田原総一朗さんのTwitterで
ほぼ日の「ドコノコに大変助けられました」と
書いてくださっているのを見つけました。
ドコノコを‥‥田原さんが?!
驚いた私たちは、田原さんと、
犬のハンナちゃんに会いにいきました。
田原総一朗(たはら そういちろう)
1934年生まれ。
1960年に早稲田大学を卒業、岩波映画製作所に入社。
1964年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に
開局とともに入社。
1977年にフリーになり、
テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」
「サンデープロジェクト」で
テレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。
現在も「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日系)
「激論!クロスファイア」(BS朝日)の
司会をはじめ、テレビやラジオの出演を多く続ける。
おもな著書に、『日本の戦争』(小学館)
『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』(講談社)
『コミュニケーションは正直が9割』(クロスメディアパブリッシング)
『さらば総理 歴代宰相通信簿』(朝日新聞出版)など。
Twitter https://twitter.com/namatahara
YouTubeチャンネル https://onl.sc/Vr4zxwh
公式サイト https://www.taharasoichiro.com/
- ──
- 私(ほぼ日スガノ)は学生だったときからずっと、
月末の金曜になると
田原さんの「朝まで生テレビ!」を
観てきました。ときには
「こんなテーマをとりあげるの?」
「この人とこの人を対面させるなんて、
タブーじゃないの?」
と思いました。
でも、敵対する両者が直接会うと、
話が意外と通じたりするのです。
それがいつも不思議でした。
- 田原
- 直接会うと問題は起きないんです。
だからね、いちばんの文句は、
本人に言うのがいい。
- ──
- 面と向かって。
- 田原
- とくに権力者はそうです。
- 和田
- 敵対するような位置にいて、
「朝生」ではじめて会って
討論し終わったあと話し足りずに
「このあと飲みに行こう」という人たちも
いらっしゃいますよ。
- 田原
- 番組で防衛問題を扱った日もね、
賛成派と反対派で大討論して、
最後は一緒に飲みにいったりするわけです。
世界を滅ぼそうなんて人はいない。
みんな、よくしようと思っているわけだから。
- ──
- 敵対する人たちがおなじ場所にいて、
対等にぶつかって話をするのは、
重要なことですね。
- 田原
- そう、とても大事なことです。
あのね、本音で、ね。
- ──
- わかりました。本音で。
- 田原
- そう。
- ──
- 今日、田原さんにお話をうかがうのだ、と、
かなり緊張して来たのですが、
ハンナちゃんがいてくれたおかげか、
ガチガチにならずにすみました。
- 田原
- あ、だいたい仕事の仲間はね、
緊張しません。
- ──
- そうなんですか。
- 和田
- ほんと、それはそうですね。
父に対して緊張する人はいません。
- 田原
- だって、本音でしゃべっているから。
- ──
- ハンナちゃんがいるからではなかったのか‥‥。
- 田原
- みなさん、緊張することはない。
ぼくも緊張しません。
誰に対しても、総理大臣でもそうです。
- ──
- 田原さんがどなたかに対するときも、ですか。
- 田原
- だっていつも本音でしゃべるから。
- ──
- そうか‥‥空気を読む必要がないのだから、
緊張はしないですね。
- 田原
- そういうことです。
- ──
- 田原さんに緊張やストレスが
ないということは、
おうちに帰ってホッとする瞬間や、
リラックスタイムも、
特に必要はないということでしょうか。
- 田原
- うーん、リラックスするために、
なにかしたいということは、
まったくないです。
- 和田
- 必要というか、
リラックスとかって、父はたぶん
わかってないと思います(笑)。
- 田原
- ははは。
- ──
- みんながそうなれればいいですね(笑)。
- 和田
- そうですよね。
父が空気を読まないぶん、
周りのみなさんは、いつも
そうとうたいへんな思いをなさっています。
- 田原
- あのね、たとえば「朝生」に
非難が殺到するでしょう。
そんなとき、ぼくはみんなに
「遠慮するな!」と伝えます。
それは歓迎だから、と。
- ──
- 炎上すると、
ふつうは落ち込んだりしますよね。
- 和田
- 父はSNSもやっているんですが、
本人はガラケーしか持ってないので、
炎上をあまりわかってません。
でも炎上すると、
スポーツ新聞に出たりはしますよね。
そんなことがあれば、すごく喜んでます。
- 田原
- 「話題になってるみたいだな」ってね。
- ──
- 話題になるのは、
うれしいことでしょうか。
- 田原
- 無視されるより、はるかにいいよ。
- ──
- 田原さんが昔、インタビューで
「いいことをやっていても、視聴率が悪かったらダメ。
視聴率は、いいほうがいい」
とおっしゃっていたことが印象深くて。
- 田原
- そりゃそうです。
- ──
- 「ほぼ日」も「ドコノコ」も、
たのしいことをやっていても、
人気がなかったら意味がないのでしょうか。
- 田原
- だってね、やっぱり、
せっかくやるんだから、
見てくれる人がいたほうがいいですよ。
ぼくね、テレビ東京にいたんですよ。
若いころね。
- ──
- はい。
- 田原
- いくら企画を出しても通んない。
なんで通らないかっていうと、
スポンサーがつかないからです。
- ──
- ああ、斬新な内容であればあるほど。
- 田原
- そうそう。
だから自分でスポンサーを
捕まえてくるしかなかった。
- ──
- どうやって捕まえるんですか。
- 田原
- 口説きゃいいだけじゃん。
- ──
- 本音で。
- 田原
- 本音でね。
スポンサーがついてくれれば、番組ができます。
放送して人気が出て視聴率があがってきたら、
こんどは会社のもうけが出る。
するとまた、自分の企画ができるんだよ。
- ──
- ああ、人気があればあるほど、
やりたいことを続けていけるんですね。
- 田原
- そういうことです。
あのね、いまほど、
おもしろい時代はないんですよ。
ようするに、こんなおもしろい時代はない。
- ──
- どういうことでしょうか。
- 田原
- いまは、学者にしても、経営者にしても、
政治家にしても、
専門家がみんな自信を持ってない。
はっきり言えば、
総理大臣にしても、この国を
どうすりゃいいのかって、
あんまり自信持っていないんだ。
- ──
- これまでの専門家や総理大臣には、
自信があったのでしょうか。
- 田原
- ほんとは、誰もが持ってないんだ。
でも、中曽根(康弘)さんにしたって、
田中角栄もね、
「どうしようか」「迷ってる」と、
相談をしてくれるんですよ。
でもいまは、そんな本音をいうと、
偉くなれないでしょう。
要は、きちんと本音で意見を言えない、
こういう時代に日本が入ってるんですよ。
- ──
- なるほど。
本音を出さないうちに、問題がうやむやに。
- 田原
- でも、それを変えていかなきゃいけないんでね。
やっぱりね、こっちから本音でしゃべりゃ、
相手も本音で応えてくれるんですよ。
それがいま、必要なんだ。
- ──
- つまり、私たちメディアがまず、
本音で聞かないといけない。
- 和田
- ハンナから話が脱線してしまっていますけど‥‥。
- ──
- あ‥‥でも犬は、
そのへん、とってもよくわかりますよね。
- 田原
- そうですね。
犬は、本音で生きている人をわかります。
- 和田
- 犬も本音ですね。
- ──
- そうですよね、犬もいつも本音だし、
本音で生きている人のほうが
犬と気持ちが通じる気がします。
- 田原
- 犬はそこがいい。
なんにもないのがいい。
- 和田
- でもハンナは、
空気は読まないけど、
心配はしますよ。
- ──
- そうなんですか。
- 和田
- 父はもともと電話魔で、
起床時やお風呂に入るときなどに、
いつも電話をしてくるんですよ。
でもこの前、「いまからお風呂入るね」と
電話がきたっきり30分、連絡がなかったんです。
いつもカラスの行水なのに心配になりました。
こっちから電話してもぜんぜん出ない。
「これは、倒れたかな?」と思って、
見に行こうとしました。
するとハンナが
耳を立ててプルプル震えていたんです。
- ──
- 察知してるんですね。
- 和田
- 震えるハンナといっしょに
父の家に行ったら、ただ
「長風呂してた」ですって。
- 田原
- そしたら、ハンナが安心しちゃってね。
- 和田
- ハンナ、すぐに走り回りました。
- ハンナ
- ワン!
- ──
- 安心してよかったね。
わかるんだね。
- 和田
- ハンナ、おじいちゃんとこ行く?
- 田原
- 抱っこしようか。
- 和田
- ね、おじいちゃんとこに‥‥
ああ、行かない。
- 田原
- ダメだ。
- ──
- 寄り添うぐらいで(笑)、
最後のツーショットを撮りましょう。
- ──
- ああ、かわいい。
ありがとうございました。
田原さん、私たち「ほぼ日」も「ドコノコ」も
これから本音でがんばります。
- 田原
- がんばってください。
- 和田
- おいでくださってうれしかったです。
- 田原
- ありがとうございました。
- ──
- ありがとうございました。
(おしまいです。ありがとうございました)
2023-07-01-SAT