こんにちは、ほぼ日の奥野です。
長年、長渕剛さんのファンなんですが、
長渕さんソックリに
長渕さんの歌を歌う人に出会いました。
Takuya Nagabuchiさんが、その人。
いわゆる「ソックリさん」に対しては、
ファンであればあるほど、
「厳しい目」を向けがちなものです。
しかしながら、Takuyaさんの歌には、
並み居る長渕ファンの先輩方も、
すっかり舌を巻いているご様子。
だから、たしかめに行ったんです。
そしたら「感動してしまった」のです。
Takuyaさんの声に、その姿に。
なぜ俺は、「偽物」に、こんなにも?
自分で自分がわからなくなり、
こうして
インタビューを申し込んだ次第です。
「なぜ俺は『偽物』に感動したのか?」
あつくるしいファン2名による
ただのおしゃべりになっていましたら、
たいへん申しわけございません。
Takuya Nagabuchi
ご本人いわく「究極の長渕剛ファン」。長渕剛さんの「デビュー時からの変遷」を年代別に再現できるという唯一無二のパフォーマンスで、テレビやラジオに多数出演、著名人・芸能人の長渕剛ファンからも一目置かれている存在。「モノマネ」や「そっくりさん」などのお笑い枠とは一線を画しており、新たな音楽ジャンルとして未知なる領域を開拓すべく日々活動している。長渕剛さんの音楽を、次の世代へ、またこれまで馴染みが薄かった人へも「クラシック音楽や古典芸能が代々受け継がれていくように、一切の誇張なくストレートに伝えたい」という。実際にインタビューさせていただいたら、しゃべり声まで似ていました。
- ──
- Takuyaさんのライブの最後に、
お客さんからリクエストを受け付ける
コーナーがあるじゃないですか。
- Takuya.N
- ええ。
- ──
- あれ、観ていてハラハラするんですよ。
- Takuya.N
- どうしてですか(笑)。
- ──
- 何十年も長渕さんの曲を聴き込んできた
歴戦の猛者的な先輩方が、
「83年西武球場バージョンの『乾杯』」
とか、無茶なリクエストを
ふつうにしてきたりするじゃないですか。 - Takuyaさんはできちゃうわけだけど、
あのマニアックさでこられたら、
いつか、
できない曲がでてくるんじゃないかなと。
- Takuya.N
- いまんとこないですね。
もう、まったくぜんぜんダメというのは。
- ──
- だいたい、できる?
- Takuya.N
- 曲によっては
反対に「何年バージョンがいい?」って、
聞き返してるくらいだし。
- ──
- そうか(笑)。
- 以前、パリのオランピア劇場に入ったら、
The Analoguesという、
オランダのバンドがライブをやっていて。
- Takuya.N
- ええ。
- ──
- まったく知らないで入ったんですけれど、
その人たちは、
ビートルズの完全コピーバンドなんです。
トリビュートバンドというより、完コピ。 - ビートルズのアルバム収録曲を、
ライブで完全に再現するという人たちで、
アルバム内で使われている当時の楽器を、
シンセサイザーとかに頼らず、
実際に演奏するのはもちろんなんですが。
- Takuya.N
- はい。
- ──
- この人たち徹底してる‥‥と思ったのは、
『Abbey Road』収録の
「Maxwell's Silver Hammer」って曲のとき、
バンドの中に、
「鉄床(かなとこ)」みたいなのを、
金槌で
カンカン叩くだけの役の人がいたんです。
- Takuya.N
- へええ。
- ──
- そのとき、規模とか形態とかは違うけど、
この人たちのやってることと、
Takuyaさんがやってることって、
根っこは同じだなあ‥‥と思ったんです。 - どっちも、本家のことが大大大好きで、
最大級のリスペクトの表現として、
寸分たりとも違わない
完全コピーを目指していてるんだ。
その思いが伝わってくるから、
意味わからないけど感動するんだ、と。
パリの寒い夜に、
日本のTakuyaさんに思いを馳せました。
- Takuya.N
- ハハハ、ありがとうございます。
- ただ、いつの放送かはかわかんないけど、
剛さんが、
オールナイトニッポンで弾き語りしてた
あのときのバージョンで‥‥
とか言われても、
ちょっと難しいことはありますけどねえ。
- ──
- そんなの、もう、そうでしょう(笑)。
- Takuya.N
- まあ、その場合も、
何となく、頭にはあることが多いですが。
- ──
- あるんだ(笑)。
- でも、こうしてお話をうかがっていても、
ひとりの人に、
ここまでのことをさせてしまうのって、
本当に、すごいことだなあって思います。
- Takuya.N
- 本当ですね。剛さんのすごさ、ですね。
- ──
- 95年、長渕さんがいわゆる禊を済ませ、
東京ドームで復帰したときに、
長渕さん、ステージから降りてきて‥‥。
- Takuya.N
- はい、はい。
- ──
- そしたら、ファンの人たちが
すごい勢いで駆け寄っていっちゃって、
長渕さんが押しつぶされそうになって、
そこでいったん
ライブが中断した‥‥という出来事を、
ご存知ですか。
- Takuya.N
- ええ、有名ですもん。
- ──
- ぼく、そこにいたんですよ。
- Takuya.N
- いたんですか!
- ──
- 最初、まわりの人たちが
長渕さんに向かって走り出してくのを、
呆気にとられて見てたんですが、
これは本当に本当になんですが、
無意識のうちに
自分の身体も動いちゃってたんですよ。
なんでか、わかんないんだけど。
- Takuya.N
- え、助けに行ったってこと?
- ──
- わかんないです。
その前後の記憶がほとんどないんです。 - 気がついたら自分の身体も動いていて、
さらに次、気づいたときには、
床に転んで、めっちゃ踏まれまくって。
- Takuya.N
- あぶないあぶないあぶない。
- ──
- 靴が片っぽ脱げていて、
どっかへ、飛んでいっちゃってました。 - そこは自分の席の目の前で、
長渕さんからめちゃくちゃ遠い地点で
はやくもすっ転んでたので、
だから、助けるも何もないんですけど。
- Takuya.N
- 決してほめられることじゃないけど、
みんな、
ずーっと「待ってた」んでしょうね。 - そういう気持ちが
きっと、あったんだろうと思います。
ぼくは話でしか聞いたことないけど、
演ってた曲は「勇次」ですよね。
- ──
- あ、よくご存知で。
- Takuya.N
- 剛さんがワイヤレスマイクを持って、
ステージを降りてしまった。 - で‥‥もみくちゃにされちゃった。
それでも
サポートギタリストの笛吹利明さん、
浜田良美さんのふたりは、
「勇次」の演奏を止めなかった‥‥。
- ──
- そうそう‥‥。
- Takuya.N
- で、ようやくステージに戻ってきた
剛さんは
衣装の片袖がない状態で、
頭のバンダナも、はぎとられていて。
- ──
- そこまで詳細に覚えてないです。
- Takuya.N
- その状態で、こう言ったんですよね。
- 「俺がファンだったら、
同じようなことをしたかもしれない」
「だから
気分が悪くもないし、良くもねえや」
- ──
- ああ‥‥。
- Takuya.N
- で‥‥。
- ──
- はい。
- Takuya.N
- 「ただ、次来たらぶっ飛ばすぞ!」
- ──
- いいなあ!(笑)いや、もっともだし、
すみません、笑いごとではないです。 - でも、じつに不思議なのは、
その場にいなかったTakuyaさんが
どうしてそこまで、
まるで
見てきたかのように知ってるかですよ。
- Takuya.N
- だから‥‥そのころから、ですよね。
空手をはじめて、
身体を鍛える方向へ向かったのって。 - それはたぶん‥‥その事件で、
身の危険を感じたからなのかなって、
ぼくは思ってるんですけどね。
- ──
- なるほど‥‥ぼくは、
何で長渕さんが身体を鍛えてるのか、
ずっとわからなかったけど、
富士山のオールナイトライブを見て、
こりゃあ身体を鍛えなきゃ無理だな、
とは、単純に思ってたんです - だって、夜の9時から朝の6時まで
ほぼぶっ通しで歌ったわけで、
最後のほうは
地べたに座って観てたぼくらでさえ、
ドロドロになっていたのに。
- Takuya.N
- ええ。
- ──
- でもそうか、時期も含めて考えたら、
そういうことなのかなあ。 - さすがの洞察ですね。
いま、自分の浅さを深く恥じました。
- Takuya.N
- いえいえ(笑)。
- ──
- でも、Takuyaさんには、
そういう思い出をわかちあえる人が、
同世代には
なかなかいないってことですけど、
こういう話って、
じゃあ、だいたい年上の人とですか。
- Takuya.N
- そうですね。
- 気軽に友だちとは言えないくらいに
年齢も違うし、
生きてきた環境も違うんですけど、
でも、剛さんが好きという一点で、
出会って数年なのに、
もう何年も昔から知ってたというか、
一緒に生きてきたような感覚で、
話をすることができる人もいますね。
- ──
- わかります、その感じ。
- 同じ人を見てきた、
同じ音を聴いてきたっていう事実は、
かなり大きいですもんね。
その人を通じて、
世の中と繋がってたようなところが、
ありますから。
- Takuya.N
- 情景を共有してる感じがあるんです。
- どんなにバラバラな場所とか時代を
生きてきた人でも、
同じ剛さんの歌を歌うことができる、
そのことを通じて、
同じ情景を共有しているという感じ。
- ──
- ぼくは「LICENSE」という曲の‥‥
あのイントロの、
たんたんとしたギターの音色を聴くと、
歌詞の中の世界観なのかな、
反射的に、
脳裏にぱっと浮かんでくる情景‥‥
色とか匂いみたいなものがあるんです。
- Takuya.N
- わかります。ぼくは、
あの歌詞の場所を訪れたことがあって。 - 幼少期に剛さんが住んでいた
鹿児島の唐湊(とそ)って町へ行って、
通っていた幼稚園の前で、
ここかあって、中を覗いていたら‥‥。
- ──
- 不審者‥‥(笑)。
- Takuya.N
- 幼稚園のバスの運転手のおじさんが
降りてきたんで、
注意されるかなと思ったんですけど、
すいません、
自分は長渕剛さんのことが大好きで、
名古屋から来たんですが、
決して怪しいもんではないです、と。 - なので、ちょっとだけ、
中を入らせてもらったりとかしたら
ダメですかねって聞いたら
「いいよいいよ、入っておいで」と。
- ──
- そんな、気軽に?
- Takuya.N
- でも、足を踏み入れた瞬間に、
こわい園長先生が出てきて
めちゃくちゃ怒られるのかなあと
思いながら入ってったら、
「ここ座ってて。お茶でも飲む?」
って言ってくれたんです。
- ──
- その運転手さんが?
- Takuya.N
- そう、でもまずここの責任者の方に
ご挨拶したいですって言ったら、
「いいよ、ぼくが園長だから」って。
- ──
- なんと(笑)。
- Takuya.N
- その園長さんは、
ぼくは、長渕さんのお姉ちゃんと
同級生だったんだとか、
もう、実家の跡地には行ったのか、
え、行ってないんだ、
じゃあ
案内してやるからおいでとかって。 - いまは駐車場になってる実家跡で、
このへんに玄関があって、
どうのこうのって説明してくれて。
- ──
- つまり‥‥何十年も前、そのあたりに
「むきだしのプロパンガス」とか、
「コールタールの壁」とか、
「壊れかけた雨戸」があったんだ‥‥。
(※「LICENSE」の歌詞より)
- Takuya.N
- 誇らしいんだと思います、やっぱりね。
園長先生も。 - 剛さんのインタビューを読んでいると
出てくるんですけど、
お父さんとよく行った銭湯も見て。
そして踏切を渡ると、川が流れていて、
ふと‥‥その向こう側に目をやったら。
- ──
- もしかして‥‥!
- Takuya.N
- そう、「繊維工場」があったんです。
- ──
- ♪繊維工場の煙‥‥の! あの‥‥。
(※「LICENSE」の歌詞より)
- Takuya.N
- ああ、「LICENSE」だと思いながら。
この情景全体が、あの歌なんだって。 - そのへんで、幼い剛さんが、
母ちゃんに手を引かれてたんだって。
- ──
- 買い物かごを下げた、お母さんに。
- Takuya.N
- 自分がやらせてもらっていることの
最初のきっかけになった、
あの名古屋の大きなライブの直前、
10日間くらいかけて、
はじめて九州各地をめぐったんです。 - かつて剛さんが生活した街だったり、
立ったであろう場所から、
できるだけ、少年の目線を意識して、
あたりを見回してみたんです。
- ──
- ああ、少年のころの、
長渕さんの気持ちを追体験するために。
- Takuya.N
- そうすることで、
剛さんみたいに、歌えるのかなあと。
- ──
- ああ‥‥。
- Takuya.N
- そうすることで、俺は、
少しでも、あの人に近づけるかなあと。 - そう信じて、あたりを見回したんです。
- ──
- なりたいんですね、やっぱり。
Takuyaさんは、長渕剛という人に。
- Takuya.N
- なりたいですね。
決して、なれはしないんですけどね。
(おわります)
2021-12-31-FRI
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Takuya Nagabuchiの最新情報は
YouTubeなどでチェック!まず、すぐにアクセスできるものとしては、
毎週金曜日の22時~23時に、
YouTubeライブによる生配信のラジオを
配信してらっしゃいます。
これ、話し声まで似てるんですよ‥‥。
もちろん弾き語りも披露してくださいます。
年の瀬12月30日(木)には、
今年最後のオンラインライブも開催予定。
参加者は、事前にメッセージを送ったり
リアルタイムのチャットで
曲のリクエストもできるということです!
生で聴くのもいいんですけど、
まずはオンラインから、体験してみては?
配信時間や参加方法など、
くわしくは配信チケットの販売ページで。