ついに「生活のたのしみ展2025」が
目前に迫ってまいりました。
それぞれの全力がつぎこまれたお店が、
約60店舗も並ぶ今回は
「どのお店をどんな順番でまわるか迷っちゃう」
という方もいらっしゃるかもしれません。
これは、そんなみなさまにお届けするコンテンツ。
「たのしみ展エキスパート」たちに
お買いものプランを教えてもらいました!
読めば、悔いのないたのしみ展へ予習はばっちり。
さあ、あなたなら、
たのしみ展をどうたのしみますか?

1日おきに更新します。お見逃しなく!

前へ目次ページへ次へ

第3回 小林和人さんの「余白の射程プラン」

小林和人さんプロフィール

国内外の生活用品をあつかうお店
〈Roundabout〉(代々木上原)、
非日常的な余白を持つ品々のお店
〈OUTBOUND〉(吉祥寺)を営む。
両店舗の商品のセレクトやディスプレイ、
展覧会企画を手がけている。

──
小林さんは、過去に何度も
「生活のたのしみ展」にご出展くださっていますね。
今回、2025年のたのしみ展でも、
Fog linen workさんとのコラボ商品を
つくっていただきました。
小林
今回は、自分で出展しないぶん、
おもにお客さんとして訪れる予定です。
例年はほとんど店頭に立っていたので、
はじめてのことにわくわくしています。

──
私たちにとっても、
はじめての「冬のたのしみ展」なので、
新鮮な気持ちです。
小林
僕はもともと、「生活のたのしみ展」は
お正月にぴったりのイベントだと思っていたんです。
酉の市のような「ことほぎ感」があるといいますか。
──
ことほぎ感、ですか。
小林
はい。僕は、たのしみ展では
縁起ものを買って帰ることにしているのです。
いちばん大きい熊手みたいなものでしょうか。
──
「一年の計はたのしみ展にあり」ということですね。
小林
暦の上で、「生活のたのしみ展2025」の会期は、
地下で凍っていた泉の水が融けはじめて
動き出す時期に当たります。
なので、新宿の地下で、
みなさんのお買いもの心が
ふつふつと湧き出すような‥‥
そんなイベントになるといいなと思っています。

小林
クリスマスや、年末に帰省する時期には、
「誰かにプレゼントするためのお買いもの」
をする機会が多いのではないでしょうか。
一方「生活のたのしみ展2025」が始まる年始は、
「あたらしい年の自分への願掛け」としての
お買いものができそうです。
──
おっしゃるとおりですね。
新年を迎えたタイミングは、
抱負を立てたりもしますから、
自分に向き合いやすい気がします。
小林
自分のお買いもの心に向き合って、
「どこまで飛べるか」と問う‥‥
そう、新年のお買いものは
「飛距離」がだいじなのです。
──
飛距離、といいますと。 
小林
たとえば。
ふだん、お買いものはご家族のためにする、
という方がいらっしゃいますね。
たのしみ展は、そのような方も、
思いきり自分のために時間とお金を使える
機会になると思うのです。
家庭や社会の役割から降りて、
「自分自身に戻る時間」としてたのしめる、
お祭りだからです。
このように、ふだん自分に課しているものと
どれだけ距離をとれるかということが、
お買いもの心の「飛距離」にあらわれます。
──
なるほど!  
たしかに、年末年始は、親戚の集まりなどで
忙しい方もいらっしゃいますね。
サービス業の方も、
お休みをとりづらいかもしれません。
ですが、年始の忙しさが落ち着き始める、
9日からの「生活のたのしみ展」でしたら、
そういった方々にも
ゆったり過ごしていただけそうです。

小林
今回は57組のお店が並ぶのですね。
あのライオネル・リッチーでさえ、
ソロになってから出したシングルは42枚なのに、
それを上回る数です。
──
それは意識していませんでしたが、
ほんとうですね(笑)。
このたくさんのお店のなかで、
小林さんがとくに注目しているところは
ありますか。
小林
インテリアショップのCASICAさんは
ディレクター夫妻もよく知っているので、
彼らの手がける
『世界の古道具と生活雑貨のお店』は、
『石田ゆり子さんがいっしょに暮らすものたち』と
セットでまわりたいですね。
どちらもすごくいい空間になりそうで楽しみです。
それから、以前から知っているお店ですが、
Yoshie Matsuuraさんの
『レースの鋳造バングルのお店』も見逃せません。
Yoshie Matsuuraさんは、
蝋にアンティークのレースを貼り付けて型をつくり、
その型に熱した金属を流し込むことによって、
繊細な柄のアクセサリーを生み出しています。
レースは、金属を流し込む過程で
溶けてなくなってしまうのですが、
金属に姿を変えて残り続けるとも言えます。
ですから、
どれも二度とつくれない一点ものなのです。
なんだか、ロマンチックですよね。

小林
そして、忘れてはいけない、
『リネン、コットン、ザッカ 
fog linen work・miiThaaii』。
このお店では、
fog linen workさんと僕が一緒につくった、
ケープやツナギ、ハットを置いていただきます。
男女兼用で、ガシガシ使えるので、
どなたにもおためしいただきたいです。
そのほか、
初めてお名前を知ったお店もたくさんあるので、
気になりますね。
‥‥ですが、僕の場合、たのしみ展では
「たくさんの場所を効率的に回ること」より、
「非目的的な祝祭性」を大切にしたいと
考えているんです。
なので、あまり行くお店を決めすぎないように
するつもりです。
日常生活では、どちらかというと、
生産性や効率といったものが重要視されます。
でも、それだけだと行き詰まってしまうから、
リフレッシュして英気を養うために
お祭りがあるのだと思います。
もちろん、事前に下調べして行くのもいいですが、
いっそ「出たとこ勝負」でも
いいのではないでしょうか。
──
がっちりプランを立てず、ふらっと入ってみる、と。
小林
あえて迷ってみるというのも、
たのしみ展の醍醐味です。
そういえば、このあいだ「迷うこと」について
フランス出身の方と話していたとき、
「errance」という言葉を教えていただきました。
「放浪する」という意味なのだそうです。

──
へえーーっ。
小林
すごくいい言葉だと思って、覚えていました。
目的地に向かう途中の寄り道ともまた違う、
もっとあてどのないイメージです。
流れに身を任せて、会場を「放浪」しているうちに、
たまたま運命的なものとの
出会いがあるかもしれませんし、
ばったり知り合いに会うかもしれません。
たのしみ展は、
そんな偶然性をたのしめる場だと思います。
とはいえ、前回の「生活のたのしみ展2023」では、
トークイベントなど、
時間が決まっている催しもありましたね。
今回も、そういったイベントを見に行きたい場合は、
きっちり時間を考えて
まわったほうがよいのでしょうか。
──
今回の開催期間は、
ゴールデンウィークだった前回と違い
平日が多いので、「この日のこの時間に来なければ」
というイベントはないのです。
その代わり、会場内の
「たのしみピーチクパーチク」という
ミニステージで、
突発的な催しなどをひらきます。
なので、会場に来たら、
ちょうどおたのしみ企画をやっていた、
ということもあります。
事前告知のない企画もありますので、
ぜひ、空き時間にはステージを見に来てください。
小林
「出たとこ勝負」でまわる僕には、
うれしい情報です。
──
今回は会場のBGMも変わり、
みなさまがご存知の曲をいろいろ流す予定です。
耳でもたのしめるたのしみ展になりますよ。
小林
もし、レジなどで並ぶ必要があっても、
退屈することがなさそうでいいですね。
今回の僕のたのしみ展の
個人的テーマである「放浪」に寄せて、
待ち時間もたのしむようにしたいです。
自分で文庫本を持って行ったり、
まわりの人としりとりをしたりしようかな(笑)。

──
今回、レジ前の長い壁に、
ほぼ日のスガノが7日間かけて
「手書きでテキスト中継」をする予定なんです。
レジ待ちの際はそれもおたのしみいただけたら。
小林
へえーっ、すごいですね。
僕はいま、いろいろな面で、
世のなかから身体性が失われていると
感じるのですが、そんななかでフィジカルな表現に
回帰するというのは、とても意義深いことです。
──
ありがとうございます。
小林さんファンのスガノに伝えます
(われわれ、
ぜんぜんそこまで深く考えていませんでした。
でも、ありがたいです)。
それから、会場に隣接する形で、33メートルの
ロングロングベンチを設置します。
ひと休みしたり、買ったものを食べたりできます。
小林
おお! 画期的ですね。
最近、サウナ好きの方から
「サウナ、水風呂、外気浴のサーキットを
繰り返すのが気持ちいい」と聞きました。
たのしみ展会場のなかでお買いもの熱を出し切って、
外のベンチでクールダウンする、という循環は、
まさに同じような気持ちよさがありそうです。
──
あははは! 言われてみれば、
サウナにも似ている気がしてきました。
小林
このごろ、とくに都会からベンチが減っていっている
という問題をよく耳にします。
東京のまんなかに、
これだけ大きなベンチが設置されるのは、
すごく珍しいことだと思います。
ベンチに限らず、
無料で利用したり遊んだりできるところが
どんどん少なくなってきて、
あらゆるものが資本に囲い込まれているなか、
無料で入れて、無料で座れるたのしみ展は‥‥
なかなかに奇跡的な場所といえそうです。
──
そう言っていただくと、
なんだか、すごく重大なことをしている気分に
なってきました(笑)。

小林
たのしみ展の前後に、会場の近くの、
新宿中央公園や55HIROBAに
足を伸ばすのもいいですね。
──
そうですね。とくに遠方からいらっしゃる方には、
会場周辺エリアも込みで、
ぜひたのしんでいただきたいです。
最後に、この連載では、
それぞれの方のたのしみ展プランに
お名前をつけていただいています。
「プランは決めすぎない」という小林さんですが、
あえてお名前をつけるとしたら、
どんなプランになるでしょうか。
小林
「あれもこれも買わないと」と、
意識がパンパンになってしまうと、
偶然の出会いが入ってきづらいですよね。
なので、思いがけないものが飛び込んでくる
「余白」をつくっておきたいです。
自分のなかの余白はそのまま、
最初にお話しした
「お買いもの心の飛距離」にもなると思うのです。
ということで‥‥「余白の射程プラン」と
名付けましょうか。
──
カッコいい名前‥‥! ありがとうございます。
小林さんのプランを聞いて、
たのしみ方の幅がひろがりました。
小林
こちらこそ、ありがとうございました。
「これに出会えてよかったな」と思えるものに、
みなさんが巡り会えるといいですね。
僕もたのしみにしています! 

(次のプランにつづきます)

2024-12-31-TUE

前へ目次ページへ次へ
  • あなたのたのしみはだれかのたのしみ、だれかのたのしみはあなたのたのしみ。「生活のたのしみ展2025」をどんなふうにめぐるか、教えてください!

    われわれ、気づいてしまいました。
    「だれかのプランを聞くと、
    たのしみ展がますますたのしみになる。
    そして、自分でも計画を立てたくなる」と。
    みなさまも、お読みになるうちに、
    すでにプランを練り始めていたのでは
    ないでしょうか?! 
    そのプラン、
    ぜひこのページで共有させてください。
    がっちり決まったプランでも、
    ふんわり理想のルートでも、
    悔いのないお買いものにつながるだけでなく、
    きっとほかのだれかの参考になります。
    編集部のコメント付きで、
    最終回にご紹介させていただきますので、
    たくさんのご投稿をお待ちしております! 

    メールの宛先は「postman@1101.com」です。
    以下の「投稿はこちらから」ボタンからも
    お送りいただけます。

    投稿はこちらから