
タームシートを受け入れる連絡をします。
「タームシートをアクセプトする」といいます。 - ちなみにスタートアップは起業準備のために、
顧問弁護士を雇っているのが普通です。
最初の会社登記から、最初のいくらかまでのお仕事は
無料キャンペーンをやっているのです。 - さて、これでほぼ90%、
投資が受けられることが決定です！ - ここから、デューデリジェンスといって、
会社についての情報の確認が始まります。 - 本当に存在する会社なのか、
会社のオーナーは誰で、
税金はちゃんと払っているのか、等々、
嘘をついていたり、まずいことをしていないことを
確認する作業が２、３週間。 - 実際の投資の契約書は２、３ページということはなく、
たくさんの書類にサインする必要がありますが、
毎年100も200ものスタートアップが
このプロセルを経ていくわけなので、
ほぼ弁護士による流れ作業で進んでいきます。 - そして、このデューデリジェンスが終わると
いよいよお金が振り込まれます。 - 弁護士経由で会社の銀行口座情報を送り、
契約日を決定します。 - そして、その当日。
「契約完了だよ」と弁護士に言われて
数時間後に銀行口座をチェックすると、
本当に$1M、1億円以上のお金が振り込まれています。 - ちょっと前まで数十万円しか入っていなかった銀行口座に
１億円以上のお金が入ると、
現実ではないような気がします。 - 資金を得て、友達と２人で始めた会社は、
会社ごっこから本当の会社へと一歩を踏み出します。
この資金を使って、小額ですが、
自分たちにも初めての給料を支払いました。 - そしていよいよこの資金で
社員となってくれる仲間を雇い、
ようやく本当の会社としての道を歩みはじめます。
（しばらくお休みします。再開をおたのしみに。）
2023-07-10-MON