こんにちは、ほぼ日の奥野です。
長年、長渕剛さんのファンなんですが、
長渕さんソックリに
長渕さんの歌を歌う人に出会いました。
Takuya Nagabuchiさんが、その人。
いわゆる「ソックリさん」に対しては、
ファンであればあるほど、
「厳しい目」を向けがちなものです。
しかしながら、Takuyaさんの歌には、
並み居る長渕ファンの先輩方も、
すっかり舌を巻いているご様子。
だから、たしかめに行ったんです。
そしたら「感動してしまった」のです。
Takuyaさんの声に、その姿に。
なぜ俺は、「偽物」に、こんなにも?
自分で自分がわからなくなり、
こうして
インタビューを申し込んだ次第です。
「なぜ俺は『偽物』に感動したのか?」
あつくるしいファン2名による
ただのおしゃべりになっていましたら、
たいへん申しわけございません。
Takuya Nagabuchi
ご本人いわく「究極の長渕剛ファン」。長渕剛さんの「デビュー時からの変遷」を年代別に再現できるという唯一無二のパフォーマンスで、テレビやラジオに多数出演、著名人・芸能人の長渕剛ファンからも一目置かれている存在。「モノマネ」や「そっくりさん」などのお笑い枠とは一線を画しており、新たな音楽ジャンルとして未知なる領域を開拓すべく日々活動している。長渕剛さんの音楽を、次の世代へ、またこれまで馴染みが薄かった人へも「クラシック音楽や古典芸能が代々受け継がれていくように、一切の誇張なくストレートに伝えたい」という。実際にインタビューさせていただいたら、しゃべり声まで似ていました。
- ──
- 自分はゴッホという画家が好きなんです。
- Takuya.N
- ゴッホ。
- ──
- なので、いろんな人に
ゴッホ関係のインタビューをしてまして。 - 少し前には、
日本のゴッホ研究の第一人者と言われる
大阪大学の
圀府寺司(こうでら・つかさ)先生にも、
光栄なことに、
インタビューさせていただいたんですね。
- Takuya.N
- ええ。
- ──
- 圀府寺先生は、
倉敷の有名な大原美術館で所蔵している
ゴッホの
《アルピーユの道》という作品を見て、
いたく感動されてゴッホ研究を志し、
いまでは日本一の研究者になったんです。
- Takuya.N
- すごいですね。
- ──
- それこそ、幼いTakuyaさんが、
『とんぼ』を見て衝撃を受けたみたいに。 - でも、圀府寺先生が見て感動したという、
その《アルピーユの道》って‥‥
のちに贋作つまり
ニセモノだったことが判明したんですよ。
- Takuya.N
- ええっ!
- ──
- 将来の職業まで決めちゃった「感動」が、
ゴッホからじゃない‥‥
もっといえば
ニセモノから受けたものだったんですよ。 - つまり、そのことを聞きに行ったんです。
国府寺先生に、
それってどういうことだと思いますかと。
- Takuya.N
- ええ、ええ。
- ──
- 国府寺先生は、こうおっしゃってました。
- たしかに、
自分が見たのはゴッホの絵じゃなかった。
でも、
あの絵から受けた感動は本物だった、と。
- Takuya.N
- ああー‥‥。
- ──
- ぼくが、Takuyaさんのライブを観て
覚えた感動も、
いまの話に似てるな‥‥と思ったんです。 - 決して「本物」じゃない‥‥
つまり「ニセモノ」にはちがいないです。
だって本人じゃないんだから。
- Takuya.N
- そうですね。
- ──
- でも、あの感動は本物だった。
あのとき、心が震えたのは事実なんです。
- Takuya.N
- そうですか。
- ──
- 絵画のたとえで言うなら、
Takuyaさんの歌は、
「真似して描きましたんで、5万円です」
みたいな「複製画」じゃない。 - もっと、「念」のようなものがこもった
「贋作」なんだ‥‥と思ったんです。
ただの表面的なコピーじゃなく、
過去の長渕さんのインタビューとかも
片っ端から読み込んで、
あくまで、「本物になろう」としている。
その意味での「贋作」なんだなって。
- Takuya.N
- なるほど。
- ──
- で、一流の「贋作」というものは、
やっぱり魅力を放ってるんだと思います。 - 何ていうか、人を騙してしまうくらいの、
いい知れぬ魅力‥‥を。
- Takuya.N
- ぼくは、自分自身のことを
「一流のニセモノ」でありたい‥‥と
常々、思っているんです。 - で、あるとき、そのことにたいして、
ひとりのお客さんから
「ニセモノって言わないでください」
と、言われたことがあるんです。
- ──
- その気持ちは、何となくわかる。
- Takuya.N
- 逆に、昔からの剛さんファンの女性から
「あなたのことを、
わたしは、どう捉えていいかわからない」
と言われたこともあります。 - 「ライブは、すごくよかった。
あなたは、歌も、ギターもじょうずだし、
長渕剛のこともよく知ってる。
感動しました。
だけど、わたしは、
長渕剛さんのファンをずっとやってきた。
だから、
あなたのことを、どう捉えたらいいのか。
いま、わからなくなっています」って。
- ──
- それも、うなずける‥‥。
- Takuya.N
- はい‥‥としか、言えませんでした。
- その女性が剛さんを追いかけてきた
何十年のことを思うと、
俺はもう、何にも言えなくなります。
- ──
- ご本人を好きであればあるほど、
そこらへんの気持ちは、
混乱しちゃうかもしれませんね。 - ぼくにしたって、
数年前、Takuyaさんのライブに行って、
「感動」するだなんて、
これっぽっちも思ってませんでしたから。
- Takuya.N
- ええ。
- ──
- 国府寺先生のときも思ったけど、
本物って何だ、ニセモノって何なんだと、
そんな気持ちにも、なりました。 - すごく不思議な感覚で、
ただ、本物の長渕剛がいなかったら‥‥。
- Takuya.N
- もちろん、もちろん。
- ──
- 成立しないのは、当然ですよね。
- だからぼくは、こんなにも似ているけど、
まったく別物なんだと思っています。
- Takuya.N
- 別物?
- ──
- 別の、本物‥‥というか?
- いや‥‥うまく表現できないんですけど、
長渕さんにソックリの声で、
長渕さんの歌を歌っている、
でも本人とはまったく別の、
そういう本物‥‥というか。
長渕さんを、ソックリにコピーしている、
そういう本物の人というか‥‥
言ってることが自分でもわかんないけど。
- Takuya.N
- いや、でも、理解はしてるんです。
自分が混乱させてしまう存在ってことは。
- ──
- あの、なりたかったわけじゃないですか。
Takuyaさんは、「長渕剛」に。
- Takuya.N
- はい。
- ──
- それは、いまでも?
いまでも、なりたいと思っていますか。
- Takuya.N
- 思ってますね。
- ──
- 思ってますか。
- Takuya.N
- 思ってますね。なれないんですけどね。
- ──
- なれない。
- Takuya.N
- なれないんですよ。絶対に、なれない。
- でね‥‥なれないということは、
いちばんわかってるんですよ、自分が。
- ──
- ああ‥‥。
- Takuya.N
- うん‥‥それなのに、わかってるのに、
自分は、
まだ「なりたい」と思ってるんですよ。 - だからこそ、ひとつひとつのライブを、
毎回毎回
とことんまで突き詰めてやってますし、
一曲一曲の歌を、
精一杯、全身全霊で歌っているんです。
- ──
- はい。
- Takuya.N
- でも、今回は衣装がダメだったなとか、
歌い方もちょっと甘かったなとか、
ハモニカもミスっちまったな‥‥とか。
- ──
- ええ。
- Takuya.N
- 毎回毎回、思うんです。
だから、もっとクオリティを高めたい、
次はもっとやってやる、
そういう気持ちばっかり‥‥なんです。 - ちょっとずつ、ちょっとずつ、
時代時代の「完成形」を目指している。
そういう感じかなと思います。
- ──
- なれないけれども、近づきたい。
- Takuya.N
- そうですね。少しでもいいから。
- ──
- 一瞬だけ長渕剛ファンの人向けの話を
させてもらいますと、
自分も小学校から聴いてきて、
結局どの曲が好きなのか問われたら、
そんなの難しすぎると思いつつ、
たぶん、
「交差点」と「何の矛盾もない」だと、
答えるんです。
- Takuya.N
- ええ。
- ──
- とくに「何の矛盾もない」は、
87年の『LICENSE』ツアーの映像で、
客席の女性が、
涙をこらえているような、
祈るような感じで、聴いていますよね。
- Takuya.N
- はい。
- ──
- 俺あんなにいい歌は他にないと思う。
- 間奏部分が長いんで、
カラオケだと入れにくいんですけど。
- Takuya.N
- ハハハ。たしかに。
- ──
- Takuyaさんの「何の矛盾もない」も、
やっぱり、よかったですよ。 - 本物ではね、ないんだけど。
- Takuya.N
- ああ、ありがとうございます。
- ぼくも、「何の矛盾もない」は、
ラブソングの中でいちばん好きですね。
これやってると、よく聞かれるんです。
結局いちばん好きな歌ってなんですか、
みたいなことを。
でも、答えはいつも、
いちばんなんて決められないよ、です。
- ──
- はい。各ジャンル別で言った場合、
これがいちばんかな、ならあるけれど。 - 歌っていて気持ちいい曲っていうのは、
じゃあ、何かありますか?
- Takuya.N
- んー、昔はそうでもなかったんですが、
最近、歌っていて気持ちいいし、
すばらしさに気づいた歌っていうのが、
「明け方までにはケリがつく」です。
- ──
- ああーーーー‥‥いい。
- Takuya.N
- あれは、何て言うのか‥‥。
- ──
- いや、そうだ、
たぶん自分はTakuyaさんのライブで
「明け方までにはケリがつく」を、
はじめて生で聴いたんです。 - で、この曲すごくいいなと思ったんだ。
- Takuya.N
- 本当ですか。
- ──
- はい、いま、ハッキリ思い出しました。
この歌めちゃくちゃいいなあ‥‥って。
- Takuya.N
- うれしいです。
- ──
- あの『昭和』というアルバムには、
本当に名曲ばっかり入っていますけど、
「明け方までにはケリがつく」の
どういうところがいいなと思いますか。
- Takuya.N
- 情景が浮かぶんです。
- あの、誰もいない工事現場の駐車場に
腰を下ろしてる‥‥剛さんとか。
ひとりでトボトボ歩いて、
そこらへんの空き地でうなだれながら、
空を見上げているような‥‥剛さんが。
- ──
- 「長渕が見える!」
- Takuya.N
- ハッキリ見えますね。
- ──
- Takuyaさんは、ご本人に会いたいとか、
そういう欲求ってあります?
- Takuya.N
- それね。ハハハ。
- ──
- ハハハ。何せその格好ですしね(笑)。
- 自分のことを先にいうと、
それはもういいということにしました。
まだ、前の雑誌の編集部にいたとき、
桜島ライブのタイミングで
取材しませんかって誘われたんですよ。
- Takuya.N
- うわーっ!
- ──
- 当然のごとく、すぐさま、
ぜひお願いしますとお返事したものの、
その後、
強い緊張状態に置かれ続けて‥‥
結局、話自体が流れちゃったんですが。
- Takuya.N
- そうなんですか‥‥残念。
- ──
- でも、冷静に考えると、
何を聞いたらいいかすらわかんないし。 - その欲求自体、いまはもう感じません。
- Takuya.N
- わかります。
遠くから見ているだけでいいっていうね。 - ぼくも、よく「公認なんですか」とかね、
「本人に会ったことあるんですか」とか、
聞かれることがあるんですけど、
会ったことは当然ないし、
ましてや公認のはずないじゃないですか。
- ──
- 会ったら、怒られるかも‥‥とか‥‥。
- Takuya.N
- そうですね‥‥でも、もしかしたら、
「馬鹿野郎、
俺の真似なんかしてんじゃねえよ!」
とか言われても、
俺、うれしいかもしれないんですよ。
- ──
- ハハハ、その境地だ(笑)。
- Takuya.N
- だって、それは一瞬でも、
俺のことを見てくれたってことだから。 - だけど‥‥やっぱり、
このまま一生会えなくてもいいのかな。
うん、会えなくていい気がします。
- ──
- Takuyaさんには、
大ファンの「佐藤拓矢さん」の心理も
たっぷり混ざってますから、
そのあたり、けっこう複雑でしょうね。
- Takuya.N
- ただ、自分は剛さんのことが大好きで、
こういうことを
やらせてもらっているんですっていう
ご挨拶というか‥‥
まあ、そんなことをね、
言われたほうも、困るんでしょうけど。
- ──
- ええ。
- Takuya.N
- 「すいません!
勝手にこんなことさせてもらってます!
好きすぎてやってます!」
っていうことだけは、
いつか、伝えられたらと思っています。
(つづきます)
2021-12-30-THU
-
Takuya Nagabuchiの最新情報は
YouTubeなどでチェック!まず、すぐにアクセスできるものとしては、
毎週金曜日の22時~23時に、
YouTubeライブによる生配信のラジオを
配信してらっしゃいます。
これ、話し声まで似てるんですよ‥‥。
もちろん弾き語りも披露してくださいます。
年の瀬12月30日(木)には、
今年最後のオンラインライブも開催予定。
参加者は、事前にメッセージを送ったり
リアルタイムのチャットで
曲のリクエストもできるということです!
生で聴くのもいいんですけど、
まずはオンラインから、体験してみては?
配信時間や参加方法など、
くわしくは配信チケットの販売ページで。