さらば青春の光の森田哲矢さんに、
インタビューしました。
古着について、コントについて。
スニーカーについて、
「ごっつええ感じ」について‥‥。
いろんな話題を行ったり来たり。
楽しい時間でした!
はじめての主演映画も、
そろそろ公開になるようですよ。
担当は「ほぼ日」奥野です。
森田哲矢(もりた てつや)
M-1グランプリ、キングオブコントともに決勝進出を果たす実力派コンビ・さらば青春の光のメンバー。株式会社ザ・森東の社長を務める。個人事務所ながらテレビ、ラジオと多数のレギュラー番組を抱え、YouTubeも精力的に更新中。
- ──
- 古着の話で盛り上がりましたが、
森田さんの本業はお笑い芸人ですね。
- 森田
- そうすね(笑)。
- ──
- あの、さらば青春の光のコントって、
ぼくなんかがわざわざ
言わなくてもいいことですけど、
何だかもう、すごいなと思うんです。 - おもしろいのは当たりまえというか、
コントって
おもしろいものだと思いながら
見てるわけですけど、
さらば青春の光のコントって、
そこからさらに
「深いな」と思うことがよくあって。
- 森田
- あ、ほんとですか。
- 自分らとしては、
そんな深いだなんて思ってないけど。
- ──
- たとえば「オカリナ」とかですよ。
- 森田
- あー‥‥、ありがとうございます。
- ──
- 営業のサラリーマンみたいな人が
取引先の社長さんに
「このオカリナ、8000円。どや」
とか言われて、
それが安いのか高いのか、
「どっちなんや‥‥」というやつ。
- 森田
- ええ。
- ──
- あの発想、どこからくるんですか。
- 森田
- んー、どこから‥‥そうすねえ。
いやあ、日常なんすよ、マジで。 - ふだん生きてて、
何か気になったおもろいこととか、
ふつうなら
シレッと流しちゃう出来事とかを、
一個一個拾ってるだけなんです。
あのネタも、
みなみかわさんって先輩の芸人と、
ジョナサンで、一緒におるときに。
- ──
- ええ。
- 森田
- 「オレ、Mac買ってん」つって、
広げてたんですよ、Macを。
みなみかわさんが。 - でね、「これいくらやと思う?」
って聞いてきたんです。
Macの相場なんか知らんからね、
「いくらすか」つったら
「11万」って言ったんですよ。
- ──
- コントと同じ(笑)。
- 森田
- そう。
- 「え? どっちなん、それ?
どっちの11万なん?」っていうね。
- ──
- 高いのか、安いのか。
- 森田
- そうそう。で、そのときのオレは
「すごいっすねー」
って言うしかなかったんですよ。 - そんときのやりとりが引っかかって、
おもろいかもと思って、
そのまんまネタにしただけなんです。
- ──
- へええ‥‥。
- 森田
- これ、みんな同じような目に
あったことあるかないか、くらいの
微妙なラインのあるあるというか。 - でも、ちゃんとつくったら
経験したことがなくても笑えるかな、
普遍的な笑いに変えられるかな、
っていう感じがあったんで、それで。
- ──
- たしかに「オカリナ8000円、どう」
って言われたら、
どっちにリアクションしていいのか
わかんないです。
- 森田
- そうでしょ。
- で、まんまMacでいくのは違うんで、
そこのアイテム探しが重要なんです。
- ──
- つまり「オカリナ、8000円」
くらいがちょうどいいんじゃないか、
という判断ですね。
- 森田
- そうですね。
- いくら相場がわからなくても
「オカリナ、8万」って言われたら、
きっと「高っ」って思いますから。
- ──
- 少しまえに美術家の森村泰昌さんと
お話していたとき、
デュシャンの話題になったんです。 - デュシャンって、
「男性用の小便器」を寝っ転がして、
それに《泉》って名前をつけて、
これはアートですって発表した人で。
- 森田
- ああ、なんか聞いたことあります。
- ──
- いろいろはしょって言ってしまうと、
その《泉》をきっかけに、
アートが変わったと言われてまして。 - ただ小便器を寝っ転がして
「泉」って言った「だけ」なんです。
それで、アートが変わった。
でも、自分はそのことのすごさが
いまいちよくわからなかったんで、
美術家の森村さんに
「あれって何ですごいんですかねえ」
って聞いてみたんです。
- 森田
- ほう。
- ──
- そしたら森村さん、ひと息入れて、
こうおっしゃったんですよ。 - 古典落語のネタの「はてなの茶碗」と、
さらば青春の光の
「オカリナ」を見ればわかる‥‥。
- 森田
- えええ?
- ──
- そこに、ヒントがあるから‥‥って。
- 森田
- おお、おお‥‥なんやそれ。
- まわりくどい言い方するなあ(笑)。
さすがは芸術家ですね。
- ──
- ま、ごはん食べながら話してたんで、
もし、きちんとした場所で、
きちんとしたインタビューしたら、
きちんと答えてくれたと思うんです。 - ちなみに「はてなの茶碗」って噺は、
お茶が漏れる茶碗を、
目利きの人が「はてな?」と言った、
それを見た人が
「あの人が『はてな』と言ったぞ、
だから、すごい茶碗なんじゃないか」
って勘違いする‥‥ところから、
いろんなことが起こる噺なんです。
- 森田
- なるほど。
- つまり、デュシャンってえらい人が
これがアートですって言ったから
便器もアートになったんでしょって、
森村さんも、
ちょっと揶揄してるんですかねえ?
- ──
- いや、そのあたりを、こんど、
くわしく聞きに行こうと思ってます。 - とにもかくにも、
さらば青春の光の「オカリナ」って、
デュシャンにも通じてるのかと。
- 森田
- そうなんかなあ(笑)。
- ──
- そんな気持ちでは、
つくってはないと思いますけれども。
- 森田
- ぜんぜんつくってないです。
デュシャンとオレがつながるなんて。 - でも、おもしろいなあ。
いろんなこと考える人がいるんやな。
- ──
- その、「いろんなことを考えさせる」
ところが深いところだな、と。
- 森田
- いやあ‥‥そう言ってもらえるのは、
ありがたいっすけどね。 - そこまで深くは考えてないんですよ。
マジで(笑)。
ウケるぞと思ってスベることだって、
ありますし、単純に。
- ──
- ネタをつくってるときって、
「あ、これはおもしろい、ウケる」
って自分でわかるんですか。
- 森田
- まあ、わかりますね。
- ただ、絶対ウケると思っても
お客さんがぜんぜん笑わなければ、
その原因は、
絶対こっち側にあるわけですよね。
だから、ウケんかったけど
あきらめきれへんなあってネタは、
ブラッシュアップして粘ります。
- ──
- ぼったくりバーのネタとか‥‥。
- 森田
- あれは、あきらめきれなくて、
ブラッシュアップしたネタですね。
- ──
- はじめは、じゃあ、ウケなかった。
- 森田
- ぜんぜんウケなかったっす。
- ──
- それって、何がちがうんですかね。
大筋はきっと同じじゃないですか。 - ぼったくり金額のケタっていうか、
お金の単位が、すごいところまで、
つまり那由多とか不可思議、
無量大数とかまでいくネタですが。
- 森田
- なんやったんっすかねえ。
- わかんないんですけど、
なんかね、
ソデではめっちゃウケてたんです。
芸人にはめっちゃウケるけど、
お客さんは、あんま笑っていない。
でも、芸人がこんだけ笑ってるし、
何かあるはずやと思ったんで、
ポイと捨てずに、
ここをこうしてみようかとかって
いろいろやっていったら、
だんだんウケはじめたんですよね。
- ──
- 微妙なところ、なんですかね‥‥。
神が宿るほどの細部を
微妙にチューニングしてる、とか。
- 森田
- 憶えてないけど、微妙ですよ。
- 最終的にキングオブコントに行く、
くらいまでのネタに
成長したんで、
まあ、捨てないでよかったですね。
- ──
- お笑いが好きになったきっかけは、
何だったんですか、そもそも。
- 森田
- まず、加トちゃんケンちゃんです。
- ──
- あ、ごきげんテレビ。
- 森田
- そう。小学校のころ、
もう、無条件で笑ってましたから。 - 最初のお笑いへの衝撃が、あの番組。
小学校は「志村けん」一色でした。
当時の志村さんは、全力で
小学生のオレらを笑かしにきてたし。
- ──
- そうですよね。
- 森田
- そして「元気が出るテレビ」です。
とくに高田純次さんがすごかった。
こんなふざけたオッサンでも
めっちゃ稼いでんねんな‥‥って、
そう思ったのが、
芸人を志すきっかけのひとつです。
- ──
- デュシャンからの連想なのか何なのか
急に思い出したんですが、
高田さんが
素人さんにインタビューしてるときに、
「おじさん、
オシッコしたくなっちゃったな」
とか言って、プールサイドかなんかで
シャーッと‥‥とかって、
とある番組共演者の方に、
取材のときに聞いたことがあります。 - さすがにオンエア無理だったそうです。
- 森田
- ははは、とんでもない人やなあ(笑)。
- でね、そんなこんなしてるうち、
8チャンネルで
何やらおもしろいのがはじまったぞと。
- ──
- おもしろいの。
- 森田
- そう、それが
「ダウンタウンのごっつええ感じ」
だったんです。 - で、こんな言い方もアレなんですけど、
全員が移行したんです。そっちに。
当時の小5、小6、中学生たち全員が。
みんな、ダウンタウンの「ごっつ」に。
(つづきます)
写真:池ノ谷侑花(ゆかい)
2023-04-19-WED
-
森田哲矢さん主演の映画
『大阪古着日和』、公開です!光石研さんが主演して話題となった
YouTube番組『東京古着日和』の「大阪版」が
映画になりました!
その名も『大阪古着日和』です。
主演は、古着大好き大阪代表・森田哲矢さん。
ヒロイン役の花梨さんと
古着屋で出会い、
なんだか、いい感じになっていく本人役です。
チャンピオンのスウェットなんかの古着も、
まるで登場人物のひとりのように、
重要な役割を果たします。
オリジナル東京版の光石研さんも出演!
本人役なので、東ブクロさんも出てきますよ。
公開は4月21日(金)から。ぜひ!
詳しいことは映画の公式サイトでご確認を。「もともと『東京古着日和』が好きで
そのことをYouTubeで言ったら、
制作スタッフの方から出ませんかと言われて。
え、いいんですか? って。
最初は、光石研さんが行った先の古着屋で、
ちょこっと出てくる人いるじゃないですか。
『東京古着日和』には。
あれかな~と思ってたんですよ。
そしたら、森田さん主役です、みたいな。
え、いいんですか、えー、
そんなyoutubeもあったらいいですよね、
とかって言ったら、
いや、youtubeじゃないです、映画ですと。
えええー! ってなりました。
マジ、なんでも言っとくもんやなあと。
こっ恥ずかしかったですけど、
自分なりに、精一杯やらせてもらいました。
演技は難しかったです。
コントやってるほうが楽でした(笑)。
花梨ちゃんがかわいいんで、必見ですよ。
光石研さんも、すごくいい感じなので、
『東京古着日和』のファンにも、
ぜひ、観てもらえたらなあと思っています」
(森田さん)映画「大阪古着日和」
2023年4月21日(金)
渋谷ホワイトシネクイント他 全国順次公開森田哲矢(さらば青春の光)
光石研 花梨 東ブクロ 森島久監督・脚本・編集:谷山武士
脚本:谷山武士、廣川祐樹詳しいことは映画の公式サイトでご確認を。
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